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病院や健診機関などで血液検査を受けたことがある方は多いと思います。
血液は空気に触れると数分で固まってしまいますので、特殊な薬品が入ったスピッツと呼ばれている試験管に採取します。
調べる検査項目によるのですが、場合によってはスピッツ数本分の血液が必要なこともあります。
病院の外来採血室で働いている臨床検査技師さんたちはとても丁寧に対応しています。
たとえば、いきなり針を刺すことは決してせず、「チクっとしますよ」などという声がけを必ずします。
その一環なのでしょう。
当院の技師さんたちは、「今日は〇本分の採血をさせていただきますね」などと、わざわざスピッツの本数を患者さんに伝えています。
貧血の有無、肝機能や電解質、炎症反応、腫瘍マーカーなどなど、多い人では5-6本のスピッツが準備されています。
それを見て、「そんなにとられたら貧血になっちゃわないかい?」と心配される患者さんもいらっしゃいます。
実際には、1本のスピッツに採取する血液は多くて2mlなので、5本で10mlほどですから、採血したせいで貧血になるなんてことはありません。
ですが、患者さんは色々と不安になりやすい状況にあるということを理解したうえで、対応する必要があります。
ところで、女性は毎月出血しています。
個人差がありますが、月経期間は3-7日間で、この間に失われる血液量は20~140mlくらいと言われています。
月経で出血するうえ、食生活の乱れによる栄養不足がこれに加わると、鉄欠乏性貧血になりやすいので、注意が必要です。
職場の20代の女性。
入職時の健診で鉄欠乏性貧血を指摘されたので、鉄剤を処方してほしいと、私のところに相談にきました。
聞けば、彼女は一人暮らしで、自炊はあまりせず、お菓子を普段からよく食べているそうで、標準体重をはるかに上回った体型をしています。
貧血に伴う症状はなく、特別な病気もなく、緊急性がなかったので、食生活を見直すように指導しました。
先日、その後の様子を聞いてみましたら、貧血は改善しているということでした。
動画サイトを参考にして、栄養に配慮したメニューを自炊するようにしているそうで、筋トレも取り入れたら、体重も少しづつ減ってきて、ピーク時よりも17kgも減量できているというのです。
無理なダイエットをすると、かえって貧血になってしまうことがありますが、正しい食生活は、逆に貧血を改善させ、ダイエット効果ももたらすのです。
とても素晴らしい取り組みをしていると、大いにほめてあげました。
それと同時に、彼女自身が実感できている効果について、具体的に聞いてあげることも、取り組みを継続する力になります。
「仕事着の風通しが良くなりました!私服の好みも変わってきて、ぴったりしたパンツも履くようになりました」
肥満は様々な病気を引き起こしますが、症状に出にくい病気ばかりなので、厄介です。
でも、中年をすぎて、腰や膝の痛みを実感しているという人、多いはずです。
長い年月をかけ、すり減らしてしまった軟骨は、取り戻せません。
若い時から標準体重を維持する価値は、こういうところにも表れます。