『夜間飛行』

また靴を履いて出かけるのは何故だろう
未開の地なんて、もう何処にもないのに

『時は乱れて』 フィリップ・K・ディック

2014-05-11 | Books(本):愛すべき活字

『時は乱れて』
フィリップ・K・ディック(米:1928-1982)
山田和子 訳
"Time Out of Joint" by Philip K.Dick(1959)
2014年・ハヤカワ文庫



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この町でその男の名を知らぬものはいなかった。

レイグル・ガム。


新聞の懸賞クイズ“火星人はどこへ?”に、2年間ずっと勝ち続けてきた全国チャンピオンだ。

だが彼には時折、自分が他人に思えることがあった。

ほんとうの自分はいったい誰なのか?

ある日、同居する弟夫婦の子供が、近所の廃墟からひろってきた一冊の古雑誌が引き金となって、彼を驚くべき真実へと誘ってゆく。

(早川書房)

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十の州の十枚のプレート。

ロッキー山脈を越え、ユタ州の大平原を走り、ネヴァダ州の砂漠へ・・・

雪をいただいた山々、大平原にギラギラと燃え立つ熱い空気。

フロントガラスに衝突する虫たち。

何千ものドライブ・イン、モーテル、ガソリンスタンド、標識。

常に遠方に続いている山並み。

乾いた単調な道。


しかし、何よりも充足感をもたらすのは、移動しているという感覚だ。

どこかに向かっているという感覚。

場所の変化。

夜ごと異なる町へ。


冒険。

ロードサイドカフェの孤独なウェイトレスとのロマンス。

大都会に行って、すばらしい時間を過ごしたいと夢見ているかわいい女性。

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先生、実はボク、世界を救う英雄なんじゃないでしょうか。

なんか、そんな気がするんです。

間違いなかッ!


そんな幻想が、ふいに現実のものとなる。

グッバイ、昨日までの平凡な日常。

アンド、平凡な俺。


面白いってば。

ちょっとスケール的には小所帯な気もするけど、まともな小説です。

ディックにしてはちゃんとしてる!


1978年にサンリオSF文庫の初回配本として刊行されて以来の復刊。

このところ、ディック作品が続々復刊しているのは、やはりハリウッド映画の『アジャストメント』(11年/米。マット・デイモン主演。悪くないです)とか、『トータル・リコール』(12年/米。シュワちゃんの傑作をコリン・ファレルでリメイク)とかの流れなんでしょうかね。

ありがたいね。

助かる。


あと、

「偽物の世界ってのはいいけど、物体が紙片に変わるくだり要る~?」

とか言いっこなしよ。

ディックなんだからー。

<フィリップ・K・ディックの世界>
 ■本でP・K・D!!
『去年を待ちながら』(1989年・創元SF文庫) 
『流れよわが涙、と警官は行った』(1989年・ハヤカワ文庫) 
『マイノリティ・リポート』(1999年・ハヤカワ文庫) 
『フィリップ・K・ディック・リポート』(2002年・ハヤカワ文庫) 
『最後から二番目の真実』 (2007年・創元SF文庫)

■映画でP・K・D!
『マイノリティ・リポート』 (2002年・米・スティーブン・スピルバーグ)  
『スキャナー・ダークリー』 (2006年・米・リチャード・リンクレイター) 
『NEXT -ネクスト-』 (2007年・米・リー・タマホリ) 
『アジャストメント』 (2011年・米・ジョージ・ノルフィ) 
『トータル・リコール』 (2012年・米・レン・ワイズマン) 


<Amazon>

時は乱れて (ハヤカワ文庫SF)
山田 和子
早川書房

 


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