本日の伸子張り、おもいっきり縮んだちりめんです。
左の張り木にかかっているところまで幅を出します。
右側、ちぢんでるでしょー。
今日は伸子張りつながりで「洗う」お話です。
すごーーーく長いですので…。
まず最初に…今の時代、
☆ 高価な着物、あるいはダメになったらゼッタイ困るもの。
これはもう、プロに頼むのが一番です。
自分で洗ってみようと思うかた、まずは素材をしっかり確かめること。
袷は裏と表で糸や織が違うと片方が縮んだりしてあとが厄介です。
ちりめん系は縮むもの、と考えてください。
胴裏は平絹ですから縮むということはあまり考えられませんが、
古着だと八掛にちりめんが使われていたりします。
また現代の八掛は精華パレスが多いですが、これも実はちりめんです。
ただし、今のものは縮まない工夫がされていますので、
昔のちりめんのように大きく縮むことはありません、が、
縮む可能性があると考えてください。
つむぎの八掛は「駒撚(こまより)」とよばれるものですが、
このあと書きます「強撚糸」を使っています。
縮みに関しては…これもぅ賭けなんですが、おおむね紬用の八掛は
縮みはほとんどないと考えていいと思います。
ちりめん地には「一越ちりめん」「東雲ちりめん」「うずらちりめん」
「お召しちりめん」などがあります。
綸子の場合でも、普通「綸子」と呼ばれるものは、普通の糸ですが、
経(たていと)に駒撚り糸と呼ばれる糸が入ると駒綸子、
緯(よこいと)にちりめん糸を織り込むと綸子ちりめん、と呼ばれ、
強く撚りをかけた糸を使いますので、縮みが生じるものもあります。
つまり「強撚糸」を使ったものは縮みやすいってことです。
素人にはできがった着物を見たり触ったりしただけでは、
それが何であるか、判断がつかない場合があります。
古着であっても、それが何であるか、お店のヒトに確かめるといいですね。
「錦紗」の場合は「ちりめん」を略すことが多いのですが「錦紗ちりめん」です。
木綿やウールも縮みはあります。
「防縮加工」がされているものもありますが、縮み率が低いと考えてください。
こればっかりは洗っててみなけりゃわかりませんが。
ただ、ちりめんみたいに一度に5センチも縮む、なんてことはありません。
縮むってめんどうでしょう、じゃなんでこんなやっかいなものを、
ずっと着てきたのか、と言いますと、
まず江戸や明治の初めなんてのは、絹は庶民のものではなかったから。
洗うのは木綿や麻が多かったわけです。
また庶民が絹を着るようになっても、自分で洗い張りして仕立てられたから。
昔でもいいものはプロに頼みましたが、少なくとも普段着物なんぞは、
自分でやっていたわけです。縮むのがわかっているものは、解いて布に戻して
縮みを伸ばしたり、しわをのばしたりするのに、伸子や張り板を使ったわけです。
こちらは洗い張り状態のもの、自分のところで洗えないもの
時代が進んで場所とか時間とか、材質などの理由で、自宅で洗わないようなもの、
そういうものはプロに頼んで洗い張りしてもらう、
そしてこの状態でかえしてもらって、仕立ては自分でしたわけです。
上のものはまだとてもいい状態ですが、古いものになるとこんなのがあります。
全部ツギアテです。
古いもののツギアテはだいたいこの手法が多いです、裏は雑に見えるんですが、
実は緻密…裏と表です。表、細かいですよね。
こんな状態でも、まだ使ったんですね。いたんだところをよけて襦袢にしたり
はんてんにしたり、ほかのものと足して着物にしたり…。
昔のひとにとって着物を洗うということは、
単に汚れ落としだけではなかったのです。
さて、着物のままで洗うということ、考えて見ましょう。
ちりめんは最初からあきらめたほうがいいです。
ちりめん以外のもの、紬とか綸子とかなら、仮に縮みはあってもわずかです。
こちらで次に気をつけるのは「色落ち」です。
ハギレがとれれば一番いいのですが、もしなければ、
右の前身ごろの奥とか、帯締めたら中に隠れるところなど、
あとあと支障のないところでちょっと試してみてください。
(例えば水を含ませて絞ったコットンで少しだけぬらして、
白い生地をあてて強く押さえてみるとか、染み抜きの時のように叩いてみるとか)
特に色落ちするのは赤、紫、紺あたりです。
ひどく色落ちするようなら、私はプロに任せます。
ただし、全く色落ちしないもの、というのはあんまりありません、
うっすらと落ちるものが多いです。全く落ちないのは化繊などですね。
少しくらいの色落ちだと、洗ったときに水の色が少し変わる感じです。
それくらいだと、洗いもすすぎも手早くすれば、
白い模様が紫になるなんてことはさけられます。
ひどい色落ちの場合は、水につけてぎゅーっと押しただけで、
イチゴジュースのような色とか、ぶどうジュースのような色とか、すごいです。
縮みと色落ち、これをクリアしたら、或いは少しくらいそうなっても、
あとは別の用途に使うから、など決心がついたら…?!、次の行程へ。
とりあえず、穴や裂けなどチェックしましょう。
古着を買うときはひろげて全部を細かく調べたりしませんから、
気がつかないところに小穴があったりします。
それと古着の場合は「もう寿命」というのがありまして、
洗ったら裂けちゃった…なんてことがあります。
まずは買うときから「布チカラ」を調べられたら一番です。
同じ着物でも、チカラのかかるお尻のあたりとか、よくこすれる裾や袖口、
そういうところはほかがまだまだでも弱っている場合があります。
背縫いのお尻のアタリなどは、ひっぱって確かめるといいですね。(そっとね)
小さい穴は、穴の向きにもよりますが、洗うことで広がる場合があります。
小さいものならちょっとかがっておくとかツギをあてるとか、
メンテしておいてください。
最期に、しつけとしてところどころ止める…、
これは着物の状態で決めてください。型崩れを防ぐためです。
ではいよいよ洗いましょう。まず水を使うこと。お湯はよけいに色が落ちます。
洗剤なんですが…これが一番説明に悩むところなのです。
ちと脇道にそれますが、書いてみましょう。
大昔から、洗濯はしていたわけですが、今のような洗剤はありませんでした。
江戸時代あたりに、洗剤として使われたのは「灰汁」「ふのり」、
「むくろじの実」など。むくろじの実は江戸時代の「シャボン玉売りの材料」で、
これをとかしたものを「あしのたまぁ~」という呼び声で売りました。
真ん中の種は羽つきの羽のアタマに使われるあの黒い玉です。
むくろじの実は、もむとアワアワが出るんです。
ふのりは先日「シャンプーとして使った」と書きましたが
汚れや髪油を包み込んで洗い流したわけです。
どれも洗浄力その他、今の洗剤とは比べ物になりませんが、原理は同じなんです。
つまり「界面活性剤」ですね。界面活性剤の役目は、水と油という
混じりにくいものの間に入って、両方を結びつけることです。
つまり着物についた油っ気や汚れと水を結びつけて、
油や汚れが布から離れやすいようにする…です。
今の洗剤は当然改良されて、洗浄力も強いですよね。
私たちの年代は、その強い洗浄力になれていますから、
水だけだと洗ったことにならないとか、泡が立たないときれいにならないとか、
そんなふうに思っています。でも、灰汁だのふのりなんて、
そんなにアワアワしません、それに水洗いだけでもけっこうさっぱりします。
ものすごくきれいにしよう、が今の当たり前なんですが、
そこから抜け出さないと「きれいにならない」になります。
いわゆる呉服屋さんの「丸洗い」というのは「ドライクリーニング」です。
石油系ですね、これは脂肪分はよく落ちます。つまりヒトの体の皮脂などですね。
でも水溶性の汚れはおちにくい、つまり汗ジミや雨のシミなど、
油性のあまりない汚れは落ちにくいわけです。
呉服屋さんの「生き洗い」というのは「水洗いプラス染み抜き」です。
そしてこれはお店によって違うのですが、大体は部分洗い。
だから汗ジミとか料理のしみとかも落ちるんですね。
さて、洗剤を使う意味についてはお分かりいただけましたでしょうか。
それで、いよいよ「洗う」わけですが、今は洗剤もドライ用だのオシャレ着用だの
いろいろ出ています。洗剤の裏を見ると界面活性剤として、
アルキル硫酸エステルナトリウムとか、脂肪酸エタノールアミンだとか、
舌噛みそうな名前がズラリと並んでいます。
そんなもので判断するのはとてものことにできませんから、
ドライクリーニングタイプなのかそうでないのか、それだけでも見てください。
ドライ用でも最近は普通の洗剤にドライの要素をいれたもののはずです。
シルク専用の洗剤があれば一番いいです。
もしなければ「シャンプー」でOKです。これは実践してます。
ただ、できれば自然系の匂いの強くないもの…あとまでにおいますから。
シャンプーは元々髪の汚れと油をとるものですし、
なんたって「ウール100パーセント」の人毛という自然素材に使うものですから。
またごく普通の石鹸、あれを少し切ってお湯につけておくと、
解けて乳白色の液になります。あれでもかまいません。
洗剤はいつの場合も少しで十分。
洗剤の容器には、○○cc計って入れろと、書いてありますが、
あれは「そうしたときが一番洗浄力が強くなります」ってことなんです。
部活のユニフォーム洗うわけじゃないんですから、
界面活性剤として、ほんの少しお水と仲良くなれる(親水性)ように、
ちょっと補助するくらいのものでいいのです。
とりあえずの汚れがざっと落ちれば十分だと、私は思っています。
すすぐのに水を大量に使って色をどんどん落とすなんてもったいないですから。
まず、きものは基本手洗い…。
形を整えてたたんだら、洗濯用ネットに入れます。
このとき丸めるより平らなほうがいいので、大型の四角い洗濯ネットがベスト。
最近のは丸いのが多いんですが、大きなもの用とか、
どうしてもなければ、旅行グッズで探すと「メッシュ収納袋」であります。
袋の大きさに合わせてたたむと、ズレにくいです。
さっきの界面活性剤というのは、こうしてたたんだりしたとき、
中までで早く均等に水がしみこんでいく働きをします。
だから、少しは入っていたほうがいいわけです。
入れたらお風呂場へ、もちろん洗濯できるところでしたらどこでも。
浴槽、もしくは着物がはいるだけのタライなどに
着物ひたひたより少し多いくらいの水と少量の洗剤を入れて、
着物を浸したら手で押し洗い、腰の悪い人は足で踏み洗い…ははは。
どうなってもいいもの以外は、洗濯機でガラガラはやめてください。
バスタブやタライの縁にかけるようにして水を切り、
今度はたっぷりの水をためてすすぎます。
いずれの場合もとにかく手早くです。
シャワーをじょうずに使うのもいいですね。
常に「水」です。途中で温度が変わるのもいけません。
洗剤を少量というのは、すすぎも早いわけです。
すすぎ終わったら、まずきれいな洗い場の床で(バスマットがあればソレの上で)
くるくると巻くようにしてざっと水を絞り出します。反対向きにしてもう一度。
おわったら一度ネットの中を確かめて形を整え、
ここからは洗濯機のお世話になりましょう。短時間で脱水します。
要するにぼたぼた水がたれなきゃいいんですから。
季節によって乾きにくい、あるいはとても厚地なんてときは、ここから更に、
バスタオルにくるんで上から踏む、いやいや少し叩いたりして、
できるだけの水分をとりましょう。
干す前にたいらなところで、形を整えます。もしできれば少し重しをかけると
しわが違います。ゼータクをいうなら、たたんだ状態で、丈だけのばし
その上にビニールなどひろげて電話帳とか辞典とか、少し重いものを並べて
おもしをかけると、それだけであとのアイロンが楽になります。
重しができなければ、昔の人の知恵、少しずつ両手のひらではさんで、
パンパンと叩くだけでも違います。
このあとはハンガーにかけますが、ぜひ着物用ハンガーを使ってください。
肩と袖を一直線にすることで、袂というデカいものがついている袖の重みで
裄丈が変わったり、型崩れしたりを防ぎます。
棹にかけるときは、袖から袖まで棹を通して干してください。
ハンガーにかけたときと同じ形になるように。
着物の前を軽くあわせた形にして、自然な形のまま、衿のVのところを
洗濯ばさみでつまみます。
乾いたらゆっくりていねいにアイロンです。
よく「少し湿ってるときにとりこんでアイロン」といいますが、
それをする場合は厚地になっている、例えば棒衿などの場合や褄先のところとか、
湿ったままのことがあります。アイロンが終ったら必ずもうしばらく干して、
細かいところまでしっかり乾いたのを確認してからしまってください。
湿り気はカビのもとです。
いかがですか?なんかたいへーん…ですか?
でも、昔の人たちはタライと洗濯板だけでこれをして、
スチームアイロンなんてのもないままやっていたんです。
便利な道具はどんどん使って、それ以外は手をかけて…。
もし、思いのほか縮んでしまった…裏地が、或いは表が縮んでぶよぶよ。
このときはあきらめて解いてください。
さて、着物洗うだけでここまできちゃいました。
伸子張りだの板張りだの、そのお話しはまた続き、といたしましょう。
左の張り木にかかっているところまで幅を出します。
右側、ちぢんでるでしょー。
今日は伸子張りつながりで「洗う」お話です。
すごーーーく長いですので…。
まず最初に…今の時代、
☆ 高価な着物、あるいはダメになったらゼッタイ困るもの。
これはもう、プロに頼むのが一番です。
自分で洗ってみようと思うかた、まずは素材をしっかり確かめること。
袷は裏と表で糸や織が違うと片方が縮んだりしてあとが厄介です。
ちりめん系は縮むもの、と考えてください。
胴裏は平絹ですから縮むということはあまり考えられませんが、
古着だと八掛にちりめんが使われていたりします。
また現代の八掛は精華パレスが多いですが、これも実はちりめんです。
ただし、今のものは縮まない工夫がされていますので、
昔のちりめんのように大きく縮むことはありません、が、
縮む可能性があると考えてください。
つむぎの八掛は「駒撚(こまより)」とよばれるものですが、
このあと書きます「強撚糸」を使っています。
縮みに関しては…これもぅ賭けなんですが、おおむね紬用の八掛は
縮みはほとんどないと考えていいと思います。
ちりめん地には「一越ちりめん」「東雲ちりめん」「うずらちりめん」
「お召しちりめん」などがあります。
綸子の場合でも、普通「綸子」と呼ばれるものは、普通の糸ですが、
経(たていと)に駒撚り糸と呼ばれる糸が入ると駒綸子、
緯(よこいと)にちりめん糸を織り込むと綸子ちりめん、と呼ばれ、
強く撚りをかけた糸を使いますので、縮みが生じるものもあります。
つまり「強撚糸」を使ったものは縮みやすいってことです。
素人にはできがった着物を見たり触ったりしただけでは、
それが何であるか、判断がつかない場合があります。
古着であっても、それが何であるか、お店のヒトに確かめるといいですね。
「錦紗」の場合は「ちりめん」を略すことが多いのですが「錦紗ちりめん」です。
木綿やウールも縮みはあります。
「防縮加工」がされているものもありますが、縮み率が低いと考えてください。
こればっかりは洗っててみなけりゃわかりませんが。
ただ、ちりめんみたいに一度に5センチも縮む、なんてことはありません。
縮むってめんどうでしょう、じゃなんでこんなやっかいなものを、
ずっと着てきたのか、と言いますと、
まず江戸や明治の初めなんてのは、絹は庶民のものではなかったから。
洗うのは木綿や麻が多かったわけです。
また庶民が絹を着るようになっても、自分で洗い張りして仕立てられたから。
昔でもいいものはプロに頼みましたが、少なくとも普段着物なんぞは、
自分でやっていたわけです。縮むのがわかっているものは、解いて布に戻して
縮みを伸ばしたり、しわをのばしたりするのに、伸子や張り板を使ったわけです。
こちらは洗い張り状態のもの、自分のところで洗えないもの
時代が進んで場所とか時間とか、材質などの理由で、自宅で洗わないようなもの、
そういうものはプロに頼んで洗い張りしてもらう、
そしてこの状態でかえしてもらって、仕立ては自分でしたわけです。
上のものはまだとてもいい状態ですが、古いものになるとこんなのがあります。
全部ツギアテです。
古いもののツギアテはだいたいこの手法が多いです、裏は雑に見えるんですが、
実は緻密…裏と表です。表、細かいですよね。
こんな状態でも、まだ使ったんですね。いたんだところをよけて襦袢にしたり
はんてんにしたり、ほかのものと足して着物にしたり…。
昔のひとにとって着物を洗うということは、
単に汚れ落としだけではなかったのです。
さて、着物のままで洗うということ、考えて見ましょう。
ちりめんは最初からあきらめたほうがいいです。
ちりめん以外のもの、紬とか綸子とかなら、仮に縮みはあってもわずかです。
こちらで次に気をつけるのは「色落ち」です。
ハギレがとれれば一番いいのですが、もしなければ、
右の前身ごろの奥とか、帯締めたら中に隠れるところなど、
あとあと支障のないところでちょっと試してみてください。
(例えば水を含ませて絞ったコットンで少しだけぬらして、
白い生地をあてて強く押さえてみるとか、染み抜きの時のように叩いてみるとか)
特に色落ちするのは赤、紫、紺あたりです。
ひどく色落ちするようなら、私はプロに任せます。
ただし、全く色落ちしないもの、というのはあんまりありません、
うっすらと落ちるものが多いです。全く落ちないのは化繊などですね。
少しくらいの色落ちだと、洗ったときに水の色が少し変わる感じです。
それくらいだと、洗いもすすぎも手早くすれば、
白い模様が紫になるなんてことはさけられます。
ひどい色落ちの場合は、水につけてぎゅーっと押しただけで、
イチゴジュースのような色とか、ぶどうジュースのような色とか、すごいです。
縮みと色落ち、これをクリアしたら、或いは少しくらいそうなっても、
あとは別の用途に使うから、など決心がついたら…?!、次の行程へ。
とりあえず、穴や裂けなどチェックしましょう。
古着を買うときはひろげて全部を細かく調べたりしませんから、
気がつかないところに小穴があったりします。
それと古着の場合は「もう寿命」というのがありまして、
洗ったら裂けちゃった…なんてことがあります。
まずは買うときから「布チカラ」を調べられたら一番です。
同じ着物でも、チカラのかかるお尻のあたりとか、よくこすれる裾や袖口、
そういうところはほかがまだまだでも弱っている場合があります。
背縫いのお尻のアタリなどは、ひっぱって確かめるといいですね。(そっとね)
小さい穴は、穴の向きにもよりますが、洗うことで広がる場合があります。
小さいものならちょっとかがっておくとかツギをあてるとか、
メンテしておいてください。
最期に、しつけとしてところどころ止める…、
これは着物の状態で決めてください。型崩れを防ぐためです。
ではいよいよ洗いましょう。まず水を使うこと。お湯はよけいに色が落ちます。
洗剤なんですが…これが一番説明に悩むところなのです。
ちと脇道にそれますが、書いてみましょう。
大昔から、洗濯はしていたわけですが、今のような洗剤はありませんでした。
江戸時代あたりに、洗剤として使われたのは「灰汁」「ふのり」、
「むくろじの実」など。むくろじの実は江戸時代の「シャボン玉売りの材料」で、
これをとかしたものを「あしのたまぁ~」という呼び声で売りました。
真ん中の種は羽つきの羽のアタマに使われるあの黒い玉です。
むくろじの実は、もむとアワアワが出るんです。
ふのりは先日「シャンプーとして使った」と書きましたが
汚れや髪油を包み込んで洗い流したわけです。
どれも洗浄力その他、今の洗剤とは比べ物になりませんが、原理は同じなんです。
つまり「界面活性剤」ですね。界面活性剤の役目は、水と油という
混じりにくいものの間に入って、両方を結びつけることです。
つまり着物についた油っ気や汚れと水を結びつけて、
油や汚れが布から離れやすいようにする…です。
今の洗剤は当然改良されて、洗浄力も強いですよね。
私たちの年代は、その強い洗浄力になれていますから、
水だけだと洗ったことにならないとか、泡が立たないときれいにならないとか、
そんなふうに思っています。でも、灰汁だのふのりなんて、
そんなにアワアワしません、それに水洗いだけでもけっこうさっぱりします。
ものすごくきれいにしよう、が今の当たり前なんですが、
そこから抜け出さないと「きれいにならない」になります。
いわゆる呉服屋さんの「丸洗い」というのは「ドライクリーニング」です。
石油系ですね、これは脂肪分はよく落ちます。つまりヒトの体の皮脂などですね。
でも水溶性の汚れはおちにくい、つまり汗ジミや雨のシミなど、
油性のあまりない汚れは落ちにくいわけです。
呉服屋さんの「生き洗い」というのは「水洗いプラス染み抜き」です。
そしてこれはお店によって違うのですが、大体は部分洗い。
だから汗ジミとか料理のしみとかも落ちるんですね。
さて、洗剤を使う意味についてはお分かりいただけましたでしょうか。
それで、いよいよ「洗う」わけですが、今は洗剤もドライ用だのオシャレ着用だの
いろいろ出ています。洗剤の裏を見ると界面活性剤として、
アルキル硫酸エステルナトリウムとか、脂肪酸エタノールアミンだとか、
舌噛みそうな名前がズラリと並んでいます。
そんなもので判断するのはとてものことにできませんから、
ドライクリーニングタイプなのかそうでないのか、それだけでも見てください。
ドライ用でも最近は普通の洗剤にドライの要素をいれたもののはずです。
シルク専用の洗剤があれば一番いいです。
もしなければ「シャンプー」でOKです。これは実践してます。
ただ、できれば自然系の匂いの強くないもの…あとまでにおいますから。
シャンプーは元々髪の汚れと油をとるものですし、
なんたって「ウール100パーセント」の人毛という自然素材に使うものですから。
またごく普通の石鹸、あれを少し切ってお湯につけておくと、
解けて乳白色の液になります。あれでもかまいません。
洗剤はいつの場合も少しで十分。
洗剤の容器には、○○cc計って入れろと、書いてありますが、
あれは「そうしたときが一番洗浄力が強くなります」ってことなんです。
部活のユニフォーム洗うわけじゃないんですから、
界面活性剤として、ほんの少しお水と仲良くなれる(親水性)ように、
ちょっと補助するくらいのものでいいのです。
とりあえずの汚れがざっと落ちれば十分だと、私は思っています。
すすぐのに水を大量に使って色をどんどん落とすなんてもったいないですから。
まず、きものは基本手洗い…。
形を整えてたたんだら、洗濯用ネットに入れます。
このとき丸めるより平らなほうがいいので、大型の四角い洗濯ネットがベスト。
最近のは丸いのが多いんですが、大きなもの用とか、
どうしてもなければ、旅行グッズで探すと「メッシュ収納袋」であります。
袋の大きさに合わせてたたむと、ズレにくいです。
さっきの界面活性剤というのは、こうしてたたんだりしたとき、
中までで早く均等に水がしみこんでいく働きをします。
だから、少しは入っていたほうがいいわけです。
入れたらお風呂場へ、もちろん洗濯できるところでしたらどこでも。
浴槽、もしくは着物がはいるだけのタライなどに
着物ひたひたより少し多いくらいの水と少量の洗剤を入れて、
着物を浸したら手で押し洗い、腰の悪い人は足で踏み洗い…ははは。
どうなってもいいもの以外は、洗濯機でガラガラはやめてください。
バスタブやタライの縁にかけるようにして水を切り、
今度はたっぷりの水をためてすすぎます。
いずれの場合もとにかく手早くです。
シャワーをじょうずに使うのもいいですね。
常に「水」です。途中で温度が変わるのもいけません。
洗剤を少量というのは、すすぎも早いわけです。
すすぎ終わったら、まずきれいな洗い場の床で(バスマットがあればソレの上で)
くるくると巻くようにしてざっと水を絞り出します。反対向きにしてもう一度。
おわったら一度ネットの中を確かめて形を整え、
ここからは洗濯機のお世話になりましょう。短時間で脱水します。
要するにぼたぼた水がたれなきゃいいんですから。
季節によって乾きにくい、あるいはとても厚地なんてときは、ここから更に、
バスタオルにくるんで上から踏む、いやいや少し叩いたりして、
できるだけの水分をとりましょう。
干す前にたいらなところで、形を整えます。もしできれば少し重しをかけると
しわが違います。ゼータクをいうなら、たたんだ状態で、丈だけのばし
その上にビニールなどひろげて電話帳とか辞典とか、少し重いものを並べて
おもしをかけると、それだけであとのアイロンが楽になります。
重しができなければ、昔の人の知恵、少しずつ両手のひらではさんで、
パンパンと叩くだけでも違います。
このあとはハンガーにかけますが、ぜひ着物用ハンガーを使ってください。
肩と袖を一直線にすることで、袂というデカいものがついている袖の重みで
裄丈が変わったり、型崩れしたりを防ぎます。
棹にかけるときは、袖から袖まで棹を通して干してください。
ハンガーにかけたときと同じ形になるように。
着物の前を軽くあわせた形にして、自然な形のまま、衿のVのところを
洗濯ばさみでつまみます。
乾いたらゆっくりていねいにアイロンです。
よく「少し湿ってるときにとりこんでアイロン」といいますが、
それをする場合は厚地になっている、例えば棒衿などの場合や褄先のところとか、
湿ったままのことがあります。アイロンが終ったら必ずもうしばらく干して、
細かいところまでしっかり乾いたのを確認してからしまってください。
湿り気はカビのもとです。
いかがですか?なんかたいへーん…ですか?
でも、昔の人たちはタライと洗濯板だけでこれをして、
スチームアイロンなんてのもないままやっていたんです。
便利な道具はどんどん使って、それ以外は手をかけて…。
もし、思いのほか縮んでしまった…裏地が、或いは表が縮んでぶよぶよ。
このときはあきらめて解いてください。
さて、着物洗うだけでここまできちゃいました。
伸子張りだの板張りだの、そのお話しはまた続き、といたしましょう。
以前とんぼさんにメールで相談させていただいた真綿紬の八寸帯も結局洗ってしまいました^^; 止めたほうが良いと助言していただいたのにすみません。
やはりご指摘の通り、織り模様の部分はがっつり縮みました。(横幅で3cm近く)
仕立て上がりの状態で洗い仕付けをして洗えば、もう少しましだったかもしれません。
でも、アイロンと仕立て直しで見た目には気にならない程度に落ち着いてくれたので、結果的には洗って良かったと思っています。
洗濯の失敗談は他にもたーーーーくさんあるのですが、あまり長くなるのも申し訳ないので止めときます^^;
その節は本当にありがとうございました。
着物教授ですね。
正絹の生地は洗うのに叩くのが一番、生地と生地をこすり合わせるのが最低。
簡単に事故品となってしまいます。
縮緬の洗い張りに伸子を使う人など貴重品です。
洗い張りに使う張り木は蝶番の付いたものを使っておられますが、普通の染屋は付いていないものしか使わない様です。
蝶番付きの張り木が有るかどうか分かりませんが、ネットで売ってくれる染色材料屋があります。
三村商店(http://www.mimura-senryo.com/)は取引があるので我が工房の名前を使ってもらえばより親切に対応してくれると思います。
要るものが連絡下されば、ついでに買っておきますよ。
ありませんからね~
それに、頻繁に伸子張りをされておられる
からこそ分かる事なんですね。
ダメ元で洗った長襦袢も縮みましたし色落ち
もありました。着物までは怖くて洗えませんわ。伸子張りが出来るってうらやましい限り
です。
この氷山の下には・・・
どれだけの経験が隠されているのか・・・
テキスタイルマイスターを進呈します。
あららそうでしたか。
でも私思うんですけど、昔の人だって、
たとえば母だって、失敗はたくさんあったと。
なんでもいいから、一つずつでも
始めてみると、いろいろ見えてくるものも
あるとおもうんですよね。
これからもチャレンジ精神で!
おほめいただいて恐縮です。
絹は大切に扱えば、
ほんとによく答えてくれますね。
張り木、ご心配いただいて
ありがとうございます。
コメントいただいた「京の友禅やさん」の
ご紹介のHPで、先に手に入れることが
できました。
刷毛がほしいなと思っているのですが、
サイズなどまた、考えてみたいと思います。
その時は、よろしくお願い致します。
ありがとうございます。
伸子張りは、そんなに難しいことは
ないんですが、中腰でやると腰にきますー。
縮んじゃったじゅばん、どうしました?
洗いだけでよければ、伸子やりますよ。
ありがとうございます。
そりゃあもぉ…なんど失敗したことか。
いや、いまだにやってますがな。
予定では帯になるはずだったり、
予定ではうそつきになるはずだったり、
だったりだったり…なんですよー。
気に入っているから洗い張りに出そうかな?
共襟だけ洗って様子をみようかな?
そんな風に思っています
また読ませてくださいね
今は着物生活すると「メンテ」にお金がかかる時代ですね。
できることは自分で、という意識で、少しずつトライしていけば、
ウールの着物でも絹物でも、節約倹約は可能だと思います。
拙いブログですが、よろしくお願いします。