『四畳半神話大系』
森見登美彦(日:1979-)
2005年・大田出版
2008年・角川文庫
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京都の大学三回生である「私」。
入学当初はバラ色のキャンパスライフを夢見ていたものの、現実はほど遠い。
思うに、入学当初のサークル選びから道を間違ったのではないだろうか。
当時ぴかぴかの一回生だった私は、大学構内で押し付けられたサークル勧誘のビラのうち、以下の4つに興味を惹かれていた。
その4つのビラとはすなわち、
映画サークル『みそぎ』、
「弟子求むム」という奇想天外なビラ、
ソフトボールサークル『ほんわか』、
秘密結社『福猫飯店』
である。
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「京都の大学生モノ」小説はとりあえず無条件で読んでみることにしてるが、これは面白かった。
まず、モノモノしい語り口でバカバカしいことを語るっていうのは、俺が人生で追い続けている基本路線なのだ。
登場人物のなかでは下鴨幽水荘の二階に住む樋口師匠が好きだったな。
樋口師匠は留年に次ぐ留年で現在八回生(※)という大先輩だが、卒業や就職に焦る様子もなく、悠然と暮らしている。
(※ちなみに関西では「八年生」でなく「八回生」と言う)
いたねぇ、こういう感じの先輩、大学の頃。
社会に出てから出会う人って、立場がもうちょっと明確じゃない。
この人は課長、この人は社長、この人は取引先のお偉いさん・・・って。
だから、こちらも接する態度を決めやすい。
ところが、 こういう七回生とか八回生とかいう人って「大先輩」であると同時に「スーパーだめ人間」でもある。
じゃあ、軽蔑すべきかと言うと、度を越しただめ人間って、抗し難い魅力を放っていたりもするんだよね。
「この先輩と仲良くしていると俺までだめになるぞ・・・」
と自分でも感じていながら、だめオーラにズルズルと引き込まれてしまう。
あー、なんか最近、本当のだめ人間とあんまり付き合いがないから、全てが懐かしい。
こういう先輩たち、好きだったなぁ。
あと、その樋口先輩が主人公の「私」から借りて一年近く返してくれない本が、ジュール・ヴェルヌの『海底二万里』というのが素晴らしい!
俺も今度、『海底二万里』を読み直すときは、樋口師匠みたいにノーチラス号の進路を地球儀にピンで刺しながら読んでいこう。
それって、すんごく素敵だ。
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