『夜間飛行』

また靴を履いて出かけるのは何故だろう
未開の地なんて、もう何処にもないのに

ドラマ 『ロング・グッドバイ』 (鑑賞後)

2014-06-03 | Movie(映画):映画ってさ



原作であるチャンドラーの『長いお別れ』 においても、マーロウとテリー・レノックスの友情の中に、しばしば、

「ホモセクシュアル」

な要素が指摘されます。


でも、自分にそっち系の素養がないせいか、その解釈、あんましピンと来ないんだけど。

(少なくともマーロウは人間が好きなだけで、男好きじゃないと思うんだけどな)


さて、今回。

2011年の連ドラ オブ・ザ・イヤー(←俺が勝手に選んだだけ)でもある『カーネーション』で、

かつて俺を泣きに泣かせた脚本の渡辺あやさんが・・・、

『ロング・グッドバイ』のドラマ化で、一体どういう仕掛けをしてくるんだろう?

と思って観ていたら。


マーロウ役に浅野忠信、テリー役に綾野剛を配して・・・、


まあまあな分量で、ホモ的要素ぶち込んできました!

そうかぁ。

だから綾野剛なのかぁ。


テリー・レノックス(綾野剛)が、口にするこの台詞。

「あなた(マーロウ)のような人間になりたかった。

なりたかったんだ。

何の見返りも求めず、ただ、自分が正しいと思う方を選ぶことのできる人間に」


これは本当に絶妙な台詞だと思った。

なぜ、テリーがマーロウになついたかが、観てるこちらにも一発で腑に落ちるもん。


雨の夜。

台湾に逃亡する為の船が迎えに来る。

乗り込む間際、横浜港まで送ってくれたマーロウに、テリーはこう告げる。


「ボクはいまからゆっくり歩いていきます。

もし台湾なんかに逃げず、警察に行くべきだと思うなら

どうかボクを呼び止めて下さい。

あなたに呼ばれたらボクは必ず

あなたのもとに戻ってゆきます」


観てるおっちゃん(俺)からすると、今どき男子の甘えん坊ぶりに怒り心頭。

自分の一大事なんやから、行くか戻るか自分で決めんかいッ!!!

と叫びそうになりますが。


ダーリン、違うっちゃ。

これはテリーからマーロウへの愛の告白なんだっちゃ。


忠信マーロウが、車に乗り込んで無言で走り去るのは、

いや、俺、完全なホモだちまでは、ちょっと・・・

といったところか。

なるほどね。

 

そして、じゃあ、なぜマーロウのほうは厄介者のテリーを庇うのか?

ここでも、脚本・渡辺あやさんの解釈がさりげなく挿入されます。


確か、リンダ・ローリング(富永愛)だったと思いますが、マーロウにこんなニュアンスのことを言います。


「嫌な女と居るのがなんで嫌かって

自分まで嫌な女になるからよ」

(けだし名言ですな)

と、呟いた後、

「彼(テリー)と居た時だけは、あなた(マーロウ)は好きな自分で居れたのね」

と・・・。 
 

脚本の妙と思います。


『長いお別れ』に関しては、清水訳も村上訳も、しつこ~く繰り返し読んでる俺ですが・・・

そんな理由でマーロウがテリーとつるんでいたとは、ついぞ思い至らず。

いろいろと腑に落ちた。

さすがッ!>渡辺あやさん


■おまけ

ウヰスキーもキレイなお姉さんもお好きな俺ですが、個人的に小雪はそんなにです。


ドラマ鑑賞前の独り言はコチラ


■チャンドラー 自己中心派
(1)長編
『長いお別れ』 (1976年・ハヤカワ文庫)
『さらば愛しき女よ』 (1976年・ハヤカワ文庫) 
『湖中の女』 (1986年・ハヤカワ文庫) 
『高い窓』 (1988年・ハヤカワ文庫) 
『リトル・シスター』 (2010年・早川書房)  
(2)短篇
『ヌーン街で拾ったもの』 (1961年・ハヤカワミステリ) 
『赤い風』 (1963年・創元推理文庫) 
『チャンドラー短篇全集』 (2007年・ハヤカワ文庫) 
(3)トリビュート/アンソロジー
『プードル・スプリングス物語』 (1997年・ハヤカワ文庫)
『フィリップ・マーロウの事件』 (2007年・ハヤカワ文庫) 
(4)チャンドラー研究
『レイモンド・チャンドラー読本』 (1988年・早川書房)
(5)映画でチャンドラー
『三つ数えろ』 "The Big Sleep"(1946年) 
『ロング・グッドバイ』 "The Long Goodbye"(1973年) 
『さらば愛しき女よ』 "Farewell My Lovely"(1975年) 
(6)ドラマでチャンドラー
『ロング・グッドバイ』 (2013年・NHK・浅野忠信主演) (鑑賞前)
『ロング・グッドバイ』 (2013年・NHK・浅野忠信主演) (鑑賞後)



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