一村に 響く唄声 月今宵
小さき両手に 菓子溢れさす 良夜
名月や 幼き子らの 影曳いて
旧暦八月十五日の中秋の名月、こちらでは、この夜、子どもたちが、各家を訪ねお菓子を貰う、という風習がある。
通称、「名月さん」
玄関先で、「名月さん、名月さん、名月さんが上がったよ ♪
あがったなら 引かせんの!」と声を揃えて唄う。
すると、家人が、用意していたお菓子や果物などを、子どもたちに与える。
こうして、子どもたちは、この村をほぼ歩き回り、たくさんのお菓子などをゲットする。
昔、我が娘たちが子どもだった頃(およそ30数年前)は、ほんとに子ども達だけで、各家を訪ね、夜遅くまで、楽しんだ。
親は、よほど遅くならない限り、心配することもなく…呑気なものだった。
さすがに今現在は、必ず親が付き添い、一緒に玄関に立つ、あるいは少し離れた場所で、見守る。
八時頃には、皆一斉に帰宅していく。
おそらく学校でも、ルールや門限など話しているのだろう。
コロナ禍を経て、それはますます徹底されたようだ。
訪れる子の数も、随分少なくなった。
もっぱら小さい子、小学生も低学年が主。
高学年は、今年は多分、最後に来た男の子だけ。と思う。
去年よりは、確実に大勢の子がやってくる、との私の予報は外れた。
お菓子なんて、今時の子は、欲しくないだろう。日頃から美味しいもの、高級なものを食べ口が肥えてるもの。
だんだん、この風習も廃れていくのかな、と今年は感じたものだった。
用意したお菓子、途中から大盤振る舞い(笑)
せっかく用意したんだもの。
夫に、「買い過ぎだよ!」と言われるのは、シャクだし。
二つと言わず三つ、いや欲しいだけ持っていってね!とそれぞれ手持ちの袋や、両手に持たす。
小さな手から、こぼれ落ちそう(笑)
付き添いのお母さんが、いいんですか?と言う。
八時少し前に来た男の子。
「あのー、やってますか?」
面白い子!男の子はこんな突拍子のないことを言うから楽しい😃
思わず、「やってますよ。」と答える。
あれ?一人?と聞くと、
「あっちで待機してます。」
じゃ、友達の分も持って行ってね。とほぼ全部渡す。
その子で、本当に終わりだった。
隣やお向かい、裏のお宅からも子どもたちの、元気な声はもう聞こえてこない。
夫が二階から降りてきて、もう来ないだろう?
8時までだと思うよ。と言う。
美しいまん丸お月さまを、もう一度仰ぎ写真を撮る。(スマホじゃこれが限界、残念!)
玄関を閉め、鍵をかける。
今年は、芒と、竜胆、ピンポンマムを花瓶に刺してみた。
初めてのこころみ。
普通、芒や月見団子をお月さまにお供えする、のが全国的だが、こちらは全くそれは無し。
ただ子どもたちに、配るお菓子を用意する、だけだった。
なんか、欠けてると思った去年。
今年は、花屋さんで店員さんと選んだこの三輪。
慌ただしい、でもあっという間。
拍子抜けの、今年の「名月さん」。