先日の休みに映画を観に行った。
松坂桃李主演の、“マエストロ!”だ。
原作はさそうあきら氏の同タイトルの漫画。
昨年秋に予告編を観て、面白そうだと思い鑑賞を決めた。
主演の松坂桃李、昨年の大河ドラマ“軍師官兵衛”で、黒田長政役をやっていた若手俳優。
ふつうの現代劇を演じる彼を見てみたかった。
それにタイトルのマエストロ!にある、指揮者役に西田敏行。
さらに若手の人気歌手、miwaがヒロイン役として演技初挑戦とのことで、
このメインの3人のキャストだけでも興味津々。
大好きな音楽が題材の映画。
これは観ないわけにはいかない。
公開をずっと楽しみにしていた作品だ。
名門オーケストラの中央交響楽団に所属していたヴァイオリニストの香坂(松坂桃李)。
そこで歴代最年少でコンサートマスター※1を務めていた、確かな腕を持つヴァイオリニストだ。
だが、そんなオーケストラも経営難によってあえなく解散となる。
腕の有る者は皆、他の楽団から声がかかったりしたが、
残った者は再就職できず、バイトをしたりして繋いでいた。
香坂は海外の有名オーケストラへ所属しようとしていたが、届いた不採用通知にため息する。
香坂の亡き父もまたヴァイオリニストで、中央交響楽団でコンサートマスターをしていた。
幼い頃からそんな父の背中を見て育ち、いつか父のような演奏をしたい・・・。
それが香坂の追い続ける夢だった。
そんなとき、彼の元に中央交響楽団再結成の連絡が来る。
再就職先がまだ決まっていなかった彼は再結成に参加することに決め、
ヴァイオリン片手に指定された練習場所へとやってきた。
ところがそこは廃倉庫。
粗末なコンパネや木材であつらえられた演奏壇に並べられたパイプイス。
しかも集まった連中は、再就職先の決まらなかった売れ残りの負け組奏者たち。
さらにはフルート奏者にはアマチュアの少女、あまね(miwa)がやってきた。
練習開始時間になっても現れない指揮者。
再結成コンサートまで時間がない。
とりあえず指揮者不在のまま練習を始める。
演目は自分たちが何百回と演奏してきた馴れた曲。
だが久しぶりに集まったメンバーで演奏した曲は、
音が揃ってなくバラバラで、とてもプロとは思えない散々なものだった。
そのコンサートでタクトを振るうのが、“天道徹三郎”という男。
ところが集まったメンバー誰ひとり、こんな名前の指揮者を知らない。
練習を始めても二階に居た作業員が手を止めない。
演奏の練習中にも関わらず、ハンマーの音がそれを邪魔する。
たまらず文句を言う香坂。
だが、その作業員こそ、今回タクトを振るう指揮者、天道徹三郎(西田敏行)だった。
天道は香坂たちの演奏を関西弁でクソミソ言って痛烈にこき落とす。
鳶職人のような格好をして、タクトではなくゲンノウやさしがねで指揮をする。
奏者達をバカにしたような、おちょくったようなその動き。
そして罵声混じりの下ネタ混じりの檄。
オーボエ奏者は必至に削ったリードを一本残してすべて破壊され、
ホルン奏者は、大切なホルンを板金屋で叩かれ、挿し歯を治せと言ったり、
アマチュアのあまねとベテランの奏者のポジションを入れ変えたり、やりたい放題。
メンバー全員が天道に反感を抱く。
だが、次第に彼の言うことが正しいことが判ってくる。
実は指揮者として相当な実力者なのではないか?
彼の破天荒な指示や注文に応じたら、どんどん音が良くなっていく。
そんなある時、天道の悪い噂が入って来る。
多額の借金を抱え、ヤクザに狙われている・・・?!
そしてコンサート間近になって、スポンサーが撤退してしまう。
どうやら天道のそういった素性を良く思わず撤退したらしい。
やむなく解散を宣言する香坂。
せっかくの再結成スタートも水の泡。
落胆するメンバーたち。
だが天道は諦めていなかった。
「わしがやるというたら、やるんや!」
一度は諦めた再結成コンサート。
だが、ひとり、またひとりと練習場へと戻って来る。
そして新たなスポンサー集めに奔走するメンバー。
関係者によって明かされる天道の過去。
そして香坂の父と天道との関係も明かされる。
いよいよコンサートの日、天道にはメンバー全員に秘密にしていたことがあった。
それが明かされたとき、再結成されたメンバー達がひとつになって、
最高の音楽を奏で、天籟(てんらい)※2が響く・・・!?
面白かった!
西田敏行な時点でコメディなんだろうと思っていたら、
真面目なヒューマンドラマだった。
いや、コミカルなシーンもあるけれど、それが蛇足に見えて要らないくらい話が真面目。
ヤクザを追い返すシーンと暴走族にリンチされる妄想シーンは要らなかったな。
かなり真面目な音楽ドラマ。
原作者は過去にも音楽を題材とした漫画を描いているようなので、
この分野に精通した人物なのかもしれない。
とにかく、オーケストラの内情などが細かく描写されていて興味深い。
実際、プロのひとが観ても、「あるある」な内容が散りばめられているそうな。
反面、現実じゃありえない部分もあるらしく、そこらへんは漫画が原作である所以か。
西田敏行の安定感はもはや言わずもがな。
松阪桃李よかった。
キャラクターが軍師官兵衛のときの長政と似たような感じで、
もっと別の松阪桃李を観てみたくなった。
miwa、原作のキャラクターもそうらしいが、
かなりトボけた天真爛漫な少女、あまね役を見事に演じていた。
これがキュートでたまらない。
リアルでこういう娘いたら、ちょっと距離置きたくなるけれど・・・。
もともと音楽をやってきている彼女だから演奏の上達も凄かったらしく、
涙を流しながらフルートを独奏するシーンは圧巻。
これまで彼女の楽曲に興味がなかったのだが、
これ観た後、すぐにCDを購入したのは言うまでもない。
ふつうは劇中で演奏された曲の入ったクラシックのCD買うんだろうけど・・・。
脇を固めた俳優陣も個性派そろいで楽しかった。
群像劇で、きちんと個性が立っていて、それぞれフューチャーされるから凄かった。
それぞれ音楽経験者とか、楽器ができる人を起用したとか。
濱田マリはモダンチョキチョキズのボーカリストだったし、
斉藤暁はトランペットがプロ級の腕前だというのは知っていた。
音楽映画ってことで、矢口史靖監督・上野樹里主演の、スゥイングガールズを思い出す。
あっちは青春群像劇で、完全なコメディ映画。
だがラストは本人たちによる圧倒的なジャズ演奏が披露された。
今作もラストは本人たちの演奏“演技”によるクラッシック演奏が披露される。
残念ながら音は、プロのオーケストラが奏でるものに吹き替えられている。
だが、楽器を演奏する動作は、本人たちがプロと遜色ない動きでやっている。
弦と弓を素早く動かすヴァイオリンの演奏の演技はとても難しく、
香坂はスゴ腕奏者という設定なので、松阪桃李の演奏シーンで、
手がアップになるシーンは、プロとの吹替えも検討されていたという。
だが松阪の手指があまりに綺麗過ぎて、それが不可能だったため、
プロの動きをマスターしてもらったという。
鎖骨付近にはプロのヴァイオリニスト特有のアザができたらしい。
劇中でそれが実際見えるそうだが、自分は見逃した。
公開からひと月ちょっと経ち、上映回数もだいぶ減ってきたようだ。
音楽好きなら観て損はなし。
クラシック好きならなおよし。
メイン3人のファンはもちろん必見の映画。
個人的に物語自体の感動度は低かったが、
最後の演奏を聞いた後の感動はなんともいえないものがあった。
期間限定発売の miwaプロデュースのポップコーン、“キャラメルいちごミルク味”。
甘酸っぱくておいしかったけれど、このシネマイクポップコーン、
粉末がちゃんとまんべんなくかかってないんだよな。
七味唐辛子味とか、上と底だけものすごいことになっていて、食べ始めむせる。
スタッフ、もっとしっかりシェイクしてくれ!
入場特典でもらえたポストカード。
チラシやパンフレットと同デザインを一枚もらっても・・・。
どうせならオリジナルデザインにせんかい!
つい買ってしまった、miwaのCD。
ギターガールってことで、阿部真央や家入レオみたいなのを想像していたがちょっと違った。
一曲目から大塚愛っぽかったので、これはヤバイ・・・と思ったが、
AZUとかそっち系統の曲もあって割と好きな音楽だった。
コンビニで見つけたライブコンサートのチラシも。
赤青黄でデザインされていたら、某宗教団体を連想してしまうわ・・・。
関係ないよね?
※1:コンサートマスター
オーケストラ演奏を取りまとめる役を担う、全奏者のリーダー的存在。
通常、第一ヴァイオリンのトップ奏者がこれに就く。
演奏技術や経験はもちろん人柄や人望も重要視される。
※2:天籟(てんらい)
本来は自然の風が草木等を揺らすときに発する音のことを指すが、
本作では音のない音、宇宙の奏でる音として語られる。
オーケストラが一体となって最高の演奏をしたあと天籟が響くのだという。
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