退屈男の愚痴三昧

愚考卑見をさらしてまいります。
ご笑覧あれば大変有り難く存じます。

自転車の歩道通行について

2019年01月20日 10時21分39秒 | 日記

 あまり法律を引き合いに出して語ることは好きではありません。
 しかし、自転車の歩道通行についてトラブルに巻き込まれそうになったという話が頻繁に耳に入るので少々愚考卑見を曝したく存じます。
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 トラブルの原因の多くは「自転車は車両だから歩道を走っちゃだめだ!車道を走れ!」という歩行者から自転車運転者に向けられる言葉です。
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 もっともらしい発言ですが不正確です。ちなみに、そもそも自転車は道路交通法では車両ではなく軽車両ですね。
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 それはさておき、拙宅周辺でも夜間、わざわざ交差点付近で待ち受け歩道を走行してくる自転車に「ダメダメ!車道を走りなさい。」と「指導」している人がいるそうです。愚輩はまだ遭遇してはいませんが。
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 また、愚輩の勤務先がある場所は夜間大変暗くなるので「夜間の帰途、暗いときは歩道を走るように。」と学生諸氏に指導したところ、「自転車は車道を通るのです。」との反論が他の教員から出てきたので驚きました。「学生が死んだらどうしますか。」とお尋ねしたらご納得くださいました。
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 さて、自転車は歩道を走行してはいけないのでしょうか。もちろん、答えは「否」ですね。
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 しばしば「道路交通法では・・・」という発言の中で、「自転車の歩道通行禁止」が主張されますが、道路交通法には「普通自転車の歩道通行」という見出しが付く「第63条の四」という規定があり、条件付で「普通自転車は(中略)歩道を通行することができる。」とされています。そして、その条件とは、「1.道路標識等により許可されているとき、2.児童、幼児その他車道を通行することが危険であるとき、3.車道または交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき」とされています。
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 ここでご注目いただきたいのが「3.」の条件です。
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 自転車を愛する愚輩も、夜間、自動車の通行量が多く街路灯の照度も十分ではない幅の狭い車道の左端を自転車で走るときは命の危険を感じます。その一方で、歩道には歩行者がほとんどいない。こんなときは自転車の歩道走行は前記「第63条の四第三号」で許される場合と言ってよいでしょう。
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 しかし、こんな状況下でも歩道を走っている自転車と遭遇した歩行者の中には「車道を走れ!」とおっしゃる人がいます。中にはわざわざ自転車の前に立ちふさがり通行を妨害したうえで攻撃的な言動を発する人もいます。
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 「車道を走れ!」と言われた自転車が車道に出て車道の左端(左側ではありません。)を走行していて自動車にはねられたら、この発言者はその結果にわずかでも責任を負えるのでしょうか。
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 法律はそれなりの訓練を受けた人でないとそこから適切な法を発見することはできません。「法律の文字面だけ読んで、ものを語ることは厳に慎むべきである。」とは法学部の一年生が最初に学ぶ法律解釈学の「いろは」です。
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 しかし、こうした訓練を受けていない人は平気で「法律では・・・」という発言をするものです。
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 身近に頻発する出来事の中にも簡単そうで難しいものがずいぶんあるものです。
 他人の生命や身体に危険が及ぶ事態に責任が負えない人には不用意に「法律では・・・」という発言は慎んで頂きたいなと感じています。
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 ちなみに、自転車がやむを得ず歩道を走行する場合、「『人は右、車は左』が原則だから自転車は左側を走るべきだ。」と真顔で言う「知識人」もいますが、上でご紹介した道路交通法の「63条の四第2項」では自転車がやむを得ず歩道を走行する場合には「自転車は、歩道の中央から車道寄りの部分」を徐行しなければならないとされています。つまり、「歩道でも常に左」ということではないのですね。
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 もとより、歩行者の通行を害するような走行は許されません。歩行者と遭遇したら自転車は停止しなければなりません。
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 たとえ対面する歩行者が「歩きスマホ」で前方を見ていない場合でも自転車は安全のため停止するか安全な速度で回避しなければなりません。
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 法律を守ることは大切なことです。
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 しかし、もっと大切なことは人の命を守ることです。
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 法と法律とは別ものです。このこと自体を知らなかったり否定する人もいますが、法と法律とは別ものです。
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 法律は人を縛りますが、法は人の幸福を願います。
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 浅学非才愚考卑見乱文長文多謝

「僧衣で運転は禁止」は違憲

2019年01月02日 18時38分52秒 | 日記
 この警察官の法律執行は憲法違反ですね。切符を切られたご本人様は正式裁判を請求した方が良いのではないでしょうか?
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 報道によれば「県の規則が『運転操作に支障がある衣服』での運転を禁じているため」だそうですが、地方自治体に委任されている罰則規定の制定権限は法律の枠を超えることは許されません。つまり、同種類の事柄について道路交通法が禁じていない行為を禁じることは許されません。また、仮に道路交通法が委任した枠内で禁止行為を定めたとしても道路交通法よりも重い刑罰を科すことは許されません。
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 いわゆる反則切符の制度は道路交通法違反事案において軽微なものについてまで正規の刑事手続に載せると刑事裁判手続がパンクしてしまうばかりでなく、日本人の多くが「罰金以上の刑に処せられたもの」になり、いわゆる前科者が多くなってしまうため道路交通法違反事案を正規の刑事手続から外すものとして考案されたものです。
 したがって、交通反則切符の制度も広い意味で刑事法の領域に属しますから刑事法の諸原則の縛りを受けます。つまり法(=道路交通法)より重い処分は許されません。
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 他方、「運転操作に支障がある衣服」という文言(モンゴン)はあまりにも漠然としています。
 そもそも、刑罰法令を構成する文字列には程度の差こそあれ一定の曖昧さは伴うものです。「わいせつ」の概念などはその典型ですね。
 しかし、それでも違憲だとされないのはその言葉が用いられることになる四囲の状況からその概念内容が明らかになるような運用がされるのでかろうじて合憲だと考えられています。
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 ところが、「運転操作に支障がある衣服」という文言には曖昧さを越えた漠然性があります。漠然とした刑罰法令は処罰対象行為が明確でないので無効です。
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 「運転操作に支障」が生じる衣服なぞいくらでもあります。例えば、厚手のコートを着ていれば運動機能は多少なりとも低下します。したがって、「運転操作に支障がある衣服」という文言は、刑罰法令の不明確性を禁じる日本国憲法31条に違反すると言ってよいでしょう。
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 さらに、報道によれば「県警交通指導課は『僧衣がすべて違反ではなく、状況による』と説明」したそうだが、この説明はさらに違憲の疑いを強めることになります。つまり、違反となる「状況」を一般市民は全く知らされてはいないからです。現場で取り締まりをする警察官が運転操作に支障がある「状況」だと判断すれば切符を切られることになるのでしょう。つまり、刑罰法令は現場警察官の頭の中にあるということにならざるを得ません。
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 当事者様は公安委員会に異議の申し立てするのもいいと思いますが公安委員会はあまり頼りにはなりませんから、一定期間内であれば正式裁判の請求ができるはずなので裁判の場で警察の不手際を明らかにした方が良いでしょうね。
 協力してくれる弁護士はいくらでもいると思います。
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浅学非才愚考卑見乱文長文多謝
https://www.yomiuri.co.jp/national/20181228-OYT1T50118.html