『夜間飛行』

また靴を履いて出かけるのは何故だろう
未開の地なんて、もう何処にもないのに

映画 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』

2013-03-19 | Movie(映画):映画ってさ

『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』
"Extremely Loud & Incredibly Close"
監督:スティーブン・ダルドリー
脚本:エリック・ロス
原作:ジョナサン・サフラン・フォア
2011年・米


++++

オスカー少年と父親は、親子であると同時に親友だった。

父親は、繊細で不器用なオスカーを愛し、導いてくれる真の理解者だった。


そんな二人を優しく見守る母。

ところが──9.11が、家族から最愛の父親を奪ってしまう。


オスカーは父が遺した一本の鍵に「
最後のメッセージが込められている」と信じ、鍵穴を探す旅に出る。


++++



2006年に『ユナイテッド93』という映画を観たとき、

「まあ製作者の熱意は買わんでもないけど、これはやっぱり時期が早いんじゃないか」と。

そう思ったことを、思い出した。


93便は同時多発テロでハイジャックされたものの、乗客の反撃もあり、目標物に到達せずに墜落した航空機。

映画『ユナイテッド93』は、生存者ゼロの機内で何が起こったかを、克明に(もちろん一部は想像で補って)映像化したドキュメント映画。


冒頭の留守電のメッセージが次々再生されるシーンで・・・、

あー、ちょっとコレは・・・、よー聞かんな、俺はと。

みんな、あのシーンを普通に聞けるんですかね。

俺には無理。

独身の頃なら聞けただろうか・・・、いや無理だろう。 


時は流れ、2011年。

ジョナサン・サフラン・フォアの全米ベストセラー"Extremely Loud & Incredibly Close"が映画化。(日本公開は2012年)


嗚呼、それにしても、また電話だ。


妻・リンダ(サンドラ・ブロック)は、崩壊寸前のワールド・トレード・センターの中にいる夫・トーマス(トム・ハンクス)からの電話を職場で受ける。


リンダのオフィスの窓からは、もうもうと白煙を上げるWTCが目の前に見えている。

そのWTCの中に夫がいるという事実を、リンダはにわかには受け入れられない。


死を覚悟した人間は、愛する人に

「愛している」

というたった一つのことを伝えようと電話をかけてくる。


でも、電話を受けたほうは、急にそんな覚悟が持てるはずもない。

だから、今生の別れになるであろう大切な電話にも関わらず、愚かしい発言をしてしまう。


「ね、よく聞いて。

あなたは一番近くの階段を探して、そこから歩いて1階へ降りるの。

そうよ、そうしましょ!

そうして、お願い・・・」


崩壊直前の高層ビルから階段で降りられるぐらいなら、わざわざ電話なんかしてこない。


でも、リンダは何か喋っていなければ正気を保てないのだ。


電話を切ろうとする夫にすがるリンダ。

(電話は皆で譲り合って使っているので、長時間独占できない)


「切らないで・・・、喋り続けて、お願い!」 


この「喋り続けて」という言葉は、この電話が現世で聞くことができる夫の最期の声だと、リンダが認めた瞬間だ。


誰がなんと言おうと、この映画の最重要シーンはここなんです。


しかし。


50歳前だが、 サンドラ・ブロックは良い塩梅に年をとっていると言えるだろう。


そういえば、20年前うちに居候していた友達のジュニアに

「なあ、『デモリションマン』観にいこうや」

と言われ、無理やり難波に連れていかれたコトがあった。


あの時、映画館で観たサンドラ・ブロックはめちゃくちゃカワイかった。


「だいたい、なんで俺様がこんなスタローン主演のB級映画なんぞ・・・」

と、ずっとブツブツ文句を言いながら観ていたのだが、当時28歳だったサンドラ・ブロックのフレッシュな魅力は一発で俺を黙らせたのだった。

(その翌年には『スピード』の大ヒットにより、サンドラはハリウッドのヒロイン・・・、というか世界のヒロインになった)


あれから20年、特に好きなタイプの女優ではないが、本作でずいぶん見直した。

あんたぁ、まだイケる!



映画に話を戻そう。

仮に9.11という要素を抜きにして見た場合、本作にはどこかポール・オースター的な味わいもある。

賃借人(マックス・フォン・シドー)は登場の仕方、風貌、喋らない設定など、その存在全てがオースター的。


そんでもって、父が残した鍵に合う鍵穴を求めて、封筒に書かれた"ブラック"の一語をヒントにNY中のブラック氏を捜し歩く。

これってば、まぎれもなく完全にオースター。


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ワーナー・ホーム・ビデオ
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
近藤 隆文
NHK出版

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