『夜間飛行』

また靴を履いて出かけるのは何故だろう
未開の地なんて、もう何処にもないのに

2017年のディ・ビアッジョ

2017-08-01 | Football(サッカー):蹴球しようぜ

これ、先月の話なんだけどね。

ちょっと自分のために残しときたい事があって、以下、メモみたいなもんなんだけど。


ある晩、イタリアの友人宅でワインを飲んでまして。

奮発して美味しいワインを沢山出してくれるもんだから。

いやーだうもすいません、てへぺろ、とか言いながらパカパカ飲んどりまして。


たまたま付けっぱなしてたTVでは、サッカーU21の欧州選手権、ポーランド大会。

(U21と言いながら実際は23歳以下の大会)

その晩の試合は、グループリーグのイタリア代表 vs ドイツ代表。


イタリア代表はGKのドンナルンマ(ミラン)、10番のベルナルデスキ(フィオレンティーナから今オフにユーべ移籍)、ガリアルディーニ(インテル)など、かなりのメンバーです。

試合は、ベルナルデスキの技ありゴール!でイタリアの勝利。


いい10番だなー、ベルナルデスキ。

地元イタリアの勝利に、なんとなく盛り上がります。

ワインお代わり!


現地でイタリア監督協会会長のウリビエリがインタビューに答えてて、懐かC!

(ウリビエリさんは2001年、パルマでの中田英寿の監督だった人です。中田をトップ下で重用しましたが、チームが立ち上がらず開幕2ヶ月で監督の座を追われました・・・)



ここで画面にもう一人、見覚えのある顔。

あれ?

この嬉しそうにインタビューに答えてるイタリア代表監督のオジさん、ディ・ビアッジョじゃん!!


ルイジ・ディ・ビアッジョ。


++++

あれは1998年のフランスW杯。

当時イタリア代表の守備的MFだったディ・ビアッジョは、あの試合、八面六臂の活躍。

あの試合ってのは準々決勝の対フランス戦のことね。


イタリア代表は、地元開催で優勝候補のフランス代表を、延長戦まで0-0で追い詰めてさぁ。

俺はTVの前で、後半からデルピエロに代わって出てきた天才ロベルト・バッジョにキャーキャー言うてました。


バッジョは既にアッズーリの主役ではなかったけど、体は十分切れてました。

(写真は1998年のバッジョとペッソット、フィリポ・インザーギ)


先発した若きデルピエロはこの試合イマイチ重そうで、バッジョ投入により流れはイタリアに傾いた。

(この頃、バッジョはもうポニーテールは切ってました、ホッ)


で、結局延長戦でも決着つかず、始まったPK戦。

MVP級の働きでピッチを駆け回ったディ・ビアッジョにキッカーの番がまわって来たとき、なんだかイヤな予感がした。


こういう時、試合で活躍した選手ほどPKを外す傾向がありまして。

でも、いかにも外しそうなバッジョもあっさり決めてるし、無骨なファイター・タイプのディ・ビアッジョは大丈夫なはず・・・。


パカーン。

酷暑のフランスに響く、あの残酷な音。

ディ・ビアッジョの蹴ったボールはゴール・バーを直撃し、そのままサンド二の空に舞い上がった。

ディ・ビアッジョが後ろにのけ反って泣いたのを今でも覚えている。

自分のミスキックが皆の努力を台無しにしてしまったんだと。

神出鬼没、中盤を制する戦士みたいな男が、人目をはばからず泣いていた。


あぶねー、つられてこっちも泣きそうだった。

なんで、120分間、一番ピッチを駆け回ったディ・ビアッジョが、よりによってこの役回りなんだ・・・。


アッズーリのチームメイトたちは、酷暑のなか120分間走り回った疲れとショックで、座り込んだまま誰も動かない。


その時、TVカメラが、泣き崩れるディ・ビアッジョに駆け寄るロベルト・バッジョの姿を捉えた。

4年前のアメリアW杯決勝でPKを外し、イタリア中から非難された男が、ディ・ビアッジョに声をかける。


あんなに泣いてたディ・ビアッジョに、果たしてバッジョの声は届いただろうか。

分からない。


でも、誰かがかけよって自分を支えてることは感じたはずだ。


バッジョが駆け寄るのを見て、ひとり、またひとり、選手がディ・ビアッジョを支えに行く。


良かった。

代表チームにバッジョが居て良かった。



でね。

ディ・ビアッジョはプレイヤーとして一流だったから、その後もセリエAのインテルとかで元気に活躍したんだけど。

サンド二でのフランス戦の印象が強すぎて、俺の中でディ・ビアッジョと言えば、PKのあと泣き崩れる姿だったわけ。

18年間もの間。


それが、U21とは言えイタリア代表監督として帰ってきてさ。

今夜チームを勝利に導いて、コロコロ笑ってるわけよ。

ディ・ビアッジョが。

先生、ちょっと太ったんじゃない(笑)?


こうして俺の中のディ・ビアッジョ像は泣き崩れたあの日の姿じゃなくて、幸せそうに笑う太ったおっさんの姿に更新されたってわけ。

嬉しいな。

あー、コレすんごい嬉しいわ。


おまけ

結論としては、この後、ディ・ビアッジョ監督率いるU21イタリア代表は準決勝のスペイン戦で、サウール・ニゲス選手にハットトリックを決められて大会を去りました。

サウール・ニゲス(アトレティコ・マドリー所属)・・・、恐ろしい点獲り屋だ。

ダイアゴナルに走りこんで良し、遠目から打って良し。

スペインだとベジェリン(アーセナル)や、デウロフェウ(祝・バルサ復帰)に注目してたんですが、今大会は完全にニゲスの大会でした。

でもまあ、これはまた別の日の、別のお話。

とにかく、この晩(ドイツ代表戦の夜)に関しては、満面の笑みのディ・ビアッジョを見れたって事でね。


おまけ(その2)

1998年のフランスW杯の話。

試合後に読んだ記事によると、PK戦で泣き崩れるディ・ビアッジョにロベルト・バッジョがかけた言葉は

「PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持ったものだけだ」。

そうだね。

あと、PKと言えば・・・。

率いているチームがPK戦にもつれ込むと、ピッチを後にしてトイレに閉じこもっちゃうオシム監督が懐かしいなぁ(笑)

繊細なんだよね、皆ね。



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