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原作であるチャンドラーの『長いお別れ』 においても、マーロウとテリー・レノックスの友情の中に、しばしば、
「ホモセクシュアル」
な要素が指摘されます。
でも、自分にそっち系の素養がないせいか、その解釈、あんましピンと来ないんだけど。
(少なくともマーロウは人間が好きなだけで、男好きじゃないと思うんだけどな)
さて、今回。
2011年の連ドラ オブ・ザ・イヤー(←俺が勝手に選んだだけ)でもある『カーネーション』で、
かつて俺を泣きに泣かせた脚本の渡辺あやさんが・・・、
『ロング・グッドバイ』のドラマ化で、一体どういう仕掛けをしてくるんだろう?
と思って観ていたら。
マーロウ役に浅野忠信、テリー役に綾野剛を配して・・・、
まあまあな分量で、ホモ的要素ぶち込んできました!
そうかぁ。
だから綾野剛なのかぁ。
テリー・レノックス(綾野剛)が、口にするこの台詞。
「あなた(マーロウ)のような人間になりたかった。
なりたかったんだ。
何の見返りも求めず、ただ、自分が正しいと思う方を選ぶことのできる人間に」
これは本当に絶妙な台詞だと思った。
なぜ、テリーがマーロウになついたかが、観てるこちらにも一発で腑に落ちるもん。
雨の夜。
台湾に逃亡する為の船が迎えに来る。
乗り込む間際、横浜港まで送ってくれたマーロウに、テリーはこう告げる。
「ボクはいまからゆっくり歩いていきます。
もし台湾なんかに逃げず、警察に行くべきだと思うなら
どうかボクを呼び止めて下さい。
あなたに呼ばれたらボクは必ず
あなたのもとに戻ってゆきます」
観てるおっちゃん(俺)からすると、今どき男子の甘えん坊ぶりに怒り心頭。
自分の一大事なんやから、行くか戻るか自分で決めんかいッ!!!
と叫びそうになりますが。
ダーリン、違うっちゃ。
これはテリーからマーロウへの愛の告白なんだっちゃ。
忠信マーロウが、車に乗り込んで無言で走り去るのは、
いや、俺、完全なホモだちまでは、ちょっと・・・
といったところか。
なるほどね。
そして、じゃあ、なぜマーロウのほうは厄介者のテリーを庇うのか?
ここでも、脚本・渡辺あやさんの解釈がさりげなく挿入されます。
確か、リンダ・ローリング(富永愛)だったと思いますが、マーロウにこんなニュアンスのことを言います。
「嫌な女と居るのがなんで嫌かって
自分まで嫌な女になるからよ」
(けだし名言ですな)
と、呟いた後、
「彼(テリー)と居た時だけは、あなた(マーロウ)は好きな自分で居れたのね」
と・・・。
脚本の妙と思います。
『長いお別れ』に関しては、清水訳も村上訳も、しつこ~く繰り返し読んでる俺ですが・・・
そんな理由でマーロウがテリーとつるんでいたとは、ついぞ思い至らず。
いろいろと腑に落ちた。
さすがッ!>渡辺あやさん
■おまけ
ウヰスキーもキレイなお姉さんもお好きな俺ですが、個人的に小雪はそんなにです。
ドラマ鑑賞前の独り言はコチラ。
■チャンドラー 自己中心派
(1)長編
・『長いお別れ』 (1976年・ハヤカワ文庫)
・『さらば愛しき女よ』 (1976年・ハヤカワ文庫)
・『湖中の女』 (1986年・ハヤカワ文庫)
・『高い窓』 (1988年・ハヤカワ文庫)
・『リトル・シスター』 (2010年・早川書房)
(2)短篇
・『ヌーン街で拾ったもの』 (1961年・ハヤカワミステリ)
・『赤い風』 (1963年・創元推理文庫)
・『チャンドラー短篇全集』 (2007年・ハヤカワ文庫)
(3)トリビュート/アンソロジー
・『プードル・スプリングス物語』 (1997年・ハヤカワ文庫)
・『フィリップ・マーロウの事件』 (2007年・ハヤカワ文庫)
(4)チャンドラー研究
・『レイモンド・チャンドラー読本』 (1988年・早川書房)
(5)映画でチャンドラー
・『三つ数えろ』 "The Big Sleep"(1946年)
・『ロング・グッドバイ』 "The Long Goodbye"(1973年)
・『さらば愛しき女よ』 "Farewell My Lovely"(1975年)
(6)ドラマでチャンドラー
・『ロング・グッドバイ』 (2013年・NHK・浅野忠信主演) (鑑賞前)
・『ロング・グッドバイ』 (2013年・NHK・浅野忠信主演) (鑑賞後)