もうまもなく、北朝鮮の脅威がなくなることが確実になってきたためか、政府・防衛省・自衛隊の動きが活発だ。読売新聞は22日、アフガン派遣を合憲と解釈するとの見解をまとめたと報じていた(※1)。しかし、それ以上に恐ろしい提言が自衛隊の「陸戦研究」という冊子の7月号及び8月号に連載されていた。
その提言とは、第1師団司令部の1等陸佐が、これまでの専守防衛の考え方を大幅に変更し、先制攻撃によって防衛しようという考え方を採用しようというものだ。
冒頭の表を見てほしい。これまでは自衛隊は、緑の自衛権という範囲で武力を行使することができるとされていた。したがって、弾道ミサイルで攻撃される場合でいえば、発射して間もなくすると着地点が判明するため、攻撃されたことが明確となり、自衛権を行使することが可能となるとされていた。
しかし、この1等陸佐は、「これまでのように、専守防衛を厳格に適用すると、弾道ミサイル防衛ですら被害局限(消極防衛)しかできない。(中略)これは、(中略)危機管理上の重大な欠陥である」ということを事実上の根拠として、他方で、先制的自衛権を定義づけたうえ、自衛権よりも厳しい行使条件を明確にすることで、拡大解釈を避け、かつ、相手側の攻撃準備を防止することもできるということを理論的根拠として、先制的自衛権を「顕在化した脅威への対処」と定義づける。
そして、脅威の顕在化とは、武力攻撃の着手であり、それは相手側の攻撃命令が発令された時点であるとする。そのうえで、「これを事前に知ることは困難である。従って、武力攻撃の着手と同一視されかねない行為、たとえば実際の武力行使とほとんど同一の軍事演習で、脅威を感じさせるものや恫喝的内容を含む声明を発表した場合は、先制的自衛権の発動を可能とすることが必要である」と行使の範囲について主張する。
その結果が冒頭の図の赤で囲んだ「先制的自衛権として明確に定義」と書かれた部分だ。下に下がれば、燃料注入や攻撃命令・準備着手はおろか、演習・恫喝までもが自衛権行使の対象となっている。
しかし、こんなことを許したら、実際には、自衛権の範囲を超えた攻撃を認めることとなるのは明らかだ。
考えてほしい。脅威を感じさせる軍事演習だとか、恫喝的声明だとか、米国は年がら年中やっている。この1等陸佐が主張していることは、それらに対して自衛権の行使として攻撃をしてよい、ということに等しい。それはやっぱりあかんやろ。
そもそも、燃料注入ですら、目では確認できないのだから、米国の情報でそうなっているなどと嘘をつかれて戦争が始まる可能性が十分にある。それ以上に、緩めた場合、市民が騙されたまま戦争に突入可能性は十分にある。
しかも、この1等陸佐は、そのことを示唆するような発言をしている。
「先制攻撃戦略を採用すべき具体的な条件について、弾道ミサイル対処のケースで考えてみると、まず、対象国による弾道ミサイルの配備や保有が国際的な取り決めに違反している状況になっている必要がある。これは前提的な条件であるが、軍部管理条約などの非軍事的手段による予防措置が成立していなければ、相手側の違法性は著しく低下し、支配型戦略の成立する余地がほとんどなくなる。イラク戦争の理由がイラクによる大量破壊兵器の不法な保有への疑いであったことからも、この条件の重要性が理解される」
米国がイラクは大量破壊兵器を保有していないことを知りつつ、そのような疑いをでっち上げた攻撃の口実としたことはほぼ明確になっている。それにもかかわらず、大量破壊兵器の不法な疑いによるイラク攻撃を是認しているのだ。
さらに、「島嶼部への侵攻対処においては、島嶼を直接防衛する戦力だけでなく、離島などへの緊急展開能力、侵攻する敵を洋上で撃破する能力(戦術空母や原子力潜水艦など)、海・空軍基地を攻撃できる能力が必要である」などとゲーム感覚で軍備拡大を求めている。
現在の憲法解釈とは異なる解釈を堂々と発表するこの1等陸佐は、憲法尊重擁護義務(99条)に違反しており、かつ、軍人が勝手に憲法を解釈し、軍備について過大な要求を正当な手続き以外の場所で対外的にアピールしているのだから、シビリアンコントロールにも反する。直ちに、処分するべきである。
※1:http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20071222it01.htm?from=navr
★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
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その提言とは、第1師団司令部の1等陸佐が、これまでの専守防衛の考え方を大幅に変更し、先制攻撃によって防衛しようという考え方を採用しようというものだ。
冒頭の表を見てほしい。これまでは自衛隊は、緑の自衛権という範囲で武力を行使することができるとされていた。したがって、弾道ミサイルで攻撃される場合でいえば、発射して間もなくすると着地点が判明するため、攻撃されたことが明確となり、自衛権を行使することが可能となるとされていた。
しかし、この1等陸佐は、「これまでのように、専守防衛を厳格に適用すると、弾道ミサイル防衛ですら被害局限(消極防衛)しかできない。(中略)これは、(中略)危機管理上の重大な欠陥である」ということを事実上の根拠として、他方で、先制的自衛権を定義づけたうえ、自衛権よりも厳しい行使条件を明確にすることで、拡大解釈を避け、かつ、相手側の攻撃準備を防止することもできるということを理論的根拠として、先制的自衛権を「顕在化した脅威への対処」と定義づける。
そして、脅威の顕在化とは、武力攻撃の着手であり、それは相手側の攻撃命令が発令された時点であるとする。そのうえで、「これを事前に知ることは困難である。従って、武力攻撃の着手と同一視されかねない行為、たとえば実際の武力行使とほとんど同一の軍事演習で、脅威を感じさせるものや恫喝的内容を含む声明を発表した場合は、先制的自衛権の発動を可能とすることが必要である」と行使の範囲について主張する。
その結果が冒頭の図の赤で囲んだ「先制的自衛権として明確に定義」と書かれた部分だ。下に下がれば、燃料注入や攻撃命令・準備着手はおろか、演習・恫喝までもが自衛権行使の対象となっている。
しかし、こんなことを許したら、実際には、自衛権の範囲を超えた攻撃を認めることとなるのは明らかだ。
考えてほしい。脅威を感じさせる軍事演習だとか、恫喝的声明だとか、米国は年がら年中やっている。この1等陸佐が主張していることは、それらに対して自衛権の行使として攻撃をしてよい、ということに等しい。それはやっぱりあかんやろ。
そもそも、燃料注入ですら、目では確認できないのだから、米国の情報でそうなっているなどと嘘をつかれて戦争が始まる可能性が十分にある。それ以上に、緩めた場合、市民が騙されたまま戦争に突入可能性は十分にある。
しかも、この1等陸佐は、そのことを示唆するような発言をしている。
「先制攻撃戦略を採用すべき具体的な条件について、弾道ミサイル対処のケースで考えてみると、まず、対象国による弾道ミサイルの配備や保有が国際的な取り決めに違反している状況になっている必要がある。これは前提的な条件であるが、軍部管理条約などの非軍事的手段による予防措置が成立していなければ、相手側の違法性は著しく低下し、支配型戦略の成立する余地がほとんどなくなる。イラク戦争の理由がイラクによる大量破壊兵器の不法な保有への疑いであったことからも、この条件の重要性が理解される」
米国がイラクは大量破壊兵器を保有していないことを知りつつ、そのような疑いをでっち上げた攻撃の口実としたことはほぼ明確になっている。それにもかかわらず、大量破壊兵器の不法な疑いによるイラク攻撃を是認しているのだ。
さらに、「島嶼部への侵攻対処においては、島嶼を直接防衛する戦力だけでなく、離島などへの緊急展開能力、侵攻する敵を洋上で撃破する能力(戦術空母や原子力潜水艦など)、海・空軍基地を攻撃できる能力が必要である」などとゲーム感覚で軍備拡大を求めている。
現在の憲法解釈とは異なる解釈を堂々と発表するこの1等陸佐は、憲法尊重擁護義務(99条)に違反しており、かつ、軍人が勝手に憲法を解釈し、軍備について過大な要求を正当な手続き以外の場所で対外的にアピールしているのだから、シビリアンコントロールにも反する。直ちに、処分するべきである。
※1:http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20071222it01.htm?from=navr
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