いま人間の世界では健康がブームらしいが、アタシだって健康には気を配っている。
「快食快眠快○」に加えて、毎食のご飯のときには「強力わかもと」を4粒飲んでいる。
それに、たれ耳のアタシの弱点はなんといっても外耳炎だから、たまに耳をわざとひっくり返して(とても自然なしぐさなので、なっちはわざとではないと思っているらしい)耳の通気にも気を配っているのだ。
そして、一番大事なのは、リラックスして心の健康を保つことだ。いろいろやり方はあるだろうが、とくに効果的だと思うのはマッサージだ。ただし、自分ではほんの少し難しいので、次のようにするとよい。
なっちがソファに腰掛けたタイミングを逃さず、なっちのまん前に背を向けて座り、ちょっと首を下げて猫背の姿勢になって首を前に突き出し、振り返って上目使いでジーッと視線を送り続けるのだ。そのときのアタシの気持ちはこうだ。「すみませんが、ちょっとお願いできやしませんかねえ」
なっちがただボケーッとしているときはもちろん、雑誌を読んでいるときでも、アタシの視線を無視し続けられる時間はそうは長くない。
気がつくとなっちは、アタシの首すじから頭のてっぺん、肩、肩甲骨、二の腕、背骨の両脇、お尻、太ももを、親指でギュッギュッと力を込めてマッサージしていることになる。アタシの体は、氷河期以来の氷が全部溶け出して地球に大異変を起こしそうなほど、トロトロに溶けてしまう。おー、最高~。