昔々は(えぇあたしの子供のころって程度ざんす)、女は三が日おやすみ。
台所に入るのは男だけ、包丁やはさみなど、刃物は一切使わない、
掃除や雑巾がけもナシ…というのが、京都のいなかから、母が伝えた「お正月」でした。
年末のうちに、三が日のお雑煮用の野菜や、おせちやお餅など、カットしたり、湯通ししたりの
下準備を全部すませ、元旦から三日はその家の男性(父親、もしくは跡継ぎ)が主になって、
ガスレンジの前に立ち(昔はかまどに火を起こし…です)、台所仕事をしました。
我が家では、私が嫁に行く前は、父が「嬉々」としてやっておりましたっけ。
刃物を使いませんから、当然針仕事もお休み。それでもたとえば私がはしゃいで
着物の袖つけなど、ほつれさせてしまったりすると…おまじないの登場でした。
私に手をちょっとひろげさせて「脱いだ・脱いだ・脱いだ」と三回言え…と。母も一緒に言いました。
これで脱いだことになる…ですね。実はこれ調べてみたことがあります。
丁寧になると縫いながら
「弘法は 旅の衣に急がれて、着せて縫うのも目出度かりけり」と、ずっとブツブツ唱え続ける。
コレに類した「長いおまじないの歌」は、ほかにもあるようです。
要するに「忙しいので着たままです。忙しいのはありがたいことなのでめでたいとさせてください」ですね。
着たまま針を通すことについては「仏事」からくることと、実際相手に針やはさみを向けることですから、
事故のないように、それと外でそんなことをするのは元々だらしないから…というような、
いろんな意味があるようです。私はやはり、すぐそばに手や顔があるのに針、はさみを使うのが怖いから、
忌み嫌ったのではないかと思いますが…。
いずれにしても、三が日は「刺すとか切る」はいけないと「針・刃物」を使わずに子供時代をすごしました。
今なんか、元旦からおしんこ切ったりしてますけどね。
キモチだけは、忘れないで「神さん、忙しいしすんまへんなぁ」といいながらやってます。
掃除も同じで、母は「正月三が日は家の中じゅうに神さんがいてはる。
はたきかけたり、箒ではいたら、神さんを追い立ててしまう」といって、掃除はナシ。
何かこぼしたなんてときは「すんまへん、神さん、ちょいと、どいとくりゃっしゃ(どいてくださいまし)」と、
ブブツブツ唱えながらはいてました。後年「掃除機じゃ神さん、吸い取っちまうなぁ」といって、
「こんのバチあたりがぁ」と叱られましたっけ。
さてさて、話しが思い切りそれまくったところで…三が日もすぎたので、
針箱もはさみも再登場(いつも同じところに出しっ放しですが)。
思い立って、古い羽織の袖をはずしました。
トップ写真の羽織です。いただきものですが、丈も短く色もジミ、残念ながらヤケがあります。
こんなに薄い色ですから目立たないのですが、近づくと肩先など色変わりが分かります。
羽織としてはなぁ、でも染め直すほどでもないし…売るにも売りにくいなぁ…で、
袖をはずして、ひっかけるものにすることにしました。つまり「袖なし羽織り」…。
ほんとに袖をとっただけ…針仕事なんていうのが恥ずかしいくらいのものですが…。
はずしてみるとこんな感じ…。この糸くずを全部とって、縫い合わせるだけです。
マチも取って細身にするかと思ったのですが、自分の胴の太さを思い出しまして「このまんまでいいや」…。
コツとして…そのまんまくせのついた折り線でくっつけてもいいのですが、
あまり突合せだと、裏地が表に出てしまうことがあります。
「縫い合わせ」といっても、実際には表地に裏地を少し控えてまつりつける…です。
丁寧にするなら、裏地だけ一度アイロンで折り線を消して、2~3ミリ控えて
新たに折り線をつけるといいです。
私はもちろん手抜きで、ちょっとずつ指で下に引っ込めながらのごまかし縫い…。
で、こんな感じ。
それと、生地の厚さの違うもの同士を縫い合わせるときは、きをつけないと少しずつ横にズレます。
面倒でもしつけで止めるか、待ち針で何箇所か止めて、その待ち針の間でたぶりを調節しながら
縫い合わせると、ズレやゆがみがでません。
あとは家の中ではおるものですから、紐が面倒ならとってしまって、
乳の位置に大きなボタンをつけて、太いカラーゴムなどを引っ掛けるようなかんじにしてもいいと思います。
とりあえず、お福ちゃんに試着してもらいました。着物はやわやわウールに半幅です。
なんか時代劇にこんなの着たおばあちゃん、でできますねぇ。
うしろはこんな感じ。あらら傘まで写ってました。
洋服の上に着たときは、抜いた衿や帯結び分とられませんから、もっと平らに着られますね。
はんてんやひっぱりのような袖がない分、水仕事も服の袖まくりあげるだけ…。
針仕事というにはお粗末ですが、一応コトハジメの気分で針を持ちました。
今年はもう少し縫うことをしたいなぁと思っています。
強制していましたわ。最近はそういう事も
無いのでうっかりしてましたけど。
早々に初仕事スゴイ!
おしゃれでいいですねぇ。
私も裄の合わない羽織、真似しようかな。
なにはともあれ・・・
今年もよろしくお願いいたします。
三が日に男が台所に入るというのは、初めて聞きました。
関東では、三が日は火を使わないというのはありますけど、女性は15日の女正月でやっとゆっくり休むというようでした。
袖なし羽織。
名和好子さんの本で見るくらいでしたが、すっきりと良い物ですねぇ。
羽織も良いですけど、下に着せ付けてらっしゃる縞が~!!
っと、また涎たらして見ています。
意味も分からずやってましたね。
今でももしそんなときがあったら
やるでしょうね。
針仕事は、やっててほっとします。
結構よかったですよ。
ちょっといいものなら、普段の外出にも
いいんじゃないかなって思いました。
いえいえこちらこそ、なんだかあちこちで
書いたんだか書かないんだか…です。
今年もよろしくお願いいたします。
三が日の習慣は、母の実家では、
うちよりも長くやってたみたいです。
女にとってはありがたいですね。
今こそやってほしい???
袖なし羽織り、春先なんかいいんじゃないかなと
思いました。
この縞のウールは、着物用反物ではないので
ほんっとにヘナヘナのヤワヤワ…。
ラクといえばラクなんですが、
縞なのに、なーんかシマりのない着物です。
ちなみに横浜から京都へ引っ越しました。
あぁすみません。この記事だけではそうとれますね。
最初に「昔々」「母が」と書きました通り、
母の実家の昔のお話です。
私の母は、京都のはずれ、長岡京市で生まれて育った
農家の娘でしたので…。私が高校くらいまで、
あたり一面たんぼでしたから。
それに、私の年代かもしれませんが、
実家のことをいなかって表現することあります。
決して「田舎」という言葉を蔑視表現として
使っているわけではありません。あしからず…です。