久々のロンドン。
戦争の影響でフライトはユーラシア大陸を迂回し、地球を反対回りである。
飛行時間は14hr25min。
往時のフライトの約2時間増し。
それこそ、グリーンランドの上を、何時間も飛んじゃう。
何度寝直しても、起きたらまだグリーンランドの上空であたしゃびっくりしたよ。(まるちゃん)
戦争はかけがえのないものを沢山奪うが、無関係な一般客のフライトにおいても、物凄く燃料と時間が無駄になるのだった・・・。
メイフェアの古書店、シャペロ・レア・ブックス(Shapero Rare Books)。
グランド・セイコーの路面店の斜め向かいにあります。
もちろん素敵なお店で、素晴らしい品ぞろえなのですが・・・。
ここは立派な高級店であり、円安も相まって先立つものがない。
例えばイアン・フレミングの『ロシアより愛をこめて』の57年の初版が4,250ポンド(76万円)。
※ショーン・コネリーの映画のおかげで通りが良いので「ロシアより」としましたが、東京創元社が64年に邦訳した時は『ロシアから愛をこめて』でした。
クリスティの『象は忘れない』(ポワロシリーズの実質的な最終作)の72年の初版も同じく4,250ポンドである。
イアンのバカ!
買えない腹いせに、割と大きな声で日本語で呟いてみたものの・・・。
店員は美しいシェープでゆっくりと肩をすくめると、深い憐みのこもった瞳をこちらにチラリと向け、溜息をつくだけなのだった。(やや文学風)
そんなこんなで、今回、小生が行きたいのは、もっと庶民的なお店。
ロンドンに6店舗を構えるDaunt Books。
お目当ては、やはり世界一美しい書店とも評されるメリルボーン店。
1990年オープンで、歴史はそんなに古くない。
(普通は33年も歴史があれば十分だが、ここ英国では若いお店のように感じてしまう)
さっきのシャペロとあんまり変わらく見えますが、ロンドンは建物の構造上、お店の外観に関しては、どこもほぼ同じ感じなんですよね。
しかし。
狭い店内の右奥。
これまた極小な木製の階段をのぼると・・・。
この解放感。
この眺めが本書店を有名にした。
この店のテーマは旅。
蔵書は国ごとに分類され、面白いのはガイドブックも小説も、フランスならフランス、日本なら日本の分類なのです。
ロンドンのコーナーも胸躍りますが、小生は既に読み切れないほどロンドン関係の本を家に置いておりまして・・・。
吟味です、こんな時こそ冷静な吟味が必要です。
2階の隅々まで、面白そうな本が並び、ワクワクします。
嗚呼、もっと時間が欲しかった。
さて、海外の書店で気になるのが日本文学のコーナーです。
今、ここに映っているのは、ペンギンのクラシックスのコーナーなので、このお店の独自セレクトという訳ではありませんが。
カルヴィーノの隣には川端康成の『雪国』。
イーディス・ウォートンの隣に、三島由紀夫の『真夏の死』。
そして、そして。
エドガー・アラン・ポーと、ドストエフスキーに挟まれて、1冊だけ津島佑子の『光の領分』。
コロナ禍も明けた2023年のロンドン、メリルボーン・ハイ・ストリートにて、野間文芸新人賞 第一回受賞作との邂逅・・・。
なんだかワクワクする。
天気はカラリと晴れ渡り、旅の幸先は良さそうです。
<続く>