はかに入れてあげるの」と鉛筆でつづった紙には「ゆうれいのおかあさんえ…あかちゃんのときおせわになりました。ありがとう。これからもげんきでね」とあった。<日本語の響き最も美しき二語なり/「おかあさん」「ありがとう」>。俵万智さんは詠んでいる▼子どもの成長とは言葉の成長でもある。書き言葉の習得には、話し言葉以上にだれかが教えることが、重要になる。だからわが子の手書きの文字が感慨をもたらすのだろう▼これほど痛ましい子どもの「手紙」があるだろうか。虐待され、五歳で亡くなった船戸結愛(ゆあ)ちゃんが大学ノートに書き残していた文章。<パパとママにいわれなくても…あしたはできるようにするから もうおねがい ゆるして ゆるしてください>▼覚えたての平仮名だそうだ。愛情を取り戻そうとする娘に親は冷酷な仕打ちで応じている。気持ちを字で表した娘の成長には、何も感じなかったのか。こんな冷血に打つ手はあったのかという疑問も覚える▼<ゆるして>が切なく響く。せめてよく頑張ったねと声をかけられたら。