退屈男の愚痴三昧

愚考卑見をさらしてまいります。
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「再任拒否」の7(愚か者の回想一)

2020年08月31日 18時07分51秒 | 日記

 七 この二つの事件はいずれも例の学長の時に起きた。その後、この学長は任期途中で栄転し日本で一番偉い学者になった。大学を去るとき、「 Hさんの再任は無くていいね。」と言い残した。後日先輩教員の話で知った。

 私と一緒に再任を拒否された高飛車は私と違って大物である。その動向が注目された。重要な科目も複数担当していた。その為か否かは分からないが特別な待遇で教員として残った。

 さて、私である。再任を拒否された後、あの夏の陣で一緒に戦った、否、どちらかと言えば私がお助けした多くの武将の皆様はことごとく私と距離を置いた。

 何がしかの行動を起こしてくれるかと期待した私が愚かだった。私の再任拒否が明らかとなった直後、上層部から助教授会のメンバーに「騒ぐな」の一語が下されていた。

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 ところで、再任を拒否された者はどうすればよいのだろうか。このままでは、確実に1年後には失職する。

 大学の教員事情を少しでも知る人ならば分かると思うが、大学の教員になるのは非常に難しい。

 しばしば、「学位、業績、留学の三種の神器が決め手になる」と言われるがそれは研究者の就職事情に疎い人の空言であり現実は違う。私が眺めてきた限り三種の神器はほとんど関係ない。

 学位が無くても、業績が無くても、留学経験が無くても、人的つながりさえあれば大学の教員にはなれる。

 逆に、学位、業績、留学経験があっても人的つながりが無ければ大学の教員には絶対になれない。

 私の先輩で若くして司法試験に合格し人並に修士号を持ち海外留学の経験もある教員志望者が、結局、ポストが無く法曹になった。

 これとは逆に大卒の学歴しかなく、業績どころの話ではなく論文と呼べるものが一本もない人を教授に採用した大学もある。もちろん留学経験はない。

 私の専門は刑法だが、まず刑法担当教員でポストを探してもほとんど無い。あってもすでに内定者が決まっていて公募が出る。近年、採用の透明性などと言って公募が盛んだが公募のほぼ全ては候補者が決まっている。

 したがって、教員のポストを得るには学会に足しげく通い人脈を広げ、人事に力のある学者にすり寄り、ときには自説を捨て実力者の学説や、いわゆる通説に屈しなければポストは無い。他者の足を引っ張ることも平気でできなければだめだ。

 私が教員になれたのはほとんど偶然だった。幸運というべきだろう。向上心のある健全な友人が先に就職し、彼が栄転する際、私を推薦してくれたのだ。どれほど感謝しても感謝し尽せない。しかし、今度は全く人脈が無いまま荒野に放り出されることになる。(つづく)



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