情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

公人と私人の区別もつかないままにジャーナリストとして活動することこそが「弊害」ではないか?

2008-06-05 03:32:42 | メディア(知るための手段のあり方)
 はっきり書きますが、平成20年5月29日付の産経新聞のコラム「Re:社会部」の「匿名報道の“弊害”」という記事(※1)には、がっかりした。このレベルの弊害論を堂々と社会面に掲載することは、産経新聞の品位にもかかわることではないだろうか、社会部全体できちんと考え直してほしいくらいだ。

 このコラムは、インサイダー取引で処分を受けた人物について弁護士から今後の報道を匿名にするよう申し入れがあったことを枕にしたうえ、「迷ったら匿名にしておけば無難じゃないか」と言われそうだが、そう単純なことではない…と話をつなぐ。

 そのうえで、10年ほどまえに、大手生命保険会社を取材したときに、雑談で、数日前に、同業他社のスキャンダルが匿名で報道されたため、間違われて迷惑しているという苦情を受けた体験をつづり、「匿名報道によって当事者の名誉は守られますが、逆に迷惑を被る人が出ることもあります。だからこそ、安易に匿名報道には踏み切れないのです」と結んでいる。

 言いたいことは、もう分かっていただけたと思いますが、匿名報道を主張する人も公権力の行使者や大企業などの公人については当然実名で報道するべきだと考えている。公人まで含めて匿名にするべきだなどという論には触れたことがない。

 コラムを書いた記者が挙げた事例は、公人である「大手生命保険会社」なのだから、当然、実名報道すべき事案であり、そもそも、10年前に匿名で書いたこと自体に問題があるというべきだ。

 そのような事案と私人の不祥事や犯罪を報道する場合とはまったく事情が異なる。それを一緒にして、「だから、安易に匿名報道には踏み切れない」と主張されても、まったく、説得力がない。

 記者とすれば、たまたま、生保の例をあげただけで、公人・私人にこだわったわけではない、私人での弊害例を挙げろというなら挙げることはできる、ということなのかもしれないが、大手生保の事例を匿名・実名議論に持ち出すこと自体が、日常的に、公人・私人の区別もしないままに報道していることを自白するようなもんだと私には思える。

 個々の記者を責めるつもりはないし、個々の社を責めるつもりもない。しかし、記者として最低限の「魂」、権力チェック機関としての役割くらいは、常に念頭に置いて取材し、原稿を書いてほしい。

 なぜ、公人は実名にするべきなのか、その理由を400字以内で述べよ。各報道機関の入社試験に必ず盛り込むようにしたら、いかがでしょうか。

 まじめな話、匿名、実名について記者として触れるなら、冒頭に書いた書籍くらいは目を通してほしい…。

※1:http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080528/crm0805281744039-n1.htm


【法政大学内のデモの弾圧影像】
http://08bunren.blog25.fc2.com/blog-entry-17.html



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