先日の休みに映画を観に行った。
マシュー・フォックス主演の戦争ドラマ、“終戦のエンペラー”。
公開前からチェックしていて、ずっと観たかった映画。
夏が終わって、ようやっと観に行くことができた。
第二次世界大戦(太平洋戦争)、アメリカ軍の広島・長崎への原爆投下によって、
日本はポツダム宣言を受諾、天皇による玉音放送によって国民に敗戦が伝えられ、
日本軍は連合国軍に対し無条件降伏し戦争は終結した。
それから数日後、連合国軍総司令官総司令部(GHQ)が日本に上陸。
GHQを率いる、ダグラス・マッカーサー元帥(トミー・リー・ジョーンズ)は、
日本をいかにして復興させるか、占領支配ではなく解放するために思案していた。
マッカーサーは、副官のボラー・フェラーズ准将(マシュー・フォックス)に、
日本到着後、すぐに極秘指令を出す。
「戦争責任者は誰なのか?」「天皇に戦争責任があるのか?」
それを10日以内に調査して結論を出せというもの。
フェラーズ准将は日本の文化や国民性に精通していた。
その知識が買われ、対日の要員として戦争に参加。
日本兵の心理や国民性を題材にした論文も高く評価され准将にまで昇格していた。
彼は大学時代に、アメリカに留学に来ていた、
ひとりの日本人女性、島田アヤ(初音映莉子)と出逢い恋に落ちる。
やがて日米関係が悪化し始めた頃、アヤは突然日本へと帰国する。
アヤと出逢い、日本に興味を持ち、日本を研究していた彼は、
居ても立っても入られず、アヤを追って来日する。
日本では軍部の指導で横文字・英語の使用が制限されはじめ、
国民に米英は敵と認識されていく逆風のさなか、
フェラーズはアヤと再会し、さらにお互いの恋は燃える。
彼はその来日中に、陸軍大将だったアヤの叔父・鹿島(西田敏行)から、
日本人の心や神道に基づく精神を学び、日本に対する知識や理解をさらに深める。
だが、ほどなくして彼は帰国せざるを得なくなる。
アヤと別れを惜しむ間もなく、警察や軍の検問をかいくぐり脱出するように帰国の途に就く。
そして、日本軍による真珠湾攻撃により、太平洋戦争が開戦。
フェラーズとアヤの恋は悲恋となってしまった・・・。
そして・・・終戦を迎え、フェラーズはGHQの一員として、
マッカーサーの右腕として再び日本に上陸した。
極秘重要任務を抱えた彼は、専属の日本人通訳・高橋(羽田昌義)に、
これまた極秘にプライベートな任務を与える。
「この女性を捜し出して欲しい・・・。」
高橋がフェラーズから受け取った、数枚の書類に女性の写真が添付されていた。
アヤの写真。
フェラーズはまた、アヤの安否も探るべく高橋と共に個人的に調査する。
アヤのことを胸の奥に秘めつつも、彼はマッカーサーから受けた任務を遂行する。
開戦時の首相、東條英機(火野正平)はじめ、前首相の近衛文磨(中村雅俊),
天皇に最も近かったとされる内大臣の木戸幸一(伊武雅刀)など、
戦争の重要参考人をいっせい逮捕するために動く。
だが、日本を熟知しているつもりのフェラーズも、
彼らから確定的な証言を得るのは一筋縄ではいかず、
“白黒つけない”,“本音と建前を使い分ける”,“天皇への絶対崇拝”、“自決の美学”・・・
その国民性が相まって、フェラーズの調査は暗礁に乗り上げる。
有力な証言も証拠も得ることができないまま、期限を迎えた。
フェラーズは、戦争責任者が誰であるのか?
天皇に戦争が止め得ることができたのか?
また彼にその責任があるのか?
さまざまな問題に結論を出すことができなかったが、
自身の意見を述べた報告書を作成し、マッカーサーへと提出する――。
その報告書を受けて、マッカーサーがとった行動は?。
日本を復興させることができるのか?
そして・・フェラーズはアヤと再会することができるのか?
すごい良かった。
これまであまり焦点の当てられなかった、終戦直後の動乱を描いた物語。
とくにタブー視されて、あまり映画などでは描かれることのない、
戦時中の皇室・天皇の描写がなされているのが新鮮だ。
事実、皇居の敷地内で映画の撮影がなされたのは本作が初めてだという。
教科書で表むきの事実しか知り得なかったことが、
裏舞台で、こんなにもドラマが展開されていたのかと驚く。
日本復興に尽力した、マッカーサー元帥は世界的に有名だが、
このボナー・フェラーズ准将という、実在した親日将校は、
日本はもとより、アメリカでもほとんど知名度がないという。
本作品の細かいディテールは、彼の書き残した膨大な記録によるものが大きいという。
戦争ドラマといっても、終戦後のことなので戦闘シーンはほとんどない。
ミリタリーおたくの方など、そういうものが好きなひとは、期待するような作品ではない。
ほぼ史実に基づいてストーリーが展開される。
一部架空の人物が入り、フェラーズ准将とアヤのラブロマンスなどは完全なフィクションだが、
戦前に彼が日本人の“親友”と称する人物と文通し、
その人物と会うために、たびたび来日していたのは事実らしく、
ひょっとしたら限りなくノンフィクションに近かったかもしれない。
歴史おたくの方は、かなり観入ってしまうに違いない。
昭和天皇(片岡孝太郎)はじめ日本の要人たちにも注目したい。
ハリウッド作品にも関わらず、西田敏幸,中村雅俊,伊武雅刀,火野正平など、
日本の大物俳優が多数出演しており、あちらの中国系の俳優を起用していないところがいい。
こういう題材だから、さすがに日中関係と出演俳優のことを考慮してのことかもしれないが。
東條秀機役だった火野正平は・・・セリフは一言もなく、もしかして髪型で起用された?
ただそれでも、大物俳優らしい存在感のある演技を見せてくれた。
アヤ役の女優さん、初音映莉子。
自分は今回、初めて見た女優さんで、本作が初ヒロインで大抜擢されたという。
見終わって、キャストを確認するまで、ずっと蒼井優だと思ってた。
この娘、フラガールのときと比べ、ずっと大人っぽくなったな~とか思って観ていた。
実際、この初音映莉子って人、蒼井優のあどけなさと、
木村多江の色っぽさを足したような雰囲気の女優さんで、今後の活躍が楽しみだ。
それから、フェラーズの秘書のように活躍する、日本人の高橋。
日本人キャストで、最も登場シーンもセリフも多かったであろう役なのだが、
羽田昌義という俳優さんは、おそらく知名度がかなり低い。
だが、自分はこの俳優さんを名前だけ知っていた。
大好きな歌手、hitomiの元夫だったから。
たしかできちゃった再婚で、前夫からhitomiを略奪した格好になったんだよな。
あのとき、ほぼ無名の俳優で、出演作に“嫌われ松子の一生”とか挙げられていたものの、
はて?どこのシーンでどんな役で出てたっけ?と、まったく判らなかったほど。
だが、この作品での彼の演技はすばらしく、
フェラーズとの最後のやりとりでは思わず涙ぐんだ。
今後、映画のみならず役者として飛躍して欲しいと願う俳優さんだ。
昭和天皇役の片岡孝太郎。
予告編のときから、あれ誰?と思っていたが、やはり知らない人だった。
若手歌舞伎俳優さんで、キャスティングで白羽の矢を受けた。
当初、天皇役というその大役の重責と、
自身の歌舞伎出演のスケジュールとの兼ね合いで出演を渋っていたそうだが、
歌舞伎界の重鎮、故・中村勘三郎に背中を押されて、出演を決めたらしい。
登場シーンは少なく、きちんと全身が映って演技が確認できるのは、
マッカーサーとの会談に臨むシーンの、ラストほんの数分だけ。
それでも、あの昭和天皇の声色としゃべり方、あれを見事に再現。
歌舞伎役者というものは、こうも変幻自在に演技できるものなのかと驚かされた。
最後は、われらがジョーンズ!
コメディ映画の、“メン・イン・ブラック”シリーズや、
サントリーの缶コーヒー・BOSSのCMのイメージが強いので、
どうしても ひょうきんなイメージを抱いてしまうものだが、
彼は宇宙人とか言われつつも、正真正銘のハリウッドのアカデミー俳優。
容姿はまったく似ていないマッカーサーの役を、その貫禄と存在感できっちりと演じていた。
戦争を描いた映画というものは、
観終わった後、たいてい悲しさや虚しさに包まれてしまうものだが、
本作は、復興に向けての新しい希望とか目標のようなものを抱いた。
これは戦後のあの状態から復活した日本が、
今は東日本大震災から立ち直ろうと必死になっている・・・
なんとなくデジャブな感覚で観てしまっているのだろうか。
さて、あと2作品ほど、戦争題材の映画で観ておきたいものがある。
公開が終了してしまう前に、両方とも観ることができるだろうか。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます