ノルウェーは現在バブル真っ只中。西欧最大の産油国で、国内総生産の14%、輸出の40%を石油ガス産業が占めている。労働人口の約17%が同産業に従事しているため、オランダ病との懸念があるものの、自然再生エネルギーへの投資は未だ盛んではないらしい。ロシアのウクライナ侵攻とイスラエルのガザ侵攻により高止まりしている石油価格に胡座をかいて、日本のバブル期同様ノルウェーの若者の頭はパンプキン状態、要するにスカスカなのである。
店頭や展覧会場から高額なデイナーズ家具を盗み出し、それ並べるだけのなんちゃってアートが、たまたま著名な雑誌にとりあげられ、一気に芸術家としてもてはやされるようになったトーマス。その彼女シグネは、彼氏ばっかり注目されるのが面白くない。もっと私を見て、もっと私に注目して....承認欲求が満たされないシグネは副作用バリバリのロシア産精神安定剤に手をだして、全身に火傷のような爛れをわざとこさえて、みんなの同情を買おうとするのだが....
周囲の関心や同情を引くために病気を装ったり、自らの体を傷付けたりするといった行動をとるシグネのような虚偽性精神障害を、“ミュンヒハウゼン症候群”と呼ぶらしいが、私に言わせれば、最近日本の学校や会社でもよく見かけるようになった、“中二病のかまってちゃん”に他ならない。ノルウェーのように経済的に余裕のある国だからこそ罹患できる贅沢病であり、ウクライナやガザでそんな病気のふりをしたって、無惨にも見放された北朝鮮兵士のようにドローンの餌食になるだけなのだ
アメリカや日本のように経済がだんだんと停滞してくると自然と社会は保守化していくわけで、増税も選挙を気にしておおっぴらにできなくなると、どうしたって社会保障が真っ先に削られていくことになる。アメリカでトランプが吠えまくっている“DEI”是正も、そんな社会的背景が裏にあるのだろう。ならば、LGBTQやデブ、精神障害者なんかをはなっから差別できなくして、彼ら彼女たちの面倒を国ではなく民間会社に見させればいいではないか。そう考えたのがオバマであり、バイデンなのである。
シグネが一時的に注目をあびそうになったのも、私はこんな醜い困ったちゃんにも同情できるほど心が広いのよ、ってなことを世間にアピールしようとした富裕層の驕りに端を発しているわけで、本当のところ、シグネのことを“容姿も心も醜いどぐされビッチ”ぐらいにしか思っていない。グローバリストが広めようとしたそんなわざとらしい“ウォークカルチャー”をおそらく思いっきり笑い飛ばそうとした、イヤ汁でまくりのダークコメディなのである。
シック・オブ・マイセルフ
監督 クリストファー・ボルグリ(2022年)
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