山の雑記帳

山歩きで感じたこと、考えたことを徒然に

山を彫る(番外篇)三方分山

2024-11-23 10:07:59 | 山を彫る

三方分山西面の展望図

私はこの山が好きだ。まず名前が良い。“サンポウブンザン”山の名前としては珍しい字面である。名前の通り山頂から三方へ尾根が張り出している。頂きでは判りにくいが地図上で見ると見事に三等分されている。次にロケーションが良い。定例山行での上り道は中道往還であった。駿河から甲州へ抜ける街道のひとつ。駿河湾で獲れた魚を担いでこの峠を越えた。沼津からここまでの道のり、更に峠を下り上九一色村(古関)までの距離を測ると想像し難いが紛れもないことだ。上り始めの精進集落の佇まいは、それとなく歴史を感じさせる。峠を西進すれば気持ち良い尾根を通って小一時間で三方分山に着く。富士山方面は切り開かれていて明るい。西側は樹木が茂り、眺めが遮られるが木の間越しに南アルプスが見える。あのピークはどこだろう?眺めを楽しんだら南南西への尾根を急降下。精進峠を過ぎた辺りより精進湖が現れ富士山がますます大きく見えてくる。大室山を懐に抱いた“子抱き富士”は面白い。続く尾根筋は快適だ。根子峠を過ぎ、ひと歩きでパノラマ台に出た。前にも増して富士山がドーンと在った。素晴らしい。上り口から山頂へ、更にパノラマ台へ、このコースは本当に良い。
付け足しになるが、アクセスが良いことを挙げる。広々とした駐車場の存在もありがたい。時間的、体力的に三方分山が無理な時でもパノラマ台往復も可、十分に眺望を楽しめる。

阿難坂方面から望む三方分山

パノラマ台からの子持ち富士

2013/1/13積雪期の山行を彫った。良いアイデアを思い付いたので山頂から西を眺めた構図とする。立川さんにお願いして山頂から見える南アルプスを表してもらった。同定された山々を木の間越しに見えるように配置した。際立つピークは東岳(悪沢岳)だった。左寄りの木と木の間に置き、続く山並みは木に遮られたり、見えたりしながら北に連なり、右寄りの樹間に北岳が在る。原画の段階での先生からのアドバイスに従い倒木を追加、なるほど。

蛇足
定例山行の際、斎藤、小沢、池田は精進峠から集落へのショートコースを選択した。急坂を一気に下り集落近くまで来て、ルートを見失った。ボサを通して集落の屋根が見える程の位置だったから右往左往している間に道が見つかった。近道のつもりだったが通る人は少なく踏まれていないようだった。後に続く方あれば注意あれ。

(2024年11月、IK記)

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阿難坂(女坂)

駿河・甲斐を結ぶ街道の一つ中道往還は、IKさんが触れられているとおり「魚の道」でもあった。吉原(富士市)を起点に富士山西麓を通り、精進湖西岸から阿難坂(女坂)1215mで御坂山地を越え、さらに古関(旧上九一色村)からは右左口(うばぐち)峠855mを越えて、甲府まで20里の道程だった。朝、沼津沿岸から揚げられた海産物は、暑い日中を避けて夕方から夜通し馬なども使って運ばれ、翌朝には甲府の魚問屋に並んだという。甲府周辺は、内陸へ生魚を運べる限界である「魚尻線」にあたり、中道往還は別名「五十集(いさば)の道」(魚介類の道)とも呼ばれた。現在、山梨県は人口あたりの寿司屋の件数が日本一、またマグロの消費量が静岡県に次ぐというほどの魚(マグロ)好きは、中道往還あってのことだったのだ。なるほど、山梨の長男妻実家で出された料理の刺身が旨いものだったことを思い出した。山梨土産と言って、中央道の談合坂SAでアワビの煮貝を買ってきて、驚いたこともあった。現在の中道往還といえるR358・精進湖道は中部横断道開通前には、大菩薩嶺など山梨東部の山行によく利用した道だった。

 



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