MONKEY
柴田元幸責任編集
モンキー Vol.1 FALL/WINTER 2013-14
特集『青春のポール・オースター』
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何がどう起きたか、きちんとわかってもらうためにすべてを伝えないといけません。
私は馬鹿です。
本当に馬鹿です・・・・・・何日かに一度、公園に芸をしにやって来る人たちがいます。
芸を演じて、客から何がしかの小銭を恵んでもらうのです。
もう本当にどうしようもない暮らしなので、どんなにつまらない芸でも私たちは歓迎するのです。
着想もリズムもどうだっていい、とにかくここにいることの辛さを忘れさせてくれるものなら何だっていいのです。
(都市からの手紙)
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「青春の」ってのは、柴田さんにとってオースターが青春なんだと思う。
この雑誌で柴田さんは、
1、オースターについて余すことなく書き綴ることで自らの青春を回顧し、
2、若き日のオースターのキラリと光る草稿を世に紹介するという文化的活動を行い、
3、世の中の本屋さんに、表紙に思いっきり「オースター」って書いた雑誌を平積みすることで、自らの愛を目一杯表現しています。
こんな人生があるんだねぇ。
柴田さんのような。
目玉は
『草稿と断片』
と題された、若き日(1967-70)のオースターによる未完の小説の草稿&断片×9本。
まあ、書きなぐりなのかもしれませんが、ニューヨーク3部作とかを読んだ時と同じあの感覚、
気温がスッと下がるような、
あれ、もう感じますね、初期作品から。
そして、
『オースター A to Z』。
柴田さん的、オースター大辞典。
を装って、書きたいことを書いている(笑)
こういうの大好き。
そして、このA to Z の中で、俺がもっとも気に入った一節は、「Y」の項。
YOUTH(青春)について考察した柴田さんは、ふと、
オースターが
「若い頃は女にもてた。女性の視線は自分に集まって当然だった」
という前提にたって作品を書いていることに思い当たります。
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これを読んだときは愕然とした。
僕の場合、べつに歳なんかとらなくても、はじめから女性の視線はしっかり僕をスルーしてきたからだ。
オースターはおそらく、若いうちは女性の視線が自分にとまるものだという前提にたっている。
まああれだけハンサムだからなあ・・・・・・世界観の違いを痛感した次第である。
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ガハハのハ。
感服するばっかりじゃ悔しいから、チクッと言ったったね。
まあ、オースターは意にも介さない気もしますが。
ぼかぁ断然、柴田サイダーっスよ、元幸さん!
<だから、ルー・リードじゃないっつーの>
■ニューヨーク三部作
・『幽霊たち』 (柴田元幸訳/ 1989年・新潮社)
・『鍵のかかった部屋』 (柴田元幸訳/ 1989年・白水社)
・『ガラスの街』 (柴田元幸訳/ 2009年・新潮社)
■長編
・『ブルックリン・フォリーズ』 (柴田元幸訳/ 2012・新潮社)
■オースター編
・『ナショナル・ストーリー・プロジェクトⅠ』 ポール・オースター編
■ オースター特集
・『青春のポール・オースター』 MONKEY vol.1
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無事、出ましたね!