情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

有事立法の指定公共機関問題で沖縄の5社が承諾拒否続けている~応援を

2005-12-23 17:58:58 | 有事法制関連
12月17日朝日新聞朝刊37面に,沖縄の民放テレビラジオ5社が有事立法に関連する指定公共機関の指定受け入れを保留している記事が掲載されている。この記事はインターネット上で探せないので,当初保留した際に報じられた記事を引用する。

□□引用開始□□

【沖縄県の民放5社は21日、有事の際に警報や避難指示の放送を義務づけられる「指定地方公共機関」への指定について、米軍取材が規制された現状では報道統制につながるとして、慎重な対応を求める要望書を稲嶺恵一知事に提出した。県は24日までに承諾書の提出を求めているが、民放各社は当面、指定を受け入れるかどうかの判断は留保する。

 有事の際の米軍との連携について、県は「国が調整中だが、外国相手のことなので、限界があると認めざるを得ない。警報や指示は、得られた情報の範囲内で判断するしかない」としている。

 要望書では、昨年8月の沖縄国際大で起きた米軍ヘリ墜落事故の際に、事故現場では米軍による取材規制が敷かれ、民放1社が取材テープを没収されそうになったことを指摘。「有事の判断について、放送局自体に検証の機会がないまま、県の指示通りに放送を行うことは、かつての大本営発表を想起させる」と懸念を表明している。

 国民保護法によると、指定地方公共機関への指定に放送局側の承諾は不要。だが、一方的に指定しても「実効性がない」として、沖縄県は民放側に承諾書の提出を求めている。

 田島泰彦・上智大教授(メディア法)の話 米軍基地が集中し、米軍絡みの事故や事件が日夜起こる沖縄は、ある種、有事と背中合わせといえる。警報や指示の前提となる情報は米軍から開示されず、取材すること自体も米軍によって超法規的に妨害される現実を、沖縄のメディアはシビアに認識している。すでに指定を受けた本土のメディアも、想像力を働かせて、考慮すべきだ。】

□□引用終わり□□

12月17日朝日新聞朝刊37面には,琉球朝日放送の具志堅勝也放送政策局長の談話が次のとおり,引用されている。
「民有地の墜落現場や公道まで封鎖された。今でも理不尽なことが起きているのに,指定を受けたら,日本の法律が米軍の行動にお墨付きを与えかねない」

また,基地問題の取材に携わっている宮城歓沖縄テレビ従業員の談話は次のとおり。
「沖縄戦でも住民は群の足手まといになるからと『疎開』させられた。米軍が展開しやすいよう,避難の指示が出されるおそれがある」

琉球大学法文学部保坂廣志教授の「沖縄では毎日,米軍基地に関するニュースが報道されている。本土と違い,県民の安全に直結している。県内のメディアは国や自治体への協力には慎重にならざるを得ないだろう」というコメントも引用されている。

直前のエントリーで,記者が戦争を前に陥りがちな「罠」を紹介したが,日本全国,特に東京のメディアはいまこそ沖縄のメディアに学ぶ必要があるのではないだろうか…。

そして,それ以上に,われわれ市民も…。

日本人記者が自戒の念を表明「大量破壊兵器の存在を否定する情報を軽視…」

2005-12-23 17:36:28 | メディア(知るための手段のあり方)
ブッシュ大統領がイラクには大量破壊兵器がなかったことを認めたが,この点について,共同通信ワシントン支局の杉田弘毅さんが,新聞研究2006年1月号で,「イラク戦争の期間中,東京でデスク作業をした私にも苦い思い出はある。開戦の流れが固まったと判断してからは,イラクの大量破壊兵器の驚異を伝える記事は説得力を持って見えたし,大きく扱いもした。大量破壊兵器の存在を否定する情報があっても『どっちにしても戦争は始まる』との思いから,軽視した。『政権の速記者』との批判は耳に痛い」と告白している。

この告白は,ニューヨークタイムズで開戦の機運を煽る記事を書いたジュディス・ミラー記者に関する記事の中で触れられたもの。ミラー記者が政府の言い分を伝える速記者だなどと批判されていることを紹介した後,「これはミラー記者だけの問題ではない。どこの国でも安全保障担当の記者は『脅威が迫っている。戦争は近い』という記事を書きたがる。一面に大きく載るし政府からも情報を得やすい。だが,『大騒ぎするな』といった記事は厚遇されない。政府からも嫌われる」と実態を赤裸々に明かしている。

戦争に対して,本来,批判的に書かなければならない記者が熱狂的な記事を書いてしまう歴史は,いまも続いている。だからこそ,常日頃から,政府の言動に批判的な視点から記事を書く癖を怠ってはならない。

もし,ペンの力によって,イラク戦争を未然に防ぐことができたなら,何万人の命を救うことができただろうか?

米国政府がテロ対策のために(?!)行った非合法な盗聴に関して,ニューヨークタイムズが記事を書いたことに対し,米国政府は「国を危険にさらした」などと批判しているようだが,そのような批判に筆を折ってはならないことは,上の例からも明らかだろう。

勝手に特ダネランキング~第6週(12月16日~22日)

2005-12-23 16:11:22 | メディア(知るための手段のあり方)
第6週は12月16日から22日まで。耐震偽装,子供が被害者の事件などに加え,年末になって,各社とも企画ものが入ってきており,紙面が狭いこともあり,特ダネが少なくなっているようだ…。

第1位「政治資金報告書で4県選管 添付の領収書破棄」(読売12月22日夕刊第1社会面トップ
【政治資金収支報告書への添付が義務づけられている領収書のコピーを、福岡、長崎、鹿児島、沖縄の4県の選挙管理委員会が、毎年秋の収支報告書公表前に破棄していることが読売新聞の調べで分かった。】
※民主制の手続そのものに関わる重大なニュース。

第2位「不法残留外国人 拘束期間,逮捕曜日で差」(毎日19日第2社会面肩
【不法残留の外国人を巡り、逮捕の曜日によって、身柄拘束期間に10日間以上の違いが生じていることが分かった。政府の外国人犯罪対策で、警察は身柄を直接、入国管理局に移し強制退去までの期間短縮を図っているが、土日祝日は入管側の体制の問題で収容できないためだ。この場合、外国人は送検され、不起訴後に入管に移るまで最大20日間、警察の留置場に拘置される。こうしたケースは警視庁だけで年間1000人以上で、犯罪対策が生んだ思わぬ不平等の解消が課題となっている。【西脇真一、草野和彦】】
※外国人だけではなく,日本では身柄拘束が安易に考えられすぎている。

第3位「『私のしごと館』とNHK関連会社の妙な関係」(東京18日特報面
【「無駄な施設」との批判が絶えない、厚生労働省所管の独立行政法人「雇用・能力開発機構」(横浜市)が運営する「私のしごと館」。施設運営の赤字は雇用保険料から補てんされている。施設設計や、同館などで見学できるビデオの制作で、NHKの関連会社が“潤っている”としたら、雇用保険、受信料を納めている国民は、どう考えるだろうか。「無駄な施設」と、NHK関連会社の関係を検証した。(星野恵一)】
※雇用保険料について,国とNHKが無駄遣い共犯?!

第4位「不正車検 積載量水増し」(読売20日第一面トップ)
読売の記事がネットで見つからなかったので,それを紹介するブログから【三菱ふそうトラック・バスの子会社で架装メーカーの「パブコ」が、トラックの最大積載量を水増しするため、小型の燃料タンクを搭載して車両重量を軽くし、新車登録した後にタンクを大型化する手口で、組織的に車検を不正取得していたという。国土交通省の調べでわかったもので、きょうの読売が1面と社会面のトップで報じている。記事によると、車検を不正取得して販売されたトラックは、昨年までの3年間だけでも2000台を上回るという。昨年来、連日のように社会面を賑わせていた三菱ふそうだが、今回は系列メーカーの不正行為とはいえ、再び不祥事が発覚し、会社再建にも暗い影を落とすことになるだろう。】
※当局からのリークのようなので,4位にとどめた。

子供の敵…括弧にすら入れないで見出しをとるなんて…

2005-12-23 02:51:22 | メディア(知るための手段のあり方)
勝手にランキング6週のために貯まった新聞を読んでいるのだが,12月16日付産経が,性犯罪前歴者の出所後所在確認制度に関連する記事で,「子供の敵9人不明」と見出しを立てていたのに気づいて,口あんぐり…。せめて括弧付きの敵ならまだしも,不明の9人が子供の敵だと断言する見出しの立て方はあまりにひどい…(参照)。さて,まだまだ貯まっている新聞を読まないと…。