ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

間違い訂正でーす

2009-12-21 14:16:37 | 着物・古布
写真は、先日病院に行ったとき花屋さんの店先で写したもの。
病院内のお花屋さんなんですが…。
お見舞いには「寝付く(根付く)」といって、鉢物は送らないものですが、
クリスマスはべつですかね。
そういえばお見舞い帰りの人、診察帰りの人が買っていたようですが…。


さてさて、先日の「グッときて」でアップした「イイ男」の正体!
コメントくださるhako様が「こういうお芝居があります」と
メールで知らせてきてくださいました。

あらすじ等を拝読したところ「あっ、こりゃこっちのお話しだ!」と…判明。
あのとき
『ぜんっぜん違う物語だったら、こりゃ大笑い!です。
何か思い当たる方、ご存知の方、いらしたら教えてください』
と書いたのですが、ほんとに「大笑い」になりました。だっはははです。
教えていただいてよかったですー。恥のかきっぱなしになるところでした。
別解釈もありの世界ではありますが、こりゃこっちの物語の方が
いろんなところで全部納得できます。ので訂正でーす。

これはですね、歌舞伎の「東山桜荘子」、「佐倉義民伝」という
いわゆる「直訴」のお話しがテーマです。

あらすじはこちらにと教えていただきました。
読めばそーだそーだその場面だ…と、実は改めて別の目で
この絵を見ることができました。納得です。
どっちにしたってイケメンですー(コレコレ)。

要するに「藩主が変わり、年貢がきつくなって、役人に訴えた名主が捕らえられ、
それを助けようとして、入婿が妻や子供と涙のわかれののちに
直訴に及んだ」という物語。佐倉ですから千葉だというのに、
千葉に18年も住んでいて全く知りませんでした。

私がさんざ考えて思い出した「細川家の九曜紋」、これは
この主人公の入婿さんが、元は武士で名主に認められて入婿になった人で
九曜紋だったそうです。子供の袴姿も帯刀も、これで謎が解けました。
橋の脇の葵の紋は、このとき将軍に直訴したとのことで、
時の将軍は「家綱」…この人のときって何かと不穏だったんですねぇ。
橋の上の棒の先の上は「直訴状」、お芝居ではもみじの枝に挟まれて
差しだそうとするのだそうです。

子供の数も4人で同じ…と思ったら…、
今回いろいろ覚え違いもあるなぁと、調べなおしましたところ、
大石さんは実は5人の子持ちでした。
離縁された大石さんの奥さん「おりくさん」は、実家へ戻ってから三男を産んでました。
「義民伝」の方も、夫の方は「離縁状」を残すのですが、
奥さんにすがられて、離縁状を破るそうです。
もう一度羽裏の絵ですが、これは助けてくれる人がいて、
あきらめていた最後の妻子との対面を果たし、別れを告げて江戸に向かう、
主人公歌舞伎では「浅倉当吾」本名「佐倉惣五郎」
字は「宗吾」だそうですが、その人の姿ですね。


   


ではせっかくですから「直訴・一揆」について…。
元々、日本は「租庸調」のときから「米を税」としていました。
こういうことって結局は上に立つ人によるわけで、
厳しすぎたり無理難題だったりすると、逃散(ちょうさん)などの方法で、
対抗しました。逃散は文字通りにげてしまうことですが、
最初はみんなで仕事を放棄して、要求をしたりする方法でした。
江戸時代には、まんま「逃げ」ました。村ひとつ全員で逃散したことも
あったそうです。この一揆や逃散の前に、名主や宗吾のような気骨ある人が、
直訴を試みたわけですが、必ず死罪になりました。
そのため、そういう犠牲になってたすけてくれたリーダーのことを「義民」と呼び
力のない立場の農民たちにとっては、そういう人の存在や伝説は
語り継がれて、時として「ちから」になったのですね。
処刑が行われると「武家に対して、お上に対しての反抗」でしたから、特に厳しく
当然葬儀なども執り行うことはできず、そのため残った村人たちは、
ひそかに葬ったり、一見別のものを祀ったりしました。
義民塚、などと呼ばれています。
また、藩主がかわったり、時代が過ぎてほとぼりがさめてから、
後の世の人が石碑を建てたり、墓所や刑をうけたところを神社にしたり
お堂など作って祀ったりしました。調べるとあれこれ残っています。
それだけ、直訴してくれたことに対する感謝の気持ちは強かったんですね。

元々「武家社会」になっても、その給料はお金ではなくお米でしたから、
農民が米を作らないということは、自分の首を絞めることです。
八代将軍吉宗は、いろいろ改革をした人ですが、この「お米」については
新田開発などに力を入れました。
それにしても、農民は「生かさず殺さず」といわれたり、
「ゴマと農民は絞れば絞るほど出る」といわれたり、悲惨だったんですね。
米を作ることから、身分こそ「士」の次に「農」と置かれましたが、
実は土地を離れることもできず、自分たちは雑穀を食べ、
着物や道具まで制約された中で、一生米を作り続けなければならなかったのです。


さて、知らなかったばっかりにグルグルと考えて「忠臣蔵」に走ったわけですが、
それにしても「共通点」の多いことでした。いやおもしろい…。
自分の思い込みの間違いを面白いというのは不謹慎ではありますが、
こういう謎解きが、楽しいわけで…。

一番共通する部分、は、やっぱり精神的な部分で「義」とか「矜持」とか、
「夫婦愛・家族愛」ということでしょうね。
こういうお話が江戸庶民にもてはやされたのは、当時が武家社会で、
その武家の中でも上下関係が厳しく、ちからや立場で弱いものをねじ伏せる、
そういう時代だったから、押さえつけられる立場の人間は、
こういうお芝居で鬱憤をはらしたんでしょうね。

今の時代はどうでしょうか。
着物から離れてしまって申し訳ないですが、
自由とか平等を勝ち得たはずなのに、かの時代とは違う意味で、
実に暮らしにくい現状になってます。
直訴しても殺される時代ではなくなったのに、
それに近いことを言っても言っても、ちーとも改善されないのは、
昔と変わってない気がしますねぇ。

先日「仕分け作業」のあのキッチリバッサリが、賛否両論を呼びましたが、
私は「賛」の方が6分、「否」が4分ですかねぇ。
あのおかげて、知らなかった「お金の使い道」がいろいろわかりましたし、
説明を聞いて「それって民間企業なら倒産だよ」みたいなこともありました。
でも、あまりにも「速攻」でしたし、素人でもわかる「スパコン」など、
今の時代には、いやでも追いかけなきゃならないものがあり、
それをはずせば、大げさに言えば「国力低下」につながる…。
そういうものもあっさりカット、というのは、やはり数字と文字の字面だけを
見ただけの判断だといわざるを得ないなぁと。

ハナシを元に戻しまして…
私はやっぱり「物語」のあるものに惹かれます。
見てすぐわかるもの、なんだろなんだろと考えてたどりつくもの、
どれをとっても「日本人が育んできた感性」にあふれています。
昔の職人さんは、いろんな物語やお芝居の一場面を切り取って、
自分の思いをこめて力の限りに描いた…。
それを何十年もたって、横浜のハズレに住むおばさんが、
これはなんだろなーと、首をひねりひねり考える…。
それをへぇぇと楽しんでくださる方がいたり、
それはこっちじゃないかしらと教えてくださる方がいたり…。
着物がつなぐ縁というものでしょう。楽しいですよね。

こちら、三度目の登場かな?
秋の野原、狸さんが物思いにふけっています。
「證誠寺の狸ばやし」の狸さんが、和尚さんの扮装で、
経机にもたれかかって「茶釜」を眺めています。
楽しかった「綱渡り」のことを思い出しているのでしょうか。
和尚さんはもういないのでしょうか、なんだか切なくてホロリとします。


         


迷ったり教えていただいたりしながら、
私はきっとこういう「物語のあるもの」を探していくと思います。
ただねぇ…ほとんどのばやい「たっかいんだわよぉーっ!
なんとかならんのか、ありそでなさそでしっかり存在する「古着の相場!」

というわけで、本日「代訂正」のお話でした。

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4 コメント

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Unknown (とんぼ)
2009-12-22 21:08:44
haco様
ほんとにありがとうございました。
ご縁というものは、フシギで楽しく
ありがたいものです。
歌舞伎の演目、いろいろ本をひっくり返して、
また読んでいます。
またいろいろ羽裏など出しますので、
ご覧ください。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-12-22 21:06:16
陽花様
やっぱり鉢植えは、考えちゃいますよね。
シクラメンも、花のふちがギザギザなのとか
ほんとに種類が増えましたね。

物語を書いたものって面白いですね。
自分で描けたらなんて思います。
返信する
Unknown (haco)
2009-12-22 15:50:13
こんにちは。
死を決意しての妻子との別れ、きりりと引き締まった顔が本当にいい男ですね。
たまたま好きな役者さんが出ていたから見ましたが、それがなければ私も、惣五郎の事は一生知らないままだったかも。出会いというのは不思議なものですね。人とは勿論ですが、物とも…このような羽裏との出会い、宝ですね。
一枚の羽裏から物語を紐解いたり、想いを巡らせたり…そうした楽しさを、いつもこちらで教えていただいてます。ありがとうございます。(^^)
返信する
Unknown (陽花)
2009-12-21 22:54:44
お見舞いに鉢物は送りませんよね。
家族の方が殺風景な病室に飾ってあげるんでしょうか。それにしても華やかで綺麗なシクラメンですね。
これだけの絵の中に物語がギュッと詰まって
いるんですね。
あらすじを読んでなるほどと感心しました。
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