『夜間飛行』

また靴を履いて出かけるのは何故だろう
未開の地なんて、もう何処にもないのに

映画 『ハイ・フィデリティ』

2012-09-25 | Movie(映画):映画ってさ

『ハイ・フィデリティ』
"Hi Fidelity"
監督:スティーブン・フリアーズ
脚本:D・V・デヴィンセンティス、スティーヴ・ピンク、ジョン・キューザック、スコット・ローゼンバーグ
2000年・米



英作家ニック・ホーンビィの同名小説(1995年)の映画化。


ニック・ホーンビィの小説のファンとしては、物語の舞台を「ロンドン」から「シカゴ」へ移したという設定を聞いただけで気を失いそうになる。

ニック作品はロンドンじゃないと意味がないのに・・・!

ないのに!

なんだけど、ロケーションを工夫していて、なんだか普通にロンドンっぽい画で撮れていて、実際に観るとあんまり気にならない。



唯一、舞台がシカゴであることを強く感じさせるシーンは、主人公ロブを演じるジョン・キューザックが、バイオグラフ・シアターの前で

「ここでデリンジャーが撃たれた。FBIに垂れこんだのは彼の恋人!哀れなもんだ」(※)

と観客(我々)に向かって説明するシーン。

ここだけは、ものすごくシカゴだけどね。

あのシーンは、舞台設定がシカゴであることの説明をかねてるんだろう。


※ジョン・デリンジャーは1930年代シカゴの実在の銀行強盗。

恐慌化の米社会で義賊として持てはやされたが、1934年、映画館「バイオグラフ・シアター」から出てきたところをFBI捜査官により射殺された。

その晩、デリンジャーが映画を観に行くことをFBIに垂れこんだのは、デリンジャー友人のアンナ・セージ。


シカゴの設定だから、登場人物はジョン・キューザック以下、皆、当然アメリカ英語で話してるものの、なんとなくキャラクター作りにおいて英国テイストを出している感じ。



特に店のバイトのディック(トッド・ルイーゾ)は、全身から滲み出す英国のロック・オタク・テイストが素晴らしい!

あれはアメリカで言うところの"ナード"ではなく、完全に英国の音楽オタクだね。

聴いてんのも当然、ベルセバで・・・。


そして、登場人物のなかで最もアメリカンテイストなチャーリー(主人公ロブの元カノ)役のキャサリン・ゼタ・ジョーンズが、実際は英国人女優であるというこの不思議。


・・・それにしても、主人公ロブはローラ(イーベン・ヤイレ)のような素晴らしい女性と出会えて良かった。


男はだいたいにおいて最低の生き物であり、本作はそこんとこを凄く巧く表現している。

でも、この映画のローラみたいに、男のくだらなさ、ちっぽけさを受け止めてくれて、穴倉から救いだしてくれる女性と出会えるかどうか。

そこが男の人生を分けるッ!

要するに、運だね。

そこんとこは、運だけですよ。


■おまけ

主人公ロブと分かれることにした恋人ローラが、ロブの部屋に荷物を引き取りに来るシーン。

ロブから、「なぜ去るのか?」問われたローラはこんな事を言う。


「あなたは昔と同じだもの。

あなたは靴下まで同じ。

昔は将来の夢を語ったものよ。

人は変るものだけど、あなたはそれを許さないわ。

自分にも。」


・・・これは痛い!

去り行く女に言われたくない言葉、第一位に認定したい。


■おまけのおまけ

ジョン・キューザックが本作関連のインタビューでこんなことを言っている。

(主人公ロブとしての意見でなく、本作の共同脚本家の一人であるジョン・キューザックとしてのコメント)

「僕が16~17歳のころ好きだった音楽は、

25歳でいちどパワーを失い、

28歳で意味が変わってきた」


・・・それ、ものすごく分かるなぁ。

キューザックの顔は嫌いなのに、なんとなくずっと好きなのは、こんな事を言ってくれる人だからだな。


■おまけのおまけのおまけ


ジャック・ブラックには、「いてくれて、ありがとう」という言葉しか浮かばない。



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ハイ・フィデリティ (新潮文庫)
Nick Hornby,森田 義信
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