ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

2025年01月30日 | ネタバレなし批評篇

トランプが大統領に就任するまでのフェミニズム&LGBTQ礼賛ムードとはまったく逆さまのマチズモ&女性蔑視形式で、“女性”を徹底的に醜く描いた吉田大八監督のデビュー作品である。女優になるための努力をしていないのにプライドだけは一人前の澄伽(佐藤江梨子)が、両親の事故死で里帰り。自分が女優になれないのは、血のつながった妹清深(佐津川愛美)が過去に描いて大賞を受賞した漫画のせい、と頑なに信じている中二病だ。

原作は漫画なのかなぁと勝手に想像しながら観ていたのだが、本谷有希子という劇作家兼小説家が書いた戯曲だという。女の敵は女だというけれど、実の妹の頭を髪の毛が抜けるほどの力でわしづかみ、カメラ片手に脅迫しながら熱湯風呂でゆでダコプレイ、さらには姉貴を讃える替歌をお立ち台で歌わせるSMプレイの連続技には、ダチョウ倶楽部の故上島竜平だって思わずどん引きしてしまうことだろう。澄伽にやられっぱなしの妹清深だったが、実は虎視眈々と復讐のチャンスを狙っていたのだった。

そんな2人の諍いに割って入り、なんとか家族の一員として認めてもらいたい嫁の待子(永作博美)が、これまた姉妹に輪をかけて不気味なのだ。港区新橋駅のコインロッカーが出生地wで、養護施設で育った待子の趣味は“呪い人形”作りという一種のアスペだ。帰郷した澄伽にやたらと気遣いするものの、「余計なことをすな」と後妻の連れ子である宍道(永瀬正敏)に強烈なドメバイをふるわれる毎日。宍道と見合い結婚して以来「お前とは無理なんや」と拒否られ続け、とうとう夫を逆レイプするのである。

清美の怨念がつまった不気味なホラー漫画(呪いみちるが担当)を随所に散りばめた吉田監督の演出もなかなか冴えており、後の活躍を想像させる仕上がりとなっている。女たちの病みの犠牲者となる宍道が迎える結末は、マチズモがフェミニズムにズタズタにされる未来を予想していたのだろうか。まるで映画『バービー』の真逆をいくような本作のオ○ニー漂う世界観は、リベラルの作り出したファンタジーになれきっている我々の目にはむしろ新鮮に写るのかもしれない。

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ
監督 吉田大八(2007年)
オススメ度[]


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