『ハイ・フィデリティ』
"Hi Fidelity"
監督:スティーブン・フリアーズ
脚本:D・V・デヴィンセンティス、スティーヴ・ピンク、ジョン・キューザック、スコット・ローゼンバーグ
2000年・米
英作家ニック・ホーンビィの同名小説(1995年)の映画化。
ニック・ホーンビィの小説のファンとしては、物語の舞台を「ロンドン」から「シカゴ」へ移したという設定を聞いただけで気を失いそうになる。
ニック作品はロンドンじゃないと意味がないのに・・・!
ないのに!
なんだけど、ロケーションを工夫していて、なんだか普通にロンドンっぽい画で撮れていて、実際に観るとあんまり気にならない。
唯一、舞台がシカゴであることを強く感じさせるシーンは、主人公ロブを演じるジョン・キューザックが、バイオグラフ・シアターの前で
「ここでデリンジャーが撃たれた。FBIに垂れこんだのは彼の恋人!哀れなもんだ」(※)
と観客(我々)に向かって説明するシーン。
ここだけは、ものすごくシカゴだけどね。
あのシーンは、舞台設定がシカゴであることの説明をかねてるんだろう。
※ジョン・デリンジャーは1930年代シカゴの実在の銀行強盗。
恐慌化の米社会で義賊として持てはやされたが、1934年、映画館「バイオグラフ・シアター」から出てきたところをFBI捜査官により射殺された。
その晩、デリンジャーが映画を観に行くことをFBIに垂れこんだのは、デリンジャー友人のアンナ・セージ。
シカゴの設定だから、登場人物はジョン・キューザック以下、皆、当然アメリカ英語で話してるものの、なんとなくキャラクター作りにおいて英国テイストを出している感じ。
特に店のバイトのディック(トッド・ルイーゾ)は、全身から滲み出す英国のロック・オタク・テイストが素晴らしい!
あれはアメリカで言うところの"ナード"ではなく、完全に英国の音楽オタクだね。
聴いてんのも当然、ベルセバで・・・。
そして、登場人物のなかで最もアメリカンテイストなチャーリー(主人公ロブの元カノ)役のキャサリン・ゼタ・ジョーンズが、実際は英国人女優であるというこの不思議。
・・・それにしても、主人公ロブはローラ(イーベン・ヤイレ)のような素晴らしい女性と出会えて良かった。
男はだいたいにおいて最低の生き物であり、本作はそこんとこを凄く巧く表現している。
でも、この映画のローラみたいに、男のくだらなさ、ちっぽけさを受け止めてくれて、穴倉から救いだしてくれる女性と出会えるかどうか。
そこが男の人生を分けるッ!
要するに、運だね。
そこんとこは、運だけですよ。
■おまけ
主人公ロブと分かれることにした恋人ローラが、ロブの部屋に荷物を引き取りに来るシーン。
ロブから、「なぜ去るのか?」問われたローラはこんな事を言う。
「あなたは昔と同じだもの。
あなたは靴下まで同じ。
昔は将来の夢を語ったものよ。
人は変るものだけど、あなたはそれを許さないわ。
自分にも。」
・・・これは痛い!
去り行く女に言われたくない言葉、第一位に認定したい。
■おまけのおまけ
ジョン・キューザックが本作関連のインタビューでこんなことを言っている。
(主人公ロブとしての意見でなく、本作の共同脚本家の一人であるジョン・キューザックとしてのコメント)
「僕が16~17歳のころ好きだった音楽は、
25歳でいちどパワーを失い、
28歳で意味が変わってきた」
・・・それ、ものすごく分かるなぁ。
キューザックの顔は嫌いなのに、なんとなくずっと好きなのは、こんな事を言ってくれる人だからだな。
■おまけのおまけのおまけ
ジャック・ブラックには、「いてくれて、ありがとう」という言葉しか浮かばない。
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