本は「木綿古裂」、「太陽」の別冊です。
「太陽」は高いので、もっぱら古本しか買いませんが、少々角が折れていようと、
表紙がうっすら汚れていようと、中がちゃんと見られりゃ、オッケでざます。
骨董をたのしむ (12) (別冊太陽) 木綿古裂 | |
クリエーター情報なし | |
平凡社 |
この本の何が見たかったか…いやもう開けてみたら、そりゃため息の出るような
木綿のオン・パレード、よかったぁぁと思ったのですが、元々見たかったのは、表紙の中でも「ここ」。
火消し装束です。もし、もしも、もしもしもしも、ですが、いいものに出会えたら、
一枚でいいから「ホシヒ」と思っているものです。
火事とけんかは江戸の華なんてぇことを申しますが(なぜか講談口調)、
実際、江戸時代、火事は多かったわけです。元々海岸沿いで風が強いし、いまみたいなビルはありませんし、
家は全て木造だし…一旦火が出ると、あっというまに燃え広がりました。
ここが西洋の「石文化」とは違うところ…。なので、江戸城が築城されて以来「火事」については、
将軍様もいろいろお考えアソバサレましたが、ほとんどが「身内仕様」の計画ばかり。
つまり「武家株式会社 大名火消し部」を作ったわけです。
元々は火事が起きると「奉書火消し」と言って、まずは「火事だから出勤してらっしゃい」という、
お手紙を出して呼ぶ…火事、消えてまいますがな…。
でまぁいろいろあれこれ考えてやったわけですが、結局「町火消し」が出来たのは、
大岡越前サマのおかげですが、すでに幕府できてから100年経過…です。
とりあえず、これで町場の火事は、町場で消す作業が出来るようになったわけです。
で、この写真の衣装は、その火消しさんたちが着た衣装です。
元々「火消し」という職業ではなく、日ごろは「鳶職」などをしていて、いざというとき駆けつけるわけです。
仕事柄、身が軽く、高いところも大丈夫だし、家のつくりなども熟知していたからですね。
彼らが現場に赴くときに来たのが、この「火消し半天」で、
袷の綿入れに、細かく細かく刺し子をして仕上げたもの。
たいへん手間がかかります。また、男伊達を誇る仕事、という独特のスタンスを持っていましたから、
半天の表側は、それぞれの「組」のユニフォーム柄ですが、裏側には、勇壮な柄を染めたものを使いました。
写真手前の半天も裏側が見せてあります。
最近の祭り半天は短いですが、火消し半天は、身を守るものですから少し長め。
下には同じく刺し子を施した胴着股引きをつけ、刺し子の手甲脚絆、それに今の防災頭巾みたいな帽子。
これを水につけてから着る…さぶっ!だいじょぶ、火のあるところに行くんだから…ソレハチガウ…。
とりあえず、時代劇で見るように、普通の半天のまま、鉢巻で纏を振る…なんてのは、無理です。
「纏」は、それを持った人が火事場の風下にまわり、状態を見て「ここまでで消す」といういわば「宣言」。
昔は破壊消防ですから、纏持ちがあがっている屋根の家に火が到達する前に、
手前の家を壊して、延焼を食い止めるわけです。
火が消えたところが「消し口」といわれ、纏を立てた家より手前であればあるほど「よくやった」になるし、
纏より先まで燃えちゃったら「組の恥」になるわけですね。
わざわざ風下に立つわけですし、一度あがると親方から「降りてよし」といわれるまで降りられませんから、
ボケた親方が采配を間違えば、焼死することもあるわけです。
だから命がけの仕事で、粋でいなせといわれたわけですね。
さて、ちょっと戻って「武士の火消し時代」、どういうわけか火事場装束というのはハデ。
大名たちが、火事だからおいでと駆けつけるときに、やたら華やかに着飾る…。
まぁねぇ、戦もなくなって、お城じゃ堅苦しいユニフォームで…となれば、そんなときはハデにと、
そんな考えだったんですかね。余りの派手さに「ええかげんにせぇ」と、お達しが出たとか。
ただ、女性には、派手なものを着せました。これは当然「火消し装束」ではなく「火事場装束」、
女性というのは、当然身分の高い奥方や姫様です。華やかな刺繍を施したり、金糸銀糸で飾ったり。
それは、火事場の混乱の中、そういうものは目立ったし、とりあえず「高貴な女性」の証明になったからですね。
昔、NHKで「赤頭巾快刀乱麻」という時代劇があり、野村宏伸主演で、荒唐無稽な物語がありました。
いわゆる「変身ヒーローもの」で、日ごろ気弱で頼りない主人公が、悪を退治するときに、
赤い頭巾をかぶると、とたんに強くなる…というもの。
この「赤い頭巾」が「姫君の火事場装束」の頭巾でした。きれいでしてねぇ。
物語はなにひとつ覚えていませんが、この頭巾は覚えています。こんなもんさね。
難燃性繊維だの、不燃性衣服だのがなかった時代、庶民の知恵で燃えにくく、倒れてくる材木や、
落ちてくる瓦などからも身を守るために、考え出された衣装です。
ちょっと離れたら、ただの点々柄に見えるほどの細かい細かい針目。
作った人はきっと、それを着て危険な場所に赴く人の無事を祈りながら、
一針一針、縫い上げたのでしょう。水を含んでずっしり重くなった冷たい衣装を身に着けて、
火事場に向かう男たちの心意気は…はい、今でもそういう男性はいるものと、信じております。
先日70年ぶりに建替えたという消防署の見学会に行きました。
署長室だけが木造りでしたが質実剛健で、機能一辺倒で建物まで頼もしく感じました。
仮眠室も想像していたより沢山のベッドが並び、
火事だ!! それっ、ポールをスルスル・・・ではなく、階段ダダダ・・・だそうですw
今は火事だけではなく、化学薬品の事故や事件現場に出動なんてのもありますので、更に危険な仕事ですね。
昔使っていた半鐘と、ミニチュアの纏が飾ってありましたよ。
半纏もあったら良かったのにw
四谷の消防博物館にあるでしょうか、実物が見たいです。
質実剛健…いいですねぇ。
よく二時間ドラマで消防官や救急隊が主役のものをやりますが、
アレで見ていても、不祥事なんて起こらない感じがします。
四谷の消防博物館、私はHPしかみたことありませんが、
江戸と近代(明治以降)の展示があって、
こういう半天と、「武家のドハデ」、どちらも展示がありますよ。
近くの雑貨を扱うお店に以前飾ってありました。
思わず目が釘づけ!
素晴らしいものですね。
火消しのお話も興味深く読ませていただきました。女性の「火事場装束」ー初めて知りました。
どんな衣装なのでしょうか興味深々です。
茅葺屋根だったので、類焼する可能性大で
母が一張羅の洋服を着て教科書を詰めた
ランドセルを背負うように言われた事を思い
出します。
一瞬で燃えつくす火事は、今も昔も変わらず
恐ろしいですね。
重そうですけどねぇ。アレで水を含んだら…。
私なら火事場へ駆けつける前に3歩で倒れますわ。
「赤頭巾快刀乱麻」、写真がなかなか見つかりませんで。
やっと「テーマ曲」を見つけました。
静止画、しかもボケボケですが。
頭巾、ハデでしょ。火事場のゴタゴタの中で、
奥方様やお姫様を守ったり見つけ出したりする
目印だったのですと。着物はどんなだったんでしょう。
まさか刺し子じゃ動けないと思うし…。
http://www.youtube.com/watch?v=mo3RwL6WLCk
怖い経験ですね!燃えなくてよかったです。
私も結婚して最初のアパートで、裏の家のボヤを経験しました。
置いてあったゴミみたいなものと、ほんの3メートルくらい、
壁がこげただけだったんですが、あんな大きな炎を
見たことがなかったので、とても怖かったです。
足が震えましたが、ちゃんと119番は出来ました。
すでに誰かが通報したあとだったんですけどね。