ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

オクジャ/okja

2019年01月29日 | 激辛こきおろし篇

イスラム教およびユダヤ教では豚を不浄な生き物として扱い食さない習慣があるが、本作では人口増加による食料不足を解消すべく遺伝子操作によって巨大化したスーパーピッグを、自然進化型と誤魔化して大儲けをたくらむ企業ミランダ社を超ブラック(反ユダヤ的)に描いている。

本作に限らず、Netflixオリジナル配信の映画というのは、アカデミー作品賞の候補にもあげられている『ROMA』をはじめ、最近配信された『バード・ボックス』もそうだが、どこか説教臭いというか内容が独善的。もしかしたらNetflix社内部に原因があるのではと調べて見たところかなり独特な社風のようなのだ。

使えない部下の首をドンドン切っていかないと甘い上司と思われて自分の首も危うくなる徹底した競争主義。しかも「社風に合わないから」という日本の会社ではおよそ考えられない理由でクビになるケースがほとんどだという。さらに、誰かのミスをみんなの前で公表し合う“サンシャイニング”なる公開懺悔の儀式があるらしく、まるで旧赤軍の総括のようで自由とは真逆をいく社風らしい。

そんなNetflix社から送り出された映画だけに、偽善の塊のようなシーシェパードもどきの動物愛護団体をことさら美化した本作に、胡散臭さを覚えた方もきっと多かったことだろう。以前日本の捕鯨船にホバークラフトを体当たりさせて物議をかもしたシーシェパードのリーダーに、「あなたたちはなぜ原発には反対しないのですか」とある記者が尋ねたところ「お金にならないからさ」という答えが返ってきたという。

オクジャと少女を救うことだけ一生懸命な愛護団体のリーダー(ポール・ダノ)にしても、オクジャ以外のスーパーピッグはすべて見殺し、「お前は組織の信条を踏みにじった」と同じホモサピエンスの韓国人(スティーヴン・ユァン)を半殺しの目に遭わせる差別主義者にしか見えないのだ。(スーパーピッグは食さないのかもしれないが)何かしらの生命を犠牲にしなければ生きていけない人間への視点が、本作からはごっそり抜け落ちているのである。

ミランダ社に広告塔として飼われているマッド動物学者ウィルコック博士(ジェイク・ギレンホール)のオクジャに対する態度の方が個人的にはむしろ好感がもてる。「私は動物を愛している」といいながら涙ながらにオクジャからテイスティング用の肉片を採取するウィルコックの方が、愛のない交尾?をまるでレイプのごとく演出し女性解放の意図をしのばせたボン・ジュノや、クビになった社員の家族のことなど微塵も考えないNetflix社よりもまだ救いがあるように思えるのだがどうだろう。

オクジャ/okja
監督 ボン・ジュノ(2017年)
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