拙稿掲載雑誌「警察政策」第20巻が発行されました。
タイトルは「成果主義からrule of lawへ―警察活動を支援するもう一つの視点―」
本拙稿は警察政策学会管理運用部会で愚輩がした口頭報告を基調としこれを端緒として愚考したものです。
部会では本会の元会長である渥美東洋先生のご講演録である「交番制度と米英諸国のcommunity-policingの異同」(警察政策学会資料76号所載)を教材に若干名の現職、元幹部、及び研究者が学習しました。
言うに及ばず先生の見識は広く深いものです。他のご業績と同様、一文字一文字の含意を掴むのは容易ではなくかつその文字がその脈絡に置かれた意味を探るには長時間を要しそれでも核心に迫ることは難しいものです。
文字面を眺め読者に既知の知識でこれを理解しようとすればそれは難儀なことではないのですが、それはそれを読んだ人の認識でしかなく渥美先生の含意を感得することにはならないと言ってよいでしょう。
したがって、それをそのまま渥美先生のご認識として他者に伝えれば誤謬を犯す虞があります。
このように難解なご講演録を輪読する中で筆者にはrule of lawに関する部分の解釈が割り当てられました。
尋常な事態ではないですね。
そこで、過去40年程のノートや資料を引っ張り出し文字の意味を探り文脈を追ってみました。
そうして行った報告ではそれなりの責めを果たすことができたのですが、実務家の認識と研究者のそれとの僅かですが確実に在る隔たりを思うとき限られた時間で意を尽くすことは愚輩の能力からして困難でした。
そこで「成果主義からrule of lawへ」と題して愚考卑見を曝すことにしました。
その概略は以下の通りです。
組織が成果主義を採ればその構成員は結果志向型の活動に向かう。
市場原理が働く領域ではそれが多く採用されているが、種々の訓練を十分受けたものが指揮を執るのでなければ必然的に不幸な事態に至る。
こうした危険をはらむ成果主義を警察が採用するとどうなるのだろうか。
警察活動には市場原理は働かない。
したがって、もともと成果主義が入る素地が乏しいとみて良い。
それにもかかわらず成果主義を入れれば現場が難しい事態に直面するとの危惧がある。
だが、種々の理由から成果主義が捨てられることは難しい。
成果主義の危険性を認識し健全な警察活動の原理としてrule of lawを採る意義は小さくない。
この点を、
1.法と法律との関係―統治の仕組と法執行の原理から―
2.justiceコンセプトによる警察活動の規律
3.rule of lawポリーシングによる人材育成―組織意識の変革の必要性―
4.残された問
(以上拙稿「要旨」から一部引用)
に分けて若干愚考しました。
ご笑覧いただければ大変有り難く存じます。