情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

捜査の(全面)可視化(録画化)なければ弁護できない~大分県弁護士会が裁判員裁判ボイコット決議?!

2008-06-03 06:49:28 | 適正手続(裁判員・可視化など)
 来年実施される裁判員裁判で、取調の(全面)可視化(録画化)が採用されない限り、弁護をボイコットするという悲痛な決意を固めている弁護士会があることが関東弁護士会連合会の会報誌最新号に掲載されている。そのような固い決意をしているとされるのは、大分県弁護士会。同会報誌によれば、「捜査の可視化か完全可視化が認められない限り、スタッフ弁護士、大分県の弁護士会全部ボイコットする、とまで言っております」ということだ。

 確かに、捜査(取調)の可視化がないまま、裁判員制度による短期審理が行われると、強引な取調によって虚偽の自白をされた場合にその自白が虚偽だということを争うことがとても困難になる。大分県弁護士会の決意は弁護士としての良心の発露といえよう。

 大分県弁護士会のウェブサイトをみると、次のような「取調の全過程の録音・録画を求める決議」(※1)がされている。

【わが国では、これまで、被疑者の取調は、捜査官と被疑者のみしか存在しない密室で行われて来た。このため、違法・不当な取調べが後を絶たず、密室での自白の強要により、数々のえん罪事件が生み出されて来た。
 近年においても、選挙違反をめぐる鹿児島の志布志事件、富山県下で無実の者が刑に服していたことが判明した富山事件、佐賀県下における連続殺人事件である北方事件などにおいて違法・不当な取調が行われて自白が強要されていたことが明らかとなっている。
 このような事態を防ぐためには、全事件について、取調べの全過程の録音・録画の実施や弁護人の立会権を認めるべきである。世界的に見ても、欧米諸国のほとんどにおいて、全事件の取調の録音・録画や弁護人の立ち会いが制度化されており、韓国や台湾においても取調の録音・録画が実施されるに至っている。
 また国際人権(自由権)規約委員会、国際法曹協会(IBA)、国連拷問禁止委員会といった機関は、日本においても取調を可視化すべき旨勧告している。
 我が国においても、密室での取調を排除し、取調の全過程の可視化を図ることで、冤罪を防止し、自白偏重の前近代的な刑事裁判から脱却することが求められている。 
 ところで、わが国では、平成21年(2009年)5月までに裁判員裁判制度が実施されるが、現在のように、取調状況を検証することが不可能な制度のままで裁判員裁判制度を実施することは許されない。
 このような制度のままでは、裁判員裁判においても、自白の任意性をめぐる争いが後を絶たず、その審理のために長期間を要し、裁判員に過酷な負担を強いることになる】

(中略)

【これに対し、全事件について取調の全過程の録音・録画が実現すれば、違法・不当な取調をすることはできなくなるうえ、自白の任意性や信用性についても無用な争いを防止できることは、既にこれを実現した各国において実証されている。
 よって、ここに当会は、裁判員裁判制度の実施を目前に控え、国に対し、速やかに、全事件について取調の全過程の録音・録画を実施し、これを欠くときは、証拠能力を否定する法律を整備するよう求める】


 ところが、何と、同会の決議は、完全可視化にとどまらない。

 5月21日には、「裁判員裁判実施までに解決すべき課題に関する決議」(※2)をなしている。その内容は、政府、国会、裁判所、検察庁、日本司法支援センターに対し、裁判員裁判実施までに、

①取調全過程の録音・録画のほか、

②全証拠開示、

③保釈の原則化、

④夜間・休日接見を実現し、

⑤審理日程及び審理期間について再検証するとともに

⑥適切な国選弁護報酬の実現を求めるものだ。

 確かに、富山人違い冤罪事件の構造などからしても、これだけの条件がなければ、無罪を訴えてもなかなか通らないことになる。逆に言えば、これだけの条件が整えば、冤罪事件を起こすような取調自体が激減することになるはずだ。

 同決議では、たとえば証拠開示については、次のように述べている。

【裁判員裁判では、迅速で充実した審理が求められているが、十分な証拠開示が行われないまま、短期間で審理が終結されるとすれば、弁護人は、被告人に有利な証拠が存在してもこれを知ることができず、反証や弾劾の機会が奪われ、被告人の防御権が著しく侵害されるだけでなく、裁判員による公正な判断が損なわれることになる。
 証拠開示が不十分な現状では、裁判員が、「その職責を十分に果たすこと」は不可能と言わざるをえず、裁判員裁判実施までに、全証拠開示が実現されることが必要である】

 簡潔にして分かりやすい内容となっているので、ぜひ、全文を読んでほしい。

 そのうえで、このまま上記の条件が実現されずに裁判員裁判が始まると、多くの方を冤罪に陥れる危険があること、そのような状態のままでは裁判員を務めることはできないことを法務省などにアピールしてほしい。



※1:http://cgi37.plala.or.jp/~oitakenb/syosai.cgi?2=120408814823165

※2:http://cgi37.plala.or.jp/~oitakenb/syosai.cgi?2=121141690017191




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★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
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ネット規制案、政府関与弱まる~与野党合意…とはいえ、安心はできない

2008-06-03 06:23:00 | インターネットとメディア
 毎日新聞(※1)によると、【自民党と民主党は2日、18歳未満の子供をインターネットの有害サイトから守るための議員立法の共同法案の修正協議で合意した。両党の党内手続きを経て、今週中に衆院の「青少年問題に関する特別委員会」に委員長提案として提出し、今国会で成立する見通し。有害情報の選別をめぐり、「国の一定の関与が必要だ」とする自民党と、「民間の自主的な対応に委ねるべきだ」とする民主党の間で意見が対立し、調整が難航したが、最終的に国が関与せず、民間の第三者機関に任せることで自民党が妥協し、決着した】という。


 本ブログでも指摘してきた【「何が有害情報に当たるか」の選別基準は、憲法が定める「表現の自由」に配慮し、民間の第三者機関が策定する。当初の自民党案では、国が指定した民間の第三者機関が選別基準を作るとしており、国の規制色が強かった。しかし、ネット関連業界が「実質的に国の情報統制にあたる」と強く反発したことから、修正案では国の関与を排除した】(毎日)というのだ。

 これは、大きい一歩で、末尾に引用した各団体の抗議表明のほか、草の根の反対運動も影響を与えたと思われる。

 ただし、安心するのは早く、【フィルタリングの機能向上や技術開発などについては、民間団体が国に登録し、情報交換を円滑に進めることなども盛り込んだ】(毎日)らしい。

 フィルタリングの機能そのものがいかなるものになるのか、きちんと開示される必要ありそうだ。

 結局、「独立行政委員会」の設置が実現されないと、政府による圧力は避けられない。どうしても、「独立行政委員会」を実現させましょう!


 
★関連団体の反対・抗議表明は以下のとおり。

【モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)は、「衆議院青少年問題に関する特別委員会」で検討されている法案の内容に懸念を表明し、反対意見を明らかにした。

 EMAは、「衆議院青少年問題に関する特別委員会」で検討されている法案の中に、表現活動の統制につながる内容が含まれているとして懸念を表明。法規制は民間の自主的な取り組みを萎縮させ、表現の自由を侵害するものとして反対意見を表明した。

 意見の中では、青少年を「我が国が目指すIT立国を先導できる」存在と位置付けており、年齢に応じて判断能力を身につけられる環境を目指すべきとしている。】(※2


【楽天、ヤフー、ディー・エヌ・エー(DeNA)、マイクロソフト、ネットスターはこのほど、与野党が国会提出を目指して準備している、青少年に有害な内容のサイトの閲覧を規制する法案、いわゆる「青少年ネット規制法」の与党案について、懸念を表明した。
(中略)
 基準に合ったフィルタリングソフトを認定する機関を政府が設立するという案については「国による実質的な情報統制にほかならない」と指摘。有害情報以外の基準も認定することになれば制度の無用な拡張につながりかねず、画一的な認定基準に統一すれば、結果として、国が認定する1種類のフィルタリングだけが残りかねない――としている】(※3


【今国会での成立を目指して与野党が検討しているインターネットの青少年有害情報規制の動きについて、民放連の放送基準審議会(議長・山本雅弘毎日放送会長)は2日、「有害情報の基準策定に国が関与したり、間接的であれ主務大臣などが行政指導権を持つようなスキームは採用すべきではない」とする意見書を発表した。
 意見書では「有害か否かの基準を法令で定義することになれば、表現内容に公権力の介入を許すことになり、すべてのメディアへの規制拡大につながりかねない」と指摘。有害情報対策については「インターネット業界内で整備されつつある自主的な方策を最大限尊重すべきだ」としている。】(※4


※1:http://mainichi.jp/select/seiji/news/20080603k0000m010089000c.html

※2:http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/06/02/19777.html

※3:http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0806/02/news066.html


※4:http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2008060200748



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-日本が死刑制度を存続させるために-橋本勝の政治漫画再生計画第124回

2008-06-03 06:13:57 | 橋本勝の政治漫画再生計画
【橋本勝さんのコメント】
オスナ、オスナと順番待ちの死刑囚その数、100人以上
厳罰化で死刑囚はさらに増え続けます
日本はこのままでは死刑制度が維持できなくなります
そこで開発されたのが、あの法務大臣の発案による自動エスカレーター式処刑台
迅速に能率的に死刑囚を吊るしていきます
そして来年から実施されることになるのが一般の国民が裁判員として裁判に参加することになる裁判員制度
厳正、公正な裁きで死刑判決もいたします
さらに6人の裁判員を勤めた皆さんには自分たちが判決を下した死刑囚が処刑される際には見学し、判決の結末を見とどけてもらいます
死刑廃止の世界の流れに逆らって日本は信念をもって死刑制度を存続させます
それには国民の皆さんのご理解と協力が必要です


【ヤメ蚊】
…そうか、死刑判決で恨まれるのは裁判官ではなく、国民ということになるわけか…。ある意味分かりやすいかも…。




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