『夜間飛行』

また靴を履いて出かけるのは何故だろう
未開の地なんて、もう何処にもないのに

『虐殺器官』 伊藤計劃

2014-12-02 | Books(本):愛すべき活字

『虐殺器官』
伊藤計劃(日:1974-2009)
"Genocidal Organ" by Project Itoh(2007)
2007年・早川書房
2010年・ハヤカワ文庫

++++

9.11以降の”テロとの戦い”において先進諸国は徹底的な管理体制に移行し、テロを一掃。

しかし、その余りの管理ぶりに、庶民からは

「いちいち履歴が残るから、エロ本ものんびり買えない」

と不満が続出していた。

そんな中、米軍大尉クラヴィス・シェパードは謎の男、ジャン・ポール・ゴルチエを追ってチェコへと向かう。

++++


いつもより眺めが良い左に 少し戸惑ってるよ~♪

と、いう訳で。


いや、あのね。

マッキーこと槇原 敬之の『もう恋なんてしない』のサビの

もう恋なんてしないなんて言わないよ絶対~♪

は、本当は「もう恋なんてしない」っていう歌詞だったけど、若い人が聴くのにネガティブな内容はイカン!と、

後から「言わないよ絶対」を付け足したってのは有名な話ですが。


ここで伊藤計劃に聞きたいのは・・・。

本作『虐殺器官』は、長い長いジョン・ポール追走劇を終えた後に・・・、

巻末のたった8ページの『エピローグ』で物語が180度逆転するんだけど。

そこんところは、最初から「ありき」で創られた物語なのか、それとも長引く作家自身の闘病生活がストーリーに影響を及ぼしたものなのか。

どっちなんでしょう。

残念ながら、もう聞けませんけど。


いやー、小説とか映画におけるアイロニカルなエンディングにも、それなりに慣れてるつもりではいるんだけど。

本作については、主人公・シェパード大尉の最後の選択が、なんかシックリこないのよ。

単に火のついたウンコ、つまりヤケクソってコトなのかしら・・・?


大森望の解説で、星雲賞授賞式で故人に替わって登壇した、作家のご母堂のスピーチが引かれているんですが。

++++

三月二十日に亡くなるだいぶ前から、食事も水もあまり摂れない状態になっておりましたけれど、亡くなる日の夕食に大好きなカレーが出て、少し食べてみると言いまして、スプーンに10杯ぐらい食べたんですね。

それから1時間ぐらい経ってから、床ずれを防ぐために姿勢をちょっと変えたとたん、すーっと意識がなくなって、そのまま亡くなってしまいました。

お腹が空いたまま逝ったら、三途の川も渡れなかったんじゃないかと思いますが、最後にカレーを食べたので、今帰ってこないところをみますと、なんとか向こうにたどりついてるんじゃないかと思います。

++++

「解説」を読んで泣きそうになったのは、後にも先にも初めてです。



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