半年ほど住んで、次また移る予定ですが、新たな出発に立ち会うというものは、気持ちが浮き立つものです。
「さみしくない?」
「いいえ、ずっと一人でしたので、大丈夫です。」
彼女がうちに来た当時、一日中死ぬことだけを考えてます、という言葉にぎょっとしてましたので、これくらいでは私も驚かなくなりました。
私が若い頃、ある職場に短期間だけいることになりました。
部署は違ったのですが、将棋好きの先輩がいて、私も将棋が好きでしたので、親しくなりました。
一年ほど経ったある日、私の部屋に先輩が一升瓶を持って訪れたのです。
酒など飲まない先輩が、珍しいこともあるもんだなぁと、不思議な気もしなくもありませんでした。
当時私は、寮のようなところで、友人と相部屋でしたが、(その友人も酒は一滴ものみません)私もたしなむ程度、おかしな酒宴でした。
先輩は普段、静かでおとなしめ、饒舌にしゃべるようなタイプではありませんでしたが、そのときは酒に酔い、ひょうきんな踊りを披露し、大盛り上がり。
友人もちょっとした宴会芸を披露し、私は芸なしでしたが、親しいものだけの、気がねなしの宴とは楽しいものです。
数日後、職場の上司が、私が出勤するのを待っていたように、「君は○○君と、親しかったみたいだけど、何か聞いてなかったかね。」
「自殺したそうだ。」
「鉄道自殺だそうだ。」
まったく予想もしていなかったことに、私は呆然としていました。