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関ヶ原

2017-09-07 01:06:47 | 映画

先日の休みに映画を観てきた。

岡田准一主演の時代劇、“関ヶ原”だ。

原作は司馬遼太郎氏の同タイトルの歴史小説。

監督は、“クライマーズ・ハイ”,“駆け込み女と駆け出し男”の原田眞人氏で脚本も務める。

原田氏が映画化を熱望して25年の歳月を経て完成した意欲作。

キャッチコピーは、“「愛」と「野望」、激突!”。

 

 

「関ヶ原」。

歴史に興味があり、とりわけ戦国時代好きにとって、このワードに反応しないわけがない。

その後の歴史を大きく塗り変えた、天下分け目の戦い。

日本の歴史史上、もっとも有名でもっとも規模の大きな戦い。

だが、実際にはわずか6時間という、短時間で雌雄を決したという。

群雄割拠の時代に、日本全国から武将が終結したこの戦、

それぞれの思惑がぶつかり合った、一大決戦を描く物語。

 

主演はV6の岡田准一

NHKの大河ドラマ、“軍師官兵衛”で、稀代の策士・黒田官兵衛を演じた岡田。

関ヶ原の戦いでは、(形式上)東軍の徳川家康側に付いた黒田官兵衛だったが、

今回はその逆の西軍。

しかもその総大将とも言うべき、石田三成役!

家康ではなく、三成が主役の関ヶ原というのはとても興味深い。

それに、これまでとはちょっと異なる三成像が描かれている模様。

これは、観ないわけにはいかない!

 

 

 

1595年、天下統一を成し遂げた豊臣秀吉(滝藤賢一)は暴君と化していた。

世継である嫡男・秀頼が生まれると、

邪魔な存在となる、甥の関白・秀次を謀反の嫌疑をかけて自刃に追い込む。

さらに、その妻や側室、子、侍女たちをことごとく斬首の刑に処すことに。

処刑の検分を任されたのは五奉行のひとり、石田三成(岡田准一)。

秀吉の無慈悲な行為に嘆きつつも、職責をまっとうせんと刑の執行を待つ。

三成のとなりには盟友、大谷刑部(大場泰正)も列席した。

 

処刑が開始されたとき騒ぎが起こる。

処刑を待つ侍女に紛れこんでいた忍が暴れだし、処刑人を倒して逃走を計る。

処刑場は騒然となり、見物者のなかからは豊臣政権を非難する罵声も浴びせられる。

罵声を浴びせて足早に立ち去る大柄の牢人の姿。

「あれは島左近だぞ!」

大谷がそう言うと、顔色を変える三成。

場を沈めるため、三成は処刑人たちを抑える。

大谷にその場を任せ、三成は必死に立ち去った左近の後を追う。

 

 

竹林でようやく左近(平岳大)に追い付く三成。

左近は秀吉の沙汰に怒り狂い、太刀で竹をなぎ倒す。

だが、こともあろうか、その憎むべき秀吉の重臣、三成が目の前に来て、

「知行の半分を差し出すから家臣になってくさだされ!」と乞うてくる。

秀吉を嫌う左近にとって、その側近中の側近の三成に仕える気など毛頭ない。

だが、三成は自身の心情をさらけ出し、義を訴えて説得する。

秀吉が利害によって作った今の秩序を批判し、

それを正して、かつて秀吉が抱いていた正義を継承したいと・・・。

「世がことごとく利に走るとき、ひとり逆しまに走るは男として面白いな・・・。」

左近は三成の揺るぎないまっすぐな正義心に惹かれ、家臣となる。

 

 

1598年、秀吉が没すると五大老のひとり、徳川家康(役所広司)が動き出す。

かねてより天下取りのために虎視眈々と根回ししていた家康。

加藤清正,福島正則,黒田長政など、

朝鮮から帰国した秀吉子飼いの武将たちを自身の陣営に引き込んでゆく。

さらには巧みに縁組を用いて、伊達正宗らも自陣に引き込んでゆく。

朝鮮出兵の折、三成は武将たちから反感を買っていたため、

有力大名は次々と家康陣営に加わって行った。

  

 

1959年、五大老のひとり、前田利家(西岡徳馬)が没すると、

三成を筆頭とする文治派と、加藤清正ら武断派の武将たちの対立はいっそう激しくなり、

ついに三成は武断派七人衆に命を狙われる。

家康の屋敷へ単身逃げ込み、難を逃れた三成だったが、

この事件をきっかけに、彼は五奉行の任を解かれたうえ、居城である佐和山城へ蟄居を命ぜられる。

 

 

1600年。

会津の上杉景勝が徳川に従わない。

三成と景勝の家臣・直江兼続(松山ケンイチ)が結託し、

密かに家康を挟撃する策を練り、とうとう行動に移したのだった。

家康は豊臣に対し謀反を画策しているとして、秀頼の命を受け上杉討伐に乗り出す。

だが、三成は秀頼の名の下に、家康のこれまでの行いを糾弾し、事実上の宣戦布告。

盟友・大谷刑部をはじめ、小西行長,宇喜多秀家,長宗我部盛親,島津義弘らを味方に付け、

毛利家の重臣、安国寺恵瓊を通じて、毛利輝元,吉川広家、

そして小早川秀秋(東出昌大)をも自軍に引き入れる。

 

 

三成挙兵の報を受け、上杉討伐を伊達や最上に任せ家康は反転。

一大勢力を率いて三成討伐に向かう。

かくして石田三成率いる西軍と、徳川家康率いる東軍が対峙した。

決戦の地は関ヶ原。

霧深く立ち込めるその日の朝、銃声とともに戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

必死に応戦する、宇喜多軍,小西軍,そして大谷軍。

だが静観して一行に動かない島津軍。

出陣の狼煙にも反応しない、小早川軍。

黒田軍の銃撃を受け、倒れる左近。

不器用なまでに愛と義を貫こうとした男、三成。

その三成に惚れ、生涯を賭けた左近。

三成の義に付くか、家康の恩に付くか、悩み続ける秀秋。

己の野望のために狡猾に、用意周到に事を運んできた家康。

天下分け目の戦いは、わずか半日で決着が付いた―――。

 

 

 

面白かった。

これまでになかった三成像が新鮮だった。

石田三成といえば、これまでは慇懃無礼で横柄で、

現場を知らない官僚的な役割で、前線で戦う兵たちから反感を買い、

千利休や豊臣秀次の件の黒幕とされたり、

朝鮮征伐での武断派たちへの讒言の数々と、それによる対立・確執。

そんなふうに描かれてしまっていた。

 

 

ところが、その負のイメージを払拭するがごとく、

今作の三成は、ただただ正義を貫く、不器用な男として描かれている。

晩年の秀吉が築いた世を良しとせず、だからといって野心を抱く家康の好きにはさせず、

己一人がその業を背負って、万人が平和に暮らせる世を作りたい。

そういった想いを最後まで貫ぬく、熱い男として描かれていた。

三成の旗印の“大一大万大吉”とは、その願いが込められているのだという。

 

岡田准一の三成、なかなか良かった。

だけど、本職が俳優ではなく、いちアイドル上がりだからかなあ。

声を荒げての早い口調の台詞になると、ゴモゴモと詰まって何言ってんだか判らなくなる。

評定や軍議の席で、そういったシーンがいくつかあり、

たぶんかっこいい、それなりの台詞をまくしたてているのだろうが、それだけが残念。

岡田准一といえば、素晴らしい殺陣も披露してくれるのだが、

なんというか、そこらへんは三成っぽくない。

最前線でボウガン構えて雑兵をバンバン倒すとか、

大砲ガンガン着弾してるなか、馬で走り抜けるとか、

やっぱり、三成っぽくない。

 

 

家康役に役所広司

穏便に見えて、腹の中にはドス黒い野望渦巻くタヌキを見事に演じる。

三成の態度に怒り狂うシーンに、苛立ちを隠せず爪を噛むシーン、

自軍が有利なのを悟って満面の笑みを浮かべるシーン、

侍女の前で少年のようにはしゃぐシーン・・・どれも素晴らしい演技だった。

でっぷりと肥えた腹を露わにするシーンがあるのだが、これ役作りのために本当に太ったとか?

岡田准一とは、蜩ノ記で共演したのを観て以来。

師弟関係だったあっちとは異なり、今作では敵対する役柄で面白かった。

 

 

島左近役の平岳大

これがカッコイイのなんの!

NHK大河ドラマ、真田丸で演じた武田勝頼もカッコよかったが、

今作の左近はそれを遥かに超えるカッコよさ。

まだ40ちょっとの平さんが、(当時だと)老兵の左近をどう演じるのだろうと思ったが、

左近の設定年齢なんて関係なかった・・・。

合戦のシーンはもちろん、軍議での居振る舞いや三成とのやり取りなど、すべてがかっこいい。

原作では三成ではなく、左近が主役だというので、

この映画でも左近の見どころは多く、平さんの熱演が光っていた。

 

 

三成に救われて、忠義を尽くす女忍役に、有村架純

かわいかった。

始めての時代劇で、しかも忍の役ということで、

所作のみならず殺陣も特訓して撮影に挑んだという彼女。

正直、戦国モノに、恋愛要素を含んだ女キャラは要らねえ!って思うけれど、

客寄せのために、むりやりブッ込んだ架空のキャラというわけではなく、

司馬氏の原作にも登場する主要キャラらしいので、これは仕方がないか。

ぬかるんだ山道のなか、敵対する忍に襲われ、応戦中に太ももが露わになるシーンはよかった。

世間じゃ大人気らしいが、自分は“ひよっこ”はまったく面白いとは思えないんだ。

 

 

福島正則と黒田長政の、互いの兜を交換して仲直りとか、

島津勢が静観したまま動かず、敗北が濃厚になって敵陣を突っ切って逃げるとか、

毛屋主水が物見で敵の配置を正確に伝え、家康から賞賛されて饅頭をもらうとか、

三成に対し、唾を吐きかけ蹴り飛ばす福島正則に対し、ねぎらいの言葉をかける黒田長政とか、

色んな逸話もきっちり再現されていて、歴史ファンも思わずニヤリとしてしまうシーンも。

今、大河で直虎やってんだから、直政が島津から撃たれるシーンも欲しかったかな。

 

映画レビューでは、あまりいい評価ではないが、歴史ファンは観て損はないと思う。

三成の人物像や秀秋の裏切りなど色んな解釈があるが、

これまでの定説を覆す、こういう解釈もあるんだと楽しめる。

まあ原作を知っているひとならば、特に新鮮味はないのかもしれない。

自分は原作を読んでいないので、新鮮に感じて楽しむことができた。

リーゼントな福島正則や、同じ九州人だけど、何を言ってるのか解らない、島津勢のかごんま弁も見どころだ。

 

所有していたなかで三成がフィーチャーされた歴史雑誌。

先日書店に行くと、この映画公開に合わせてか、関ヶ原合戦を取り扱っているものが多く出版されてた。

 

映画公式サイトにあったコンテンツ、“武将診断”をやってみたら、小早川秀秋になった・・・。

ええーー優柔不断な裏切り者かよう・・・。

 

 

※西軍総大将は毛利輝元

 



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