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アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?

2023年11月23日 13時51分05秒 | 一言

 18世紀の英経済学者アダム・スミスは、のちの経済学を決定づける一文を書きました。「我々が食事を手に入れられるのは、肉屋や酒屋やパン屋の善意のおかげではなく、彼らが自分の利益を考えるからである」。

 では、そのステーキを誰が焼いたのか。『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?』は、そんな問いかけから始まります。生涯独身だったアダム・スミスの世話をしたのは母親でしたが、それが語られることはありませんでした。

 これまで主に女性によって担われてきた家事育児、介護などのケア労働しかしそれは経済活動とみなされずGDPにも計算されず経済学からは価値のないものとして切り捨てられてきました。

 アダム・スミスに始まる、利己的で合理的で女性の無償労働に依存してきた「経済人(ホモ・エコノミクス)」を前提とする経済モデルには限界があるのではないか。英国在住のジャーナリストで著者のカトリーン・マルサルさんはそう指摘します。

 男性中心の「経済人」の中で光が当てられてこなかったもう一つの経済。それは市場万能や弱肉強食ではなく、公正や平等、ケアや環境、信頼や心身の健康といった価値に重きをおくものだと。

 今年のノーベル経済学賞を贈られた米ハーバード大のクラウディア・ゴールディン教授も女性就労の研究を続け、男女の格差是正の必要性を訴えてきました。伝統や歴史を覆し、新たな社会をめざす探究は、人間が働くことの意義も指し示します。勤労感謝の日に。


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