安曇総合病院再構築のマスタープラン作成に向け佳境に入って来ました。
これまでのエントリーとも重複しますが経過と私の主張、プランをまとめておきます。
果たして地域医療再生基金を原資の一部として安曇総合病院にリニアック(放射線治療機器)を導入することが適当なのでしょうか?
安曇総合病院で求められているがん医療は?
がんは老化現象の一種でもありますから高齢になるほどがんは増えます。(小児がんを除く)
その結果、2人に1人が罹患し、3人に1人ががんでなくなる時代です。ですので県議のライフワークである「がん制圧」などという言動はそもそもナンセンスです。がんはコモン・ディジーズ(よくある病気)であり安曇総合病院でも当然、がん患者さんの診療をおこなっていかなければなりません。
もちろん禁煙などの生活習慣に対する介入(一次予防)やドックやスクリーニングなどによるがんの早期発見(二次予防)にも力を入れなくてはいけません。がんが見つかった場合は当院でも可能な手術や化学療法は当院でおこない、困難な手術や放射線化学療法などは松本などの基幹病院でお願いすることになります。
手術や放射線治療は一時的な治療であり、その後の長期にわたる治療は外来化学療法と緩和医療です。これらは生活の場である地域で行なっていかなければいけません。
リニアックはあってもいいですが喫緊の課題とは思えません。がん相談支援センターの相談支援を行なってきた専任の看護師が当院で最もニーズを感じたのは緩和ケア病棟ということでした。緩和ケアは当院で有力な精神科や最近力をいれている在宅医療がとも相性がよい分野ですが、何故か再構築検討委員会がん診療部会では放射線治療機器(リニアック)の導入を優先させ、緩和ケア病棟の設置は当面希望しないという結論でした。現場から見える地域ニーズにどうして声を傾けることができないのでしょうか?
安曇総合病院で放射線治療機器(リニアック)を入れることの是非?
さて県議と院長は何をやりたいのでしょうか?
今後、がん放射線治療は今後より盛んになるでしょうし将来的にはわかりませんが現時点で優先順位の高い課題とはとても思えません。まずは耐震基準を満たさない老朽化した病棟の建て替えが先決でしょう。
院長も補助金(地域医療再生基金)の話がなければリニアックなどいれないと公言していました。リニアックにかける院長の思いといってもしょせんはそのくらいのようです。
しかし、がん征圧をライフワークとする某県議会議員の肝いりで、当初は原則として2次医療圏に一つの設置が望まれるものの大北地域にはない「がん診療連携拠点病院」を目指すためにはリニアックが必要ということで導入の話がでてきました。しかし患者数等の他の要件が満たせずがん診療連携拠点病院となることはそもそも不可能です。人口3万4000人の木曽医療圏や6万人の大北医療圏では42万人の松本医療圏、56万5,000人の長野医療圏ではそもそも人口背景も違いすぎて都市部に伍する高度専門医療は困難なのです。また山に囲まれた木曽とは異なり大学病院などの高度医療機関の多い松本医療圏に隣接する大北医療圏は患者動態においても影響をうけます。
このようなこともありすでに厚生労働省の通達でも、「がんに関しては専門的な診療を行う医療機関における集学的治療の実施状況を勘案し、従来の二次医療圏にこだわらず、地域の実情に応じて弾力的に設定する」というように医療圏の考え方自体が変わってきています。今後出てくる第5次医療計画でも当然この考え方に基づいていると予想されます。
なお今回の地域医療再生基金では1/3(4億1900万円)しか補助されず2/3の自己資金が必要です。さらに外部コンサルタントの試算では甘い見積もりでも損益分岐点を下回り赤字を生み続けると試算されました。しかし、再構築検討委員会がん診療部会の中間報告では、その試算は無視し独自の試算を提出し「採算性には懸念されるものの放射線治療に伴う入院や患者数増加などの波及効果も考慮し、職員の協力(節約)があれば単独事業ではなく建物の再構築時に地域医療再生交付金を使用して照射機器の導入は可能ではないか」と結論づけていました。
院長はリニアックを入れれば看板となり医者(特に外科医)も患者も集まるという主張もしていましたが、リニアックと外科は乳がんなどを除けばほとんど関係ないし大学医局も外科医を継続的に派遣することは困難であると当院の外科医も言っています。鍵となる放射線治療医も大学に派遣を依頼するということですが未だ招聘できる目処はたっていません。
現に厚生連病院の中では当院よりはるかに急性期に特化した基幹病院である篠ノ井総合病院ですら、放射線治療医の招聘の目処がたたないため再構築の計画の中では将来的な治療機器設置場所の計画のみにとどまっています。
このような状況なのですが院長はリニアックの導入は、がん診療部会での決定事項であり放射線治療機器の導入はするのだと言っています。一般職員の全く知らぬところで県議と院長で補助金が申請がすすめられ、まるでそれが病院の決定事項のように物事が進んでいくことに恐ろしさを感じます。
がん診療を熱心に行なってきたわけでもなく2年後には定年となる院長が何故今、突然リニアックにこだわるのか理解できません。ハコをつくりキカイを入れることが実績になるとでも思っているのでしょうか?
結論として地域医療再生基金をつかってのリニアックの導入はあまりにリスクが高すぎると言わざるを得ません。
一番の懸念は職員の士気(モラール)の低下、それから引き起こされる医療崩壊です。
県からもその実現性を懸念されており、今からでも他のがん診療関連(緩和ケアなど)のプランに振り替えることもしっかりとした計画があれば可能であると言われており、メンツにこだわらずまずは当初の計画通り老朽化した病棟の建て替えを中心とした計画を行うべきです。
リニアック導入はその後に考えていけばいいことだと思います。
なぜ、安曇総合病院への放射線治療機器という話しに?
これまでのエントリーとも重複しますが経過と私の主張、プランをまとめておきます。
果たして地域医療再生基金を原資の一部として安曇総合病院にリニアック(放射線治療機器)を導入することが適当なのでしょうか?
安曇総合病院で求められているがん医療は?
がんは老化現象の一種でもありますから高齢になるほどがんは増えます。(小児がんを除く)
その結果、2人に1人が罹患し、3人に1人ががんでなくなる時代です。ですので県議のライフワークである「がん制圧」などという言動はそもそもナンセンスです。がんはコモン・ディジーズ(よくある病気)であり安曇総合病院でも当然、がん患者さんの診療をおこなっていかなければなりません。
もちろん禁煙などの生活習慣に対する介入(一次予防)やドックやスクリーニングなどによるがんの早期発見(二次予防)にも力を入れなくてはいけません。がんが見つかった場合は当院でも可能な手術や化学療法は当院でおこない、困難な手術や放射線化学療法などは松本などの基幹病院でお願いすることになります。
手術や放射線治療は一時的な治療であり、その後の長期にわたる治療は外来化学療法と緩和医療です。これらは生活の場である地域で行なっていかなければいけません。
リニアックはあってもいいですが喫緊の課題とは思えません。がん相談支援センターの相談支援を行なってきた専任の看護師が当院で最もニーズを感じたのは緩和ケア病棟ということでした。緩和ケアは当院で有力な精神科や最近力をいれている在宅医療がとも相性がよい分野ですが、何故か再構築検討委員会がん診療部会では放射線治療機器(リニアック)の導入を優先させ、緩和ケア病棟の設置は当面希望しないという結論でした。現場から見える地域ニーズにどうして声を傾けることができないのでしょうか?
安曇総合病院で放射線治療機器(リニアック)を入れることの是非?
さて県議と院長は何をやりたいのでしょうか?
今後、がん放射線治療は今後より盛んになるでしょうし将来的にはわかりませんが現時点で優先順位の高い課題とはとても思えません。まずは耐震基準を満たさない老朽化した病棟の建て替えが先決でしょう。
院長も補助金(地域医療再生基金)の話がなければリニアックなどいれないと公言していました。リニアックにかける院長の思いといってもしょせんはそのくらいのようです。
しかし、がん征圧をライフワークとする某県議会議員の肝いりで、当初は原則として2次医療圏に一つの設置が望まれるものの大北地域にはない「がん診療連携拠点病院」を目指すためにはリニアックが必要ということで導入の話がでてきました。しかし患者数等の他の要件が満たせずがん診療連携拠点病院となることはそもそも不可能です。人口3万4000人の木曽医療圏や6万人の大北医療圏では42万人の松本医療圏、56万5,000人の長野医療圏ではそもそも人口背景も違いすぎて都市部に伍する高度専門医療は困難なのです。また山に囲まれた木曽とは異なり大学病院などの高度医療機関の多い松本医療圏に隣接する大北医療圏は患者動態においても影響をうけます。
このようなこともありすでに厚生労働省の通達でも、「がんに関しては専門的な診療を行う医療機関における集学的治療の実施状況を勘案し、従来の二次医療圏にこだわらず、地域の実情に応じて弾力的に設定する」というように医療圏の考え方自体が変わってきています。今後出てくる第5次医療計画でも当然この考え方に基づいていると予想されます。
なお今回の地域医療再生基金では1/3(4億1900万円)しか補助されず2/3の自己資金が必要です。さらに外部コンサルタントの試算では甘い見積もりでも損益分岐点を下回り赤字を生み続けると試算されました。しかし、再構築検討委員会がん診療部会の中間報告では、その試算は無視し独自の試算を提出し「採算性には懸念されるものの放射線治療に伴う入院や患者数増加などの波及効果も考慮し、職員の協力(節約)があれば単独事業ではなく建物の再構築時に地域医療再生交付金を使用して照射機器の導入は可能ではないか」と結論づけていました。
院長はリニアックを入れれば看板となり医者(特に外科医)も患者も集まるという主張もしていましたが、リニアックと外科は乳がんなどを除けばほとんど関係ないし大学医局も外科医を継続的に派遣することは困難であると当院の外科医も言っています。鍵となる放射線治療医も大学に派遣を依頼するということですが未だ招聘できる目処はたっていません。
現に厚生連病院の中では当院よりはるかに急性期に特化した基幹病院である篠ノ井総合病院ですら、放射線治療医の招聘の目処がたたないため再構築の計画の中では将来的な治療機器設置場所の計画のみにとどまっています。
このような状況なのですが院長はリニアックの導入は、がん診療部会での決定事項であり放射線治療機器の導入はするのだと言っています。一般職員の全く知らぬところで県議と院長で補助金が申請がすすめられ、まるでそれが病院の決定事項のように物事が進んでいくことに恐ろしさを感じます。
がん診療を熱心に行なってきたわけでもなく2年後には定年となる院長が何故今、突然リニアックにこだわるのか理解できません。ハコをつくりキカイを入れることが実績になるとでも思っているのでしょうか?
結論として地域医療再生基金をつかってのリニアックの導入はあまりにリスクが高すぎると言わざるを得ません。
一番の懸念は職員の士気(モラール)の低下、それから引き起こされる医療崩壊です。
県からもその実現性を懸念されており、今からでも他のがん診療関連(緩和ケアなど)のプランに振り替えることもしっかりとした計画があれば可能であると言われており、メンツにこだわらずまずは当初の計画通り老朽化した病棟の建て替えを中心とした計画を行うべきです。
リニアック導入はその後に考えていけばいいことだと思います。
なぜ、安曇総合病院への放射線治療機器という話しに?