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『時は乱れて』
フィリップ・K・ディック(米:1928-1982)
山田和子 訳
"Time Out of Joint" by Philip K.Dick(1959)
2014年・ハヤカワ文庫
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この町でその男の名を知らぬものはいなかった。
レイグル・ガム。
新聞の懸賞クイズ“火星人はどこへ?”に、2年間ずっと勝ち続けてきた全国チャンピオンだ。
だが彼には時折、自分が他人に思えることがあった。
ほんとうの自分はいったい誰なのか?
ある日、同居する弟夫婦の子供が、近所の廃墟からひろってきた一冊の古雑誌が引き金となって、彼を驚くべき真実へと誘ってゆく。
(早川書房)
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十の州の十枚のプレート。
ロッキー山脈を越え、ユタ州の大平原を走り、ネヴァダ州の砂漠へ・・・
雪をいただいた山々、大平原にギラギラと燃え立つ熱い空気。
フロントガラスに衝突する虫たち。
何千ものドライブ・イン、モーテル、ガソリンスタンド、標識。
常に遠方に続いている山並み。
乾いた単調な道。
しかし、何よりも充足感をもたらすのは、移動しているという感覚だ。
どこかに向かっているという感覚。
場所の変化。
夜ごと異なる町へ。
冒険。
ロードサイドカフェの孤独なウェイトレスとのロマンス。
大都会に行って、すばらしい時間を過ごしたいと夢見ているかわいい女性。
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先生、実はボク、世界を救う英雄なんじゃないでしょうか。
なんか、そんな気がするんです。
間違いなかッ!
そんな幻想が、ふいに現実のものとなる。
グッバイ、昨日までの平凡な日常。
アンド、平凡な俺。
面白いってば。
ちょっとスケール的には小所帯な気もするけど、まともな小説です。
ディックにしてはちゃんとしてる!
1978年にサンリオSF文庫の初回配本として刊行されて以来の復刊。
このところ、ディック作品が続々復刊しているのは、やはりハリウッド映画の『アジャストメント』(11年/米。マット・デイモン主演。悪くないです)とか、『トータル・リコール』(12年/米。シュワちゃんの傑作をコリン・ファレルでリメイク)とかの流れなんでしょうかね。
ありがたいね。
助かる。
あと、
「偽物の世界ってのはいいけど、物体が紙片に変わるくだり要る~?」
とか言いっこなしよ。
ディックなんだからー。
<フィリップ・K・ディックの世界>
■本でP・K・D!!
・『去年を待ちながら』(1989年・創元SF文庫)
・『流れよわが涙、と警官は行った』(1989年・ハヤカワ文庫)
・『マイノリティ・リポート』(1999年・ハヤカワ文庫)
・『フィリップ・K・ディック・リポート』(2002年・ハヤカワ文庫)
・『最後から二番目の真実』 (2007年・創元SF文庫)
■映画でP・K・D!
・『マイノリティ・リポート』 (2002年・米・スティーブン・スピルバーグ)
・『スキャナー・ダークリー』 (2006年・米・リチャード・リンクレイター)
・『NEXT -ネクスト-』 (2007年・米・リー・タマホリ)
・『アジャストメント』 (2011年・米・ジョージ・ノルフィ)
・『トータル・リコール』 (2012年・米・レン・ワイズマン)
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時は乱れて (ハヤカワ文庫SF) |
山田 和子 | |
早川書房 |