そこに存在するのは、大龍、大蛇がいるのみです。
大龍は水の象徴ですし、一瞬にして千里を走る伝説から、空間を創造したと悟れます。
大蛇は頭が十二あることから、時間を創造するもので、火の象徴であると神話は語っています。
この二つの想像を絶する奇跡が神です。
次に、この二つの奇跡を軸にして、たましいも、この創造に参画することになります。
たましいというものが、そもそもどんな存在なのか、はっきりしません。
まだ、神との境目(さかいめ)もはっきりしていません。
ただ、神がこれからとりかかろうとしている、人間創造という大事業を、神から打ち明けられ、協力をたのまれました。
確かに、神から協力をたのまれるのは、とても光栄かもしれませんが、その責任の重さも想像を絶します。
時空をこえた、神でさえ苦心するような大事業に、簡単にはいとは言えないでしょう。
なかなか、うんとは言わなかったのだそうです。
しかし、とうとう承諾することになります。
そして、創造の瞬間、次のような創造の力となります。
人間の親、夫婦の原型です。人間にとって実の親です。
生と死をつかさどる働き。
それは、風(生)と切る(死の世話取り)という力です。
この世界を形づくる力。
それは、つなぐ、突っ張る(つながない)力。
物質(もの)が、循環する力。
それは、(物質が)変化し、(物質から)その絶妙な力を引き出すものです。
この八つの力を、八つのたましいが、それを使命として受け入れ、神に協力しました。
ニ神と、八つのたましいが協力することによって、私たちのあたりまえの生活が成り立つのです。
この(八つの)たましいたちは、この人間創造の瞬間に、神と一心同体となってはたらきました。
そして、このたましいたちの使命は、今も続いています。
さまざまな聖者、偉人、ときには市井(しせい)に生きた名もなき人々。
誰にも知られず、世のために尽くした無名の人だったかもしれませんね。
この創造はまだ、終わりじゃないよ。
これからもずっと続くんだよ。
神話はそう、語っています。
神話は、過去の物語ではなく、今も続く、たましいの遍歴(へんれき)、発見、冒険の物語なのです。