Team Land Cruiser TOYOTA AUTO BODYのブログ

ラリー参戦活動の模様や、その他関連情報をお届けします。

ダカールラリー7連覇の振り返り Part3

2020-05-18 18:00:00 | 活動情報

皆さんこんにちは、監督の角谷です。

 

在宅勤務にも慣れ、家族と過ごす時間も増えました、

おそらく今年度はチームメンバーといる時間より、家族と過ごす時間の方が長くなりそうなので、

しっかり家族孝行したいと思います。

 

さて、今回は市販車部門7連覇の振り返り、第3弾最終回(6~7連覇)です。

就任5年目のダカールラリー2019 ペルー大会は、初めての1か国開催となり、走行距離・大会期間とも

例年に比べ短くなりましたが、競技区間の70%が砂丘エリアと、競技難易度の非常に高い大会となりました。

 

大会初日から砂路面が中心となり、砂丘も登場するなどいつもと違う雰囲気、そんな中349号車

(三浦DR/ローランNV)はステージ途中にスタック。

 

スタック自体は珍しいことではないのですが、その時使用した脱出板を見失うというビックリする

ようなことが起きました。

 

なぜなら、長さ100cm×幅40cmの蛍光オレンジに塗装されたとても目立つ脱出板・・・どうやったら見失うんだ?

と思うと同時に、それだけ砂がフカフカなんだと理解しました。

 

普段、砂路面での作業では、取り外したタイヤのナットですら、必ず室内へ置くというのが鉄則。

小さな部品は砂に埋もれやすく、現場で見失わないようにするため。

 

脱出板のような大きなものが簡単に埋もれてしまうということが、この大会の難しさを物語る出来事であり、

初日から嫌な予感しかなかったです。

 

しかし、その後は前回大会から力を入れてきた砂路面対策の効果もあり、難しいながらも大きなトラブルなく、

前半戦を乗り切ることができました。

 

ここで、砂路面の対策の1つを簡単にご紹介。

軽量化や高性能パーツなども、もちろん重要ですが、我々がエントリーしている市販車部門では、

制約が厳しく簡単に改造することができません。なので、日本語でいうと、「改造」というよりは「工夫 」

という言葉の方が近いです。

 

前回大会から力を入れてきたのが、熱マネージメント。

「空気で冷やす」ということと「熱を逃がす」という、この2つを重点的に工夫してきました。

 

砂丘や砂路面では、車速が伸びません。(場合によってはローギアでアクセル全開なのに時速20km)

なので、空気(風)がクルマに当たり難いのです。

 

そこで、まずは風量が少なくても効率的にラジエターを冷やせるように導風板の取り付け位置や角度を工夫。

更に、空気を当てるだけではなく、熱せられた空気を逃がすことも工夫しました。

何度もトライ&エラーでデータを取り、試行錯誤して今のラリー車は作り込まれています。

←モロッコテストの走り込んだタイヤ

←テスト後のヒヤリング

←夕方、テストから戻っての表情

 

話を戻して、後半戦は更に競技難易度が上がり、2台のクルマは苦しめられました。

今大会、走行距離が短くなった分、ナビゲーションの難易度が上げられていて、何度もリルートする場面も。

 

そのような状況で350号車(ラヴィエルDR/ギャルサンNV)が、前回大会でリタイアとなった地点のすぐ近くで、

またしても冷却系のトラブル。こちらもリタイアの教訓から、対策として交換部品を積載していて、

トラブル対応ができビバークに戻って来ました。

トラブルが起きたことは、もちろん原因究明が必要ですが、去年の「借り」を返せたような気持ちになりました。

最後まで気の抜けないステージが続きましたが、2台は協力し合いながら、ワンツーフィニッシュで市販車部門6連覇を達成。

 

今回は砂路面が多く、クルマへの負担が非常に大きかったですが、毎日毎日完璧に修理してくれたてメカニック陣

の頑張りと、対策としてやってきたことが、しっかりと結果に繋がった手応えのあった大会でした。

 

続いて、就任6年目のダカールラリー2020 サウジアラビア大会

毎年「もっといいクルマづくり」を念頭に、いろいろなチャレンジに取り組んで来ましたが、今回私が就任してから

最大のチャレンジと言えるほど、非常に難しいAT仕様でのダカール参戦でした。

 

3年前のモロッコテストから開発がスタートし、最初はだれもがその性能に対して半信半疑でした。

 

しかし、いきなりのテストでAT特有のギアの繋がり方(MTの様にシフトチェンジの際のクラッチが切れる状態がない)や、

操作性(2ペダル)の高さから、ラリー車としての可能性を見出すことができました。

 

もちろん全てが良い情報ばかりではなかったです。

ラリー走行=一般想定外の走行となるため、高負荷での走行が続くとフェールセーフモード機能がはたらき、

車両を保護する目的で出力が自動的に制限されるなど、結局みんなで朝から晩までトライアンドエラーを繰り返し、

1つ1つトラブルを潰し込みながら、AT仕様のラリー車を仕上げていきました。

 

また主催者から大会情報がリリースされ、初の中東サウジアラビアでの開催と知り、初のAT仕様でのチャレンジに加え、

開催地も初ということで、未知の領域が拡がるばかりでした。

 

正直、今回の大会は「満を持して」というよりは「今やれることはすべてやった」という気持ちの方が強かったです。

それくらいギリギリまでやることも多く、最後まで諦めずに準備を進めてきました。

 

大会結果はご存知の通り、ダカールラリー史上初めて四輪の市販車部門で7連覇を獲ったチームとなり、

またTLCとしても初めての7連覇という最高の結果となりましたが、現場では成績ほど順調では無かったです。

 

大会初日から2台ともパンクが多く、その他交換部品(部位)も南米時代とは明らかに違っていました。

そして、大会4日目にはチーフメカのフィフィから「このままのペースでは持って来たパーツが無くなる」と。

 

急遽、チームミーティングを実施し、2台とも走行ペースを再考するよう指示しました。

そうなんです。南米時代のペースで走ってはいけなかったのです。

 

特に前半ステージは、岩盤の上に砂路面や砂丘がある状態のため、競技車両が何台も同じところを走行すると砂が掘り起こされ、

その下に隠れている岩とタイヤがヒットしてパンクするパターンが多く、競技車両はペースを落として回避する必要がありました。

 

そう言ったサウジの洗礼を浴びながらも、なんとか2台は協力して前半を乗り越えました。

前半を終えて、市販車部門のクルマは我々の2台になり、ライバルはいなくなりました。

 

あとは、このまま最後まで行けばいいだけ!と思う方も多かったと思いますが、私は逆のプレッシャーを感じていました。

ライバルがいないのだから、当然2台とも完走してワンツーフィニッシュで7連覇しなければならないと。

 

幸いチームメンバー全員が、ダカールラリーは最後までなにがあるかわからないことを知っているので、

後半も気を緩めることなくやってくれました。

 

ここで、ビバークでのお話。

今回もビバークにいると連日、いろんな人が我々のクルマを観に来てくれます。

サウジアラビアは、世界で一番ランドクルーザーが売られている国、観に来る人もランクル所有者やランクル好きな方ばかり!

皆さん、真剣な眼差しで興味津々!

 

南米時代と大きく違ったのは、その質問。

南米では、ご本人が趣味でラリーをやられている方が多く、その質問の多くはクルマの性能であったり、パーツに対する質問。

一方、サウジでは主に以下3つ

 ①このクルマを売って欲しい!誰に言えば買える?

 ②私のクルマをコレ(ラリー車)と同じにしてくれ!

 ③日本で同じモノが売っているのか?

その都度、通訳の方を介して、TLCの活動を説明してもらい対応してました。

 ※ただ、誰一人として「このラリー車はいくらするの?」と値段を聞く方が居なかったです。お金持ちだから?かな?

 

ラリーの話に戻り、後半はサウジアラビアの南部(ルブアルハリ砂漠)が主戦場、より難易度は上がりました。

特に、後半戦最初の3ステージ(ステージ7,8,9)は、SSで400km以上トータルでも700kmを超えるロングステージの連続。

 

路面状況からも、燃料切れを起こさないよう燃料のマネージメントをしながらの走行が必要で、非常に神経質になりました。

そして、次のステージ10、11は、メカニックのサポートができないマラソンステージ。

大会終盤にきてからのマラソンステージは、ラリー車にもクルーにも非常に過酷。

 

なんとか往路はペースを落として、よりセーフティに走行するプランでしたが、競技中突然338号車から衛星電話が入り、

電話に出たチーフメカニックのフィフィは仏語で放送禁止用語を連発。ビバークで待機していた我々の雰囲気は一変。

一気に緊張感に包まれました。(当然、DVDではカットされました(笑))

 

あとでわかったことですが、そこまで深刻なダメージでは無かったものの、マラソンステージの往路でのアクシデントだったことや、

電話でしか情報が掴めないことから、うまく状況が伝わらず非常に焦ったことを今でも覚えてます。

 

そんなこともありながら、復路も2台助け合って無事に難関だったマラソンステージをクリア!

 

最終日は160kmのSS、過去にも最終日にリタイアした選手が何人もいるので、SSをゴールして戻って車検に合格するまでは気が抜けません。

(不正が無かったことが確認されなければいけないため、車検を受けます)

 

ほとんどの関係者や、うちのメンバーも皆、SSゴールした時点で大喜びしている中、最終確認まで喜べない自分との

ギャップで毎回モヤモヤしています。

(更に会社に報告したり、SNS上げたり、祝勝会の準備とやることも多く喜ぶタイミングを逃してます)

 

いろいろなことが大会ごとに必ず起き、その時は大変で辛い思いもたくさんしますが、こうやって振り返ると全てが思い出になっていて、

一緒に戦ってくれた仲間と、応援してくださった皆様に感謝の気持ちでいっぱいになりました。

 

これで7連覇の振り返りが終了です。

これからも、TLCはさまざまなことに挑戦しながら、勝ち進んで行きますので今後とも応援よろしくお願いいたします。

最後まで観ていただきありがとうございました。

                                              以上

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