『夜間飛行』

また靴を履いて出かけるのは何故だろう
未開の地なんて、もう何処にもないのに

映画『ダークナイト ライジング』

2012-09-23 | Movie(映画):映画ってさ

『ダークナイト ライジング』
"The Dark Knight Rises"
監督:クリストファー・ノーラン
脚本:ジョナサン・ノーラン、クリストファー・ノーラン
2012・米 

++++

前作『ダークナイト』での、ジョーカーとの死闘から8年。

“光の騎士”ハービー・デントの死によって制定された「デント法」の下、ゴッサムからマフィアは消え去り、平穏な日々が訪れていた。


戦時の英雄であった警部ゴードン、そしてバットマンは過去の遺物になり、人々の記憶から忘れ去られていく。

そんな折、偽りによって手に入れられた平和は、新たなる脅威(ヴィラン)、ベインによって破られることとなる。

ダークナイトとなったバットマンは再び起つのか。

ひょっとしてもう起たないんじゃないのか。

++++


驚いた。

ストーリーじゃなくて、映画館がガラガラなことに。

こんなにガラガラな映画館で映画を観るのは、子供のころ父親に連れていってもらった『めぐりあい宇宙編』(1982年)以来かもなぁ。

『めぐりあい宇宙編』は機動戦士ガンダムの劇場用アニメだけど、説明不要ですよね。

『めぐりあい宇宙編』と書いて「めぐりあいそら」と読みますけど、分かってもらえますよね。

「宇宙」をそらと呼ぶのは許すとして、「編」はどこ行った?とかいう質問は勘弁してつかーさい。


それにしても、さすが前作『ダークナイト』が先進国で唯一ヒットしなかった国、日本。


日本人って島国で何年も海に守られて生きてきたから、あーいう風に、理不尽な感じでジョーカー(ヒース・レジャー)から生きる為の選択を迫られるんのが、理解しにくいのかも新米(しんまい)。

「まあ、腹を割って話せば分かりあえるよ」

っていう連帯感のもとでしか問題を解決したことがないから、本気で話の通じない相手が出てくると、すぐ思考停止して手詰まりになるもんね、外交でも。

このクオリティーで映画撮ってんのに、いっつも日本だけコケちゃって、監督のクリストファー・ノーランにはなんか申し訳ない感じ。


【注意:以下、ネタバレあり】


ビックリしたのは、本作が普通のエンターテイメント大作になってたことだ。

これなら子供にも見せられるわ。

『ダークナイト』の衝撃は何だったのか。


『ダークナイト』との最大の違いは、本作の敵役であるベイン(トム・ハーディ)が、明確な理由をもってゴッサムを襲っていること。

今じゃすっかり黴が生えてしまった80~90年代の映画の敵役が、揃いも揃って必ず何らかのトラウマを背負っていたように、ベインはトラウマというか、書くと大オチがバレちゃうんで書けないけど、まあ可愛い理由で戦っとる訳ですわ。

片や、何のために全身全霊でちょっかいをかけてくるのか理由が一切分からなかった『ダークナイト』のジョーカー(ヒース・レジャー)。

2人の怪人(ヴィラン)は根本的に全く違う。


ベインが戦う理由を、我々が明確に理解できると一体どうなるのか。 

あら不思議、あんましベインが怖くない。 

ベインちゃん・・・、そう呼んでもいいですか?

人間は理解できる狂気は、理解できない狂気ほどには恐怖を感じないもんなんだね。


ベインが戦う理由を背負った時点で、本作はごく普通のヒーロー映画に戻った。

でも、面白くないという意味じゃないよ、念のため。



本作は、前作『ダークナイト』で混乱したまま4年間も放っておかれたファンに対するご褒美とも言えるかも知れない。

3部作の真ん中が混乱して終わるのは、まあ、定石だからね。

そう考えると、この後編が出たことで3部作の中篇と捉えた途端、『ダークナイト』まで普通の映画に落ち着いたとも言える・・・。 

それは少しだけ残念だけど。


ちなみに、本作には「これ、どうかな・・・?」と思う突っ込みどころは沢山ある。

その際たるものが、 ラストのベイン軍団(影の同盟)とゴッサム市警の対決シーン。

機関銃を乱射してするベイン軍団に、棍棒と拳銃をたずさえて「気合だッ、気合だッ、気合だッ」(アニマル浜口)と叫びながら突っ走っていって、相手陣内に殺到して、殴り合いにもつれ込む。

そりゃ、普通は不可能だ。

でも、やれてしまう。



激しい銃撃戦のさなか、銃を撃てば一発なのに、なぜか素手で取っ組み合いを始めるバットマンとベイン。 

それじゃ、漫画のアクションシーンだ。 

でも、やってしまう。


これ、ノーランは意図的にやってるんだと思う。

前2作で徹底的に排除してきた「ヒーロー漫画的ご都合主義」をあえて連発することで、観客にメッセージを送っている。

大団円に向けて、こっからスピード上げてきますよ、と。 

だって、これ元はアメコミ『バットマン』の映画化なんですからね、と。 


『プラダを着た悪魔』"The Devil Wears Prada"(2006)のとき、ああ、こういう王道ヒロイン路線で行くんだろうなと思わせたアン・ハサウェイが、まさかのキャット・ウーマン。

いい感じで化けた。


 

いけ好かない男、ブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)。

ノーランは、ずっと坊ちゃん(ブルース)を守ってきた鉄壁の防御(圧倒的な財力)を、本作で初めて剥ぎ取ってみせた。

貧乏な観客(我々)の共感を得るための脚本上のテクニックもあるだろうけど、財産(ハイテク装備)の庇護なしでの戦いは、ブルースが独り立ちするための重要なイニシエーションでもある。




本作のもう一人のヒロイン、ミランダ・テイト(マリオン・コティヤール)。

あのね・・・。

ブルース・ウェインが破産で無一文になって、財産のなかで唯一「没シュート」されなかった大豪邸(自宅)に一人ボッチで帰宅するシーンがある。

「雨は降っているし」「破産しとるし」「アルフレッドはどっか行っとるし」「普段鍵なんか持ち歩かないから屋敷に入れねー」、という完全に踏んだり蹴ったりな状態。

しかし、雨の中、傘もささずにミランダが帰りを待っていてくれて、屋敷の玄関でブルースに声をかける。

これは作中でも実は重要な意味を持つシーンだが、そんなことはどーでもよくて、

あのシーンの、

マリオン・コティヤールの笑顔の可愛さは異常! 



<トーキン・アバウト・コウモリ男!>


『バットマン』"Batman"(1989)
 ティムバートン1作目。
 バットマンはマイケル・キートン。
 ヴィラン(怪人)はジョーカー(ジャック・ニコルソン)。

『バットマン リターンズ』"Batman Returns"(1992)
 ティム・バートン2作目。
 バットマンはマイケル・キートン。
 ヴィランはペンギン(ダニー・デヴィート)とキャットウーマン(ミシェル・ファイファー)。

『バットマン フォーエヴァー』"Batman Forever"(1995)
 ジョエル・シュマッカー1作目。
 バットマンはヴァル・キルマー。
 ヴィランはトゥー・フェイス(トミー・リー・ジョーンズ)とリドラー(ジム・キャリー)。

『バットマン & ロビン Mr.フリーズの逆襲』"Batman & Robin"(1997)
 ジョエル・シュマッカー2作目。
 バットマンはジョージ・クルーニー。
 ヴィランはMr.フリーズ(アーノルド・シュワルツェネッガー)とポイズン・アイビー(ユマ・サーマン)。

『バットマン ビギンズ』"Batman Begins"(2005)
 クリストファー・ノーラン1作目。
 バットマンはクリスチャン・ベール。
 ヴィランはラーズ・アール・グール(リーアム・ニーソン)とスケアクロウ(キリアン・マーフィ)。

『ダークナイト』"The Dark Knight"(2008)
 クリストファー・ノーラン2作目。
 バットマンはクリスチャン・ベール。
 ヴィランはジョーカー(ヒース・レジャー)とトゥー・フェイス(アーロン・エッカート)。

『ダークナイト ライジング』"The Dark Knight Rises"(2012)
 クリストファー・ノーラン3作目。
 バットマンはクリスチャン・ベール。
 今度こそ、俺おしっこチビるかも新米(しんまい)

『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』"Birdman or (The Unexpected Virtue of Ignorance)"(2014)
 ある意味、続編でしょ(笑)
 アレハンドロ・ゴンサロ・イニャリトゥ1作目。
 バードマンはマイケル・キートン。
 ヴィランは過去の名声。 


<熱帯雨林>

ダークナイト ライジング(初回生産限定スペシャル・パッケージ) [Blu-ray]
クリスチャン・ベール,マイケル・ケイン,ゲイリー・オールドマン,アン・ハサウェイ,トム・ハーディー
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
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クリストファー・ノーラン,ベンジャミン・メルニカー,マイケル・E・ウスラン,ケビン・デ・ラ・ノイ,トーマス・タル
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