前回触れた香港自治法案は米国時間の7/14にトランプ大統領が署名し成立し、香港に対する優遇処置の撤廃と「香港の高度な自治」の抑圧に関与した組織や個人に対して制裁処置を発表しました。
尚、この法案の下では、それらの組織や個人との取引がある金融機関に対しても制裁が加えられることになりますが、現時点では実際にどのタイミングで如何なる制裁が科せられるかなどの詳細は分かっていません。
こうした一連の報道の中で、米国が米ドル取引を禁止して香港ドルの米ドルペグ制を崩壊させて通貨危機をオプションの一つとして考えているとのニュースがありましたが、「ペグ制」に対する誤解がこのような間違ったニュースの背景にあるようです。
香港ドルの「米ドルペグ制」とは、香港ドルを発行するHSBC、中国銀行(香港)と恒生銀行(ハンセン銀行)の三つの銀行が香港ドルを発行する際に1香港ドルに対し約0.13米ドルを香港金融オーソリティー(HMA)に預託することで、発行した香港ドルの価値と同等の米ドルを常に保持し、仮に香港ドルが売り浴びせられても、保持した米ドルにより買い支えることが出来るようにする制度で、結果として為替水準が安定化する仕組みです。
勿論、上述した内容は米ドルを流動性の高い現金で保持している場合に有効で、米国債などに変えて保持している場合はとっさの為替介入には対応出来ませんが、きちんと金融的な裏付けのある制度です。
従って、米国が一方的に米ドル取引を禁止したからと言って直接的な為替暴落の引金にはなり得ません。
また、多くの米国企業は香港に中国オペレーションの統括会社を持って経営を行っており、香港の金融機関に対して金融制裁を加えれば自分の首も同時に絞めることにもなりますので、全面的な金融制裁に踏み切る可能性は相対的に低いと思われます。
関係する組織や個人の資産凍結などの限定的な対応に留まるのではと思っています。
何れにしても米中間の対立は、今後も加速する方向にあるので予断を許さない状況であることには変わりありません。
https://www.youtube.com/watch?v=z-eC-Jokxhw&t=25s
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