2013年に大滝さんが亡くなった時、最初に思ったのは、もうあの独特のお喋りを聴けないんだなってことだった。
晩年の大滝さんは作品のリリースが無くなり、ラジオでのお喋りのほうが印象深かった。
朴訥を装って、いざ話し出すと、とくにアメリカンポップスの話になると流れるような軽快なお喋りが魅力だった。
その次に思ったのが『恋するカレン』のことだった。
『恋するカレン』は、1981年の名盤『A Long Vacation』の8曲目に収められたラブソングだ。
同年6月にシングルカットされた。(オリコンチャート67位)
(フルアルバムだと29:13から)
01. 00:00 - 君は天然色
02. 05:08 - Velvet Motel
03. 08:57 - カナリア諸島にて
04. 13:00 - Pap-Pi-Doo-Bi-Doo-Ba物語(ストーリー)
05. 16:19 - 我が心のピンボール
06. 20:48 - 雨のウェンズデイ
07. 25:15 - スピーチ・バルーン
08. 29:13 - 恋するカレン
09. 33:00 - Fun×4
10. 36:07 - さらばシベリア鉄道 (POWER!!!!!!)
とてもシンプルな青春ソング。
松本隆による歌詞は、ダンスフロアで好きな女の子が他の男子の背中に手を回すのを、壁際から主人公がじっと見ていて、自身の失恋を悟るという内容だ。
Aメロの大瀧さんの歌い出し一発で・・・、何千回聴いても、あの歌い出し一発で鷲掴みにされてしまう。
そして、普通に暮らすだけで毎日何かに傷つき、息をするだけで誰かを傷つけたあの頃をちょっと思い出す。
思い出しただけで過呼吸になるほど、自分もみんなも自意識過剰だった。
どんなに毎日が輝いていたとしても、あんな時代にはよー戻れんし、戻りたくもない。
年を取るって良い事もいっぱいあると、最近よく思いますね。
どんどん自由になっていく自分を感じる。
余談だが、この曲は終わり方も振るっていて、こんな歌詞で幕を閉じる。
++++
かたちのない優しさ、それよりも見せかけの魅力を選んだ。
(中略)
Oh カレン, フラれたボクより悲しい。
そうさ、悲しい女だね、君は。
++++
リスナーは、レコードプレイヤーにかじりついて一言一句聞き漏らすまいと意気込んで聴いていたので、皆まで言わずとも主人公(ボク)が何とか自分を保とうとして必死で言葉を紡いでいるんだってことが容易に理解できた。
今のJポップだと「はい、コレは悲しい負け犬の遠吠えですよ~」って事を説明する1フレーズを、この素敵な歌詞の後に挿入してあげないといけない。
そうしないと「なんかボク(主人公)って感じ悪~い」と思われて終わる。
よく町山智浩が言っている「全部、言葉で言っちゃう文化」ってヤツですね。
そういえば、大滝さんの盟友 細野晴臣も「今の日本はコドモの国」っていう趣旨のことをよく言ってるね。
要は感じ取る部分が軽視されて、絵か言葉で見せてあげないとわからんと。
東京の部屋に帰って時間が取れたら、本棚の奥の方にある『大滝詠一 スクラップブック』をじっくり読みたいな。
レコード・コレクターズ誌の2001年~2014年の大滝さん特集、全15回をまとめた本。
尚、インタビューは別の『大滝詠一 Talks About Niagara Complete Edition』という本にまとめられてます。
写真のストーンズは全然関係無い(笑)
おしまい!
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15年分の特集を一冊に。
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インタビュー集はこちら。
BRUTUS(ブルータス) 2016年 7/1 号 [夏は音楽に出逢う時。] | |
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