写真は以前アップの「お召し」です。
先日、妙な「ヤフオク出品」を見ました。
「塩沢結城」の着物で、確かに着物と同じ生地の反端部分がついており、「塩沢」証紙が貼ってあります。
その上になぜか「結城紬の証紙」、これは生地はなく「紙だけ」状態。
「塩沢結城」「新品を買った」…と説明はあるのですが…。
勘違いやら思い込みがあるようで…。なんで結城の証紙までのせてあるのか…。
単純に考えるに「塩沢結城」だから、どっちもの証紙を付けとけば間違いない???
まず、塩沢結城は、単に呼び方であって「塩沢で結城紬を織っている」わけではありません。
また「塩沢結城」というものは「塩沢お召し」とよばれるものです。
では塩沢お召しとはなんなのか…。まず「塩沢」ですが、「本塩沢」と「塩沢」は違います。
今「きものばなし」で、糸のことを書いているのですが、
通常紬は「紬糸」を使います。「本塩沢」は強撚糸を使います。
強撚糸は「ちりめん、お召し」に使われる糸で、紬にはまず使いません。
本塩沢は、この強撚糸を使うため「塩沢お召し」とよばれるわけです。
塩沢紬は、普通の紬糸で織られたものです。但し、どちらも塩沢のものですから、
証紙には「本塩沢・塩沢紬」の名前が入っています。ややこしいですよね。
元々「塩沢」というのは、地域の呼び方で「塩沢市」はありません。
塩沢の織物としては「本塩沢」「塩沢」それに「越後上布」も塩沢の織物です。
というより、元々麻主流だった暮らしですから、塩沢は越後上布に
様々学んだといわれています。
「証紙」というものが使われ始めたのは、当然近代に入ってからです。
商標とか特許とか著作権とか…個人(団体)の権利を守るためにできたものですが、
どうかすると黄門様の印籠みたいに思われています。
でも証紙というのは「お国」が発行するものではありませんし、国の保証もありません。
例えば「大島」で言うなら、大島紬を復活させてがんばってきた組合が、
「ほかにまがいものを作らせないため、また大島紬の水準や品質を守るため」に、
「大島紬はこういうものである」と、定義づけをして、これを守って作られたものにだけ
証紙をつけてもよい、としたものです。
大島の証紙といえは「地球印」「旗印」ですが、実はほかにもまだあります。
それは地域が違い、その地域独自で組合を作ってきめているからで、証紙がついていればどれも全部ホンモノ。
その「ホンモノ加減」は、作り手の誇りと努力で守られているわけです。
これに上乗せするのが「行政」の「伝統工芸品」のシールと「無形文化財」のお墨付きです。
伝統工芸品のマークは皆様もご存知と思いますが、このマーク。
これの基準は
1 主に日常生活で使われるもの。
2 製造工程の全て、あるいは主要な部分が「手作り」であること。
3 伝統的技術・技法によるものであること。
4 原則として伝統的に使用され続けている原材料であること。
5 その地域で「地域産業」として成立定着していること。
です。
また「無形文化財」にも「こうであること」という基準があり、それを満たした個人または団体に
「認定」がおりるわけで、証紙の並びに「重要無形文化財指定」なんて字がはいってます。
証紙というのは「その反物の戸籍」みたいなものですから、例えば大島の場合、
ただ「地球だ」「旗だ」ではなく、その地色はナニで染まっているか、手織りか機械織りか、
そういうことも見れば分かるようになっているわけです。
以前にも書いておりますが、大島紬の定義の中には「奄美大島か鹿児島で作られたもの」とは
一言もかいてありません。そのかわりに「地球」とか「旗」とかついているわけです。
今、韓国大島というのがありますが、泥染め以外は、定義どおりに織る技術があるわけです。(機械織りですが)
だから「韓国」で織られていても、定義どおりなら「大島紬」で間違いないのです。
地球も旗もついてなくとも、手間賃の安い韓国産のほうが当然安いです。
私たちは「証紙がついている」というと「ほんものの証明」「高価であることの証明」
みたいに思っていますけれど、例えば組合に入っていても、その証紙をつけないとか、
最初から別の小さい組合だから、世に知られている証紙とは違うとか、
更には「組合」だの「保存会」だのといろんなところがそれぞれに出すから、似たようなものがいろいろあるとか…。
実はけっこう厄介なのです。
証紙をひとつの指針とするならば、何が何を意味しているのかを知らないと、
なんかそれらしいのがついてた、で、まちがった買い物をするかもしれません。
こういう知識は、私の母親のころまでは、周りに着物がありましたから、
ほんものにせものの違いも分かったし、呉服屋さんも「ほんものでっせ」とみせるから、
目にすることもあったわけです。
着物の知識が断絶した今、ついているだけで「証紙つき」にまどわされたりするんですね。
品物の全く違う、証紙二枚つきの出品者を見て、どうなるのかねぇ…と思った私です。
ダメなんだとつくづく思います。
証紙も貼ってある意味や見方が分かってないと
なんにもならない気がします。
・・・って言いながら、ほとんど分かっておりませんが。
呉服屋さんも良心的なとこで、お店の人もちゃんと判断できるとこ、、というとほんとに探すのが大変な気がします。
ヤフオクといえば、「しつけがついてるから未着用」ってよく見ますけど、見ると「それは仕立てるときのしつけじゃなくて、洗濯するとき布がずれないようにするしつけ(衿なんかだけの)の写真があったりします。
クリーニングでもたもとにしつけをしてくれるとこがあって、それは丁寧にしつけてあってわかりにくいですね。
実際に見れば、布の感じからも判断できるんですが。
頭の中で、方向感覚がちぃとねじれるんですが、「むっつかしいことはわかりませ~ん」と回路が落ちてしまいます。
ま、どうせ買えないからいいですけど。。。。。
昔は作り手も売り手も「誠実」であることが当然で、
震洋というものを大切にしたものです。
こっちが知らなくても無効がちゃんと見てくれる。
今は売れればなんでもだし、ついでのことに、
呉服屋さんがちゃんと知らない場合もあります。
着物の世界はどんどん壊れていくようで…。
おっしゃるとおりの「しつけ」もありますし、
全部ちゃんとしつけがついていても、
仕立て直しの「未使用」かもしれません。
そういうリスクを考えられないまま
新品だと思って買ったり…なんてことも、
たくさんあるんじゃないかと思います。
わかっていて買うならいいんですけどね。
古着が出るのは、着物好きにとってはありがたいですが、
情報と選択がうまくいかないとなぁと思います。
あれ、ほんとに困りますよね。
なんでも「結城」とつく…。
プロは「呉服屋がそういうことを言うから、
まがい物が出回る、って言ってます。
小千谷結城、塩沢結城、そのほかにもおしりに
「結城」とつければ売れる…。
こまったものです。