昼は隣駅近くのスーパーでおしゃれなサンドウィッチでも買ってみようかと思うも、
なぜかその店を見つけられず、そうこうするうちに時間切れになったので収穫ゼロで戻る。
道をもっと先に行けば店はあったのかも知れないが、途中で進む気力が失せた。
結局、会社近くのセブンイレブンでサンドウィッチを買う。
コンビニの序列に興味はないが(どのチェーンも判で押したように同じに思える)、
サンドウィッチに関してはセブンイレブンが一番おいしいと思う。
とくにチキンカツサンドがいい。
帰りの電車。座っていると、隣の空席に巨漢の女が座った。
巨漢にも「遠慮がちなタイプ」と「無神経なタイプ」がいるが、この女は後者の方。
ドスンと空間を埋め尽くしてきて憚らない。
こちらの体の肩から腿まで側面すべてにブヨブヨした肉が隙間なく密着してきて、
暑苦しいことこの上ない。
ちょっと体をよじれば逃げられるという次元ではない。
立っても混雑しているので、うんざりした気分で我慢して本を読み続けていたが、
その女が突然小声で叫んだ。
「痴漢かよ!」
…そう聞こえたが、意味不明である。
僕に言っているのか、向こう隣の人間に言っているのか、
前に立っている人間に言っているのか、それすらもわからない。
こちらの体に密着していることをもって「痴漢」呼ばわりしているつもりだとしたら、
これほど滑稽な話もない。
薄気味悪いデブと体がくっついている不快感というのは、性的興奮とは対極にあるものだからだ。
誰がお前に体を密着させてくれと頼んだか?
牧野ステテコに「私を見て発情してるでしょ、アナタ!」的なネタがあったが、
あれに似た倒錯ぶりだ。しかもこちらはギャグにもなっていないときている。
「無遠慮なデブ」というのは、その存在自体が「加害性」を帯びている。
ただシートに座るだけで、他人の領域を否応なく侵害してくるからだ。
その持って身に着いた宿命的な「加害性」をひっくり返すためには、
自分が正反対の立場の「被害者」であることを無理矢理演じるしかない。無理矢理にね。
たとえそれが、誰がどう見ても破綻したロジックであったとしても。
彼女が本気で「痴漢です!」などと訴えることができるわけもない。
(その瞬間、「いやいや、違うでしょ!」「違うでしょ!」「違うでしょ!」と
周囲の人間すべてがツッコミを入れるだろう)
だから、「周りに聞こえるか聞こえないかの小声で叫ぶ」くらいが彼女にとっての関の山。
「私は加害者じゃない!被害者なのだ、そう、被害者なのだ!」と
無理矢理自分自身に言い聞かせている。
…そう考えると、これは実に哀れな「デブならではの保身術」なのかも知れない。
幸い、彼女はほんの数駅で降りていった。
もう気の毒としか言いようがないのだが、立ち上がり際、何か悪態めいたことを呟いていった。
もちろん、僕も含めた周囲の人間たちが、それを相手にすることもない。
…しかしね、おデブさんよ、「たった数駅」を我慢して立っていよう、
というごくわずかな努力すら払わないから、あなたはいつまでも百貫デブのままなのだよ。
なぜかその店を見つけられず、そうこうするうちに時間切れになったので収穫ゼロで戻る。
道をもっと先に行けば店はあったのかも知れないが、途中で進む気力が失せた。
結局、会社近くのセブンイレブンでサンドウィッチを買う。
コンビニの序列に興味はないが(どのチェーンも判で押したように同じに思える)、
サンドウィッチに関してはセブンイレブンが一番おいしいと思う。
とくにチキンカツサンドがいい。
帰りの電車。座っていると、隣の空席に巨漢の女が座った。
巨漢にも「遠慮がちなタイプ」と「無神経なタイプ」がいるが、この女は後者の方。
ドスンと空間を埋め尽くしてきて憚らない。
こちらの体の肩から腿まで側面すべてにブヨブヨした肉が隙間なく密着してきて、
暑苦しいことこの上ない。
ちょっと体をよじれば逃げられるという次元ではない。
立っても混雑しているので、うんざりした気分で我慢して本を読み続けていたが、
その女が突然小声で叫んだ。
「痴漢かよ!」
…そう聞こえたが、意味不明である。
僕に言っているのか、向こう隣の人間に言っているのか、
前に立っている人間に言っているのか、それすらもわからない。
こちらの体に密着していることをもって「痴漢」呼ばわりしているつもりだとしたら、
これほど滑稽な話もない。
薄気味悪いデブと体がくっついている不快感というのは、性的興奮とは対極にあるものだからだ。
誰がお前に体を密着させてくれと頼んだか?
牧野ステテコに「私を見て発情してるでしょ、アナタ!」的なネタがあったが、
あれに似た倒錯ぶりだ。しかもこちらはギャグにもなっていないときている。
「無遠慮なデブ」というのは、その存在自体が「加害性」を帯びている。
ただシートに座るだけで、他人の領域を否応なく侵害してくるからだ。
その持って身に着いた宿命的な「加害性」をひっくり返すためには、
自分が正反対の立場の「被害者」であることを無理矢理演じるしかない。無理矢理にね。
たとえそれが、誰がどう見ても破綻したロジックであったとしても。
彼女が本気で「痴漢です!」などと訴えることができるわけもない。
(その瞬間、「いやいや、違うでしょ!」「違うでしょ!」「違うでしょ!」と
周囲の人間すべてがツッコミを入れるだろう)
だから、「周りに聞こえるか聞こえないかの小声で叫ぶ」くらいが彼女にとっての関の山。
「私は加害者じゃない!被害者なのだ、そう、被害者なのだ!」と
無理矢理自分自身に言い聞かせている。
…そう考えると、これは実に哀れな「デブならではの保身術」なのかも知れない。
幸い、彼女はほんの数駅で降りていった。
もう気の毒としか言いようがないのだが、立ち上がり際、何か悪態めいたことを呟いていった。
もちろん、僕も含めた周囲の人間たちが、それを相手にすることもない。
…しかしね、おデブさんよ、「たった数駅」を我慢して立っていよう、
というごくわずかな努力すら払わないから、あなたはいつまでも百貫デブのままなのだよ。