情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

ヘルマン・ゲーリングの国民扇動法~新しい年を迎えるにあたって

2005-12-31 17:39:35 | 有事法制関連
「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」。

このブログを始めたのは,今年3月,憲法改正国民投票法案のあまりの反民主主義さに驚き,何とか,その全文を発信し情報を多くの方と共有したいと考えたからです。残念ながら,来年の通常国会で同法案は可決されることになるでしょう。そして,新しい憲法案はすでに用意されています。

冒頭の引用は,ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリングが,ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判で発言したものだそうです(創12月号97頁「極私的メディア論」森達也)。

近い将来,次期通常国会で可決される国民投票法に則り国民によって新憲法案の採否が選択されるでしょう。そのとき,少なくとも戦前に世界で何が起こったのかを考える必要があると思う。

…最後まで偉そうな書きぶりかも知れません。しかし,例え自分が実践できていないことでも,互いに指摘し合うことでしか切磋琢磨することはできないと考えていますのでご容赦下さい。来年も情報流通促進に少しでも貢献できればと願っています。

ネットと公共性と情報流通…検索連動型広告システム訴訟

2005-12-31 14:12:27 | インターネットとメディア
規制っていうと自由を侵害するような感じはあるが,自由を守るための規制もあります。その例としてあげたのが,メディアの集中排除原則。そこでは,表現の自由(多様な言論の確保)を守るために経済的自由(独占化,寡占化による経済的メリット)が制限されている。

生活する限り,自由と自由が衝突する場面がある。そのときに,いずれが優先されるべきか,ということについては,その社会ごとによって,一定の基準が設けられます。

しかし,表現の自由は,いかなる社会においても優先されなければならない。それは,表現の自由が失われたら,その社会において間違ったルールがあったとしてもそれを訂正することすらできなくなるからです(二重の基準論)。

今後,インターネットがメディアの主流となるのは間違いない。検索システムはその入り口であり,その入り口に安価に広告を出せるのであればそのスペースは誰もが利用できるものであるべきでしょう。

ヤフーがトヨタを買収し,検索連動型広告システムにおいて日産の広告掲載を拒否したとしたら,それは許されるべきでしょうか。いまの法制度だと明文では拒否が違法だとはされていません。また,現状だと,ヤフーもしくはグーグルで検索するしかありませんから,グーグルがマツダを買収して,日産の広告を掲載しなくなることも考えられる。そうなると,日産はインターネット上の情報発信が非常に制限されることになる。さらに言えば,検索連動型だけでなく,バナーとかトップページに出てくる広告についても掲載拒否をするかもしれない(法的には明文で規制はされていない)。

しかし,それでは,日産の方がトヨタよりも優れたものを発売しても,その存在を知る機会が減少し,社会全体としては不利益な結果となります。

それが政治的表現となるともっと深刻だ。例えば,憲法改正の国民投票がされようとするとき9条改編に反対するサイトが広告を出そうとしたら拒否され,9条改編に賛成するサイトの広告のみが掲載された場合,投票行為にどえらい影響を与えるだろう。

いま,どうやって,そのような恣意的な不掲載を防ぐことができるかを考える必要がある。

マイクロソフトのようなOS販売業者に対して,有効な規制をかけなかったことでネットスケープコミュニケーターは消滅し,インターネットの世界にアクセスするためにはインターネットエクスプローラーを利用するしか方法がなくなっている。これも表現の自由が侵害された一例ではないでしょうか。

BigBanさんが言うように,表現の自由が為政者の掌を飛び回る孫悟空ではあってはならないのは当然です。しかし,立法的に,例えば,検索連動型広告について寡占企業のシェア率を一定程度以内に制限することや違法性が認められる広告以外は掲載するというルールを定めることが,為政者の掌を大きくすることになるでしょうか?何か具体的な弊害が考えられるでしょうか?

立法によって,優越的な企業の掌を小さくするとともに,為政者の掌をも小さくすることもできるのではないでしょうか。

もちろん,新しい企業が検索システムに参入してくれれば状況は変わるでしょう。しかし,OSの世界でも,結局,新規参入は実現されていません。

だからこそ,いま,インターネットにおける表現の自由を守るための枠組みを利用者の側から働き掛けて実現する必要があると考えるのです。




早稲田大学内でビラをまいただけで逮捕~どういうこと???

2005-12-31 12:42:40 | 適正手続(裁判員・可視化など)
年末も押し迫った中,【早稲田大のキャンパスでビラをまいていたアルバイトの男性(22)が建造物侵入の疑いで逮捕、勾留(こうりゅう)されていたことがわかった。】という(朝日)。【警視庁の調べなどによると、男性は20日昼、東京都新宿区の文学部がある戸山キャンパスで、学生会館移転問題に絡むビラをまいた。学校側がキャンパスの外に出るように求めたが従わなかったため身柄確保(私人による逮捕)をし、警察に通報して引き渡した。】という。

しかし,逮捕された側は,【早稲田大学文学部キャンパスで昼休みの情宣活動をしていた我々の仲間が突如7~8名の文学部教員に取り囲まれ、警備員詰所に軟禁された上、文学部教員の森元孝(社会学)の「(警察を)呼ぶぞ!」という号令から程なくして現れた牛 込警察署員によって”建造物侵入”の容疑で逮捕され】たと主張している(支援ページ)。

男性の弁護人は勾留理由開示公判で,「大学当局による政治的な弾圧だ。罪証隠滅のおそれも逃亡のおそれもない」と即時釈放を求めたが,坂田正史裁判官は「証拠を隠滅する可能性がある」などと勾留の理由を述べたらしい。(傍聴記はここ

【早大などによると、今回のビラは、01年に学生会館が移転する際、繰り返し反対運動をしていた大学OBら3人を構内への立ち入り禁止とした処分の撤回などを求める内容だった。大学側は今月に入り、再三にわたり注意をしていたという。早大広報室は「学生証の提示を求めたが応じなかった。不審者として通報した」としている。】

その後の情報では,結局,この男性は29日には身柄を解放されたらしい。

しかし,通報した大学,逮捕した警察,勾留請求した検察官,認めた裁判官,みんな何を考えているのか?

自治が求められる大学においてこのような形で表現の自由が弾圧されたことは,ある意味今年を象徴する出来事といえないでしょうか。大学内でビラをまいただけで10日間身柄をとられる…萎縮しちゃいますよね。そのはけ口として言いやすいところ,言ってもお上に目をつけられないところを攻撃することになる。

先日,あるテレビ番組で,サイパンで1人戦争を続けていた小野田氏が「1人ひとりが自分のできることを一生懸命やって豊かな社会にすることが戦争を防ぐことだ。貧しくなれば互いに攻撃的になる」という趣旨の発言をしていた。ビラまいて逮捕されることを容認する社会(少し迷惑なことをお上の力によって互いに攻撃し合うことを容認する社会)について,彼はどんな感想を持つのだろうか?