正義のヒーローも今や集団で悪と対峙する時代。ならばバットマンにやっつけられたヴィランたちだって全員集合させればエンターテインメントになるのではないか、という秋元康流の発想から生まれたかどうかは知らないが、気がつけばマーゴット・ロビーのコスプレのみが注目される駄作に終わってしまった1本。
ギャグのセンスがない人がこういうキレた映画を作ると確実に失敗しますよ、というお手本のような作品で、軍人上がりの映画監督には少々荷が重すぎたようだ。マシュ―・ボーンあたりがメガホンをとればかなり違った雰囲気の映画になったはずだ。
見た目こそハーレイ・クインくりそつのマーゴットではあるが、ジョーカー命のイカレビッチにはとても見えない役作り。イカレているふりをしているだけの常識人としか思えない演出にはかなり問題があるだろう。
そのハーレイ・クインとダブルメインにすえられたデッドショットことウィル・スミスも、百発百中の殺し屋なのか普通のいいお父さんなのか、それともラスボス相手の決死部隊にハッパをかける愛国者なのか、その正体はいまもって謎である。
悪をもって悪を制する計画を練った役人どもの方がよっぽど悪人らしく、決死部隊の面々、その命令に従っている内に正義を行使する気もち良さに目覚めてしまい、よせばいいのにサクリファイスまで披露する立派なヒーロー戦隊と化してしまうのだ。
何をもって正義(または悪)というのかを問いただす、サンデル教授の白熱教室のような真面目ぶった映画でもなく、そのはっちゃけたキレっぷりを期待した観客の鼻も白熱しっぱなしだ。瞳を閉じれば残像となって、マーゴット・ロビーのハンケツだけが瞼の裏に空しく浮かぶのである。
スーサイド・スクワッド
監督 デヴィッド・エアー(2016年)
[オススメ度 ]