情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

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米国最高裁も陪審員を死刑にためらう候補者を無理由(専断的)忌避することは違法とする~判例紹介

2007-06-05 08:01:57 | 適正手続(裁判員・可視化など)
 裁判員を選任するにあたって、検察官も弁護人も4人までは、理由なしで審判員として不適格とすることができるが(専断的忌避)、その判断をするための質問として、死刑の適用をためらうか、警察官を信用するか、というものが考えられていることの問題点について、4回、触れてきた(ここここここここ)。

日本が見習ったアメリカでも、専断的忌避については、公正な裁判を確保するための手段としては疑義をもたれていることも一部紹介したが、それを裏付ける最高裁判決の日本語訳があることを教えてもらったので、紹介したい(小早川義則「デュー・プロセスと合衆国最高裁(1)残虐で異常な刑罰、公平な陪審裁判」)。

それらは死刑制度に関するものだ。

そこで、判例を紹介する前に日本で予定されている質問について確認したい。それは、死刑の適用が問題となる事件については、

①「起訴されてる●●罪について法律は、『死刑または無期懲役または●年以上の懲役に処す』と定めています。今回の事件で有罪とされた場合は、この刑を前提に量刑を判断できますか」という質問を裁判官にさせることができる。

②そのうえ、「できない」と答えた場合、「証拠によってどのような事実が明らかになったとしても、絶対に死刑を選択しないと決めていますか」

と聞くというものだ。

ポイントは、これらの質問を前提に、専断的忌避ができるということだ。つまり、①に関する答えのみでも排除できることになっている。ここをしっかりと憶えておいて欲しい。


米国の最高裁のウイザースプーン死刑逡巡陪審員排除死刑違憲判決は次のようなものだ。

事案は、裁判官が予備尋問での冒頭で、「時間の浪費にならないよう、良心的忌避者を排除しましょう」と発言し、迅速に次々と47人の陪審員候補者が死刑に関する見解を根拠に理由付きで忌避された後で構成された陪審員による死刑判決の違法性が問われたもの。47人のうち、いかなる状況でも死刑を科さないと述べたのはわずか5人で残りは、ためらいを示しただけだった。

最高裁は、死刑判決を破棄した。

「本判決は、死刑に良心的なためらいがあることを表明した陪審員候補者を理由付きで忌避できる旨定めた州法の規定に従って、訴追側がそのような気持ちを示した陪審員候補者をすべて忌避し、残された候補者から選任された陪審員が被告人の有罪及び死刑を決定した事案につき、第14修正のデュー・プロセスに違反するとした指導的事例である」

もう一つは、ウィット死刑反対不明陪審員忌避死刑違憲判決だ。こちらも、刑罰としての死刑制度にためらいつつ、「自動的に」死刑判決に反対するかどうかが明らかでない陪審員候補者を訴追側が直ちに理由付きで忌避したのはウィザースプーン判決に反するとした。ただし、訴追側が、死刑反対の見解が極めて強く公平な判断ができない陪審員候補者を理由付きで忌避することについては構わないとした。

この二つの判例からは、日本において、②の答えによって忌避するのは、米国基準にも合致するが、①の答えによって忌避するのは、米国基準には合致しないということになる。

それでも、①の質問をすることを許していいのだろうか。

そして、日本の質問が訴追側に有利なものとなっていることも問題だ。つまり、日本の質問では、死刑に反対する人は忌避できるが、逆に死刑大賛成という人は忌避できない。

この点に関する米最高裁判例は次のようなものだ。

モーガン有罪確定後偏見陪審員排除死刑違憲判決。
「本判決は、陪審員選任の予備尋問時に陪審員候補者すべてに被告人有罪の場合員には必ず死刑を科すかの質問をすることを弁護人が求めたにもかかわらず、同旨の説示をすでにしていたことを理由に公判裁判官が拒否した事案につき、第14修正のデュー・プロセスに違反するとした」。

これらの米最高裁判例に比べ、いかに日本の質問があやふやな基準で公正さを害するとされ、また、一方的に検察官側に有利なものとなっているかがよく分かる。

弁護士会はこのような不公平な質問をさせることを唯々諾々と受け入れるのか!













★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
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