ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

証紙

2010-11-19 00:26:22 | 着物・古布

 

写真は以前アップの「お召し」です。

 

先日、妙な「ヤフオク出品」を見ました。

「塩沢結城」の着物で、確かに着物と同じ生地の反端部分がついており、「塩沢」証紙が貼ってあります。

その上になぜか「結城紬の証紙」、これは生地はなく「紙だけ」状態。

「塩沢結城」「新品を買った」…と説明はあるのですが…。

勘違いやら思い込みがあるようで…。なんで結城の証紙までのせてあるのか…。

 

単純に考えるに「塩沢結城」だから、どっちもの証紙を付けとけば間違いない???

まず、塩沢結城は、単に呼び方であって「塩沢で結城紬を織っている」わけではありません。

また「塩沢結城」というものは「塩沢お召し」とよばれるものです。

では塩沢お召しとはなんなのか…。まず「塩沢」ですが、「本塩沢」と「塩沢」は違います。

今「きものばなし」で、糸のことを書いているのですが、

通常紬は「紬糸」を使います。「本塩沢」は強撚糸を使います。

強撚糸は「ちりめん、お召し」に使われる糸で、紬にはまず使いません。

本塩沢は、この強撚糸を使うため「塩沢お召し」とよばれるわけです。

塩沢紬は、普通の紬糸で織られたものです。但し、どちらも塩沢のものですから、

証紙には「本塩沢・塩沢紬」の名前が入っています。ややこしいですよね。

元々「塩沢」というのは、地域の呼び方で「塩沢市」はありません。

塩沢の織物としては「本塩沢」「塩沢」それに「越後上布」も塩沢の織物です。

というより、元々麻主流だった暮らしですから、塩沢は越後上布に

様々学んだといわれています。

 

「証紙」というものが使われ始めたのは、当然近代に入ってからです。

商標とか特許とか著作権とか…個人(団体)の権利を守るためにできたものですが、

どうかすると黄門様の印籠みたいに思われています。

でも証紙というのは「お国」が発行するものではありませんし、国の保証もありません。

例えば「大島」で言うなら、大島紬を復活させてがんばってきた組合が、

「ほかにまがいものを作らせないため、また大島紬の水準や品質を守るため」に、

「大島紬はこういうものである」と、定義づけをして、これを守って作られたものにだけ

証紙をつけてもよい、としたものです。

大島の証紙といえは「地球印」「旗印」ですが、実はほかにもまだあります。

それは地域が違い、その地域独自で組合を作ってきめているからで、証紙がついていればどれも全部ホンモノ。

その「ホンモノ加減」は、作り手の誇りと努力で守られているわけです。

 

これに上乗せするのが「行政」の「伝統工芸品」のシールと「無形文化財」のお墨付きです。

伝統工芸品のマークは皆様もご存知と思いますが、このマーク。

 

                      

 

これの基準は

1 主に日常生活で使われるもの。

2 製造工程の全て、あるいは主要な部分が「手作り」であること。

3 伝統的技術・技法によるものであること。

4 原則として伝統的に使用され続けている原材料であること。

5 その地域で「地域産業」として成立定着していること。

です。

また「無形文化財」にも「こうであること」という基準があり、それを満たした個人または団体に

「認定」がおりるわけで、証紙の並びに「重要無形文化財指定」なんて字がはいってます。

証紙というのは「その反物の戸籍」みたいなものですから、例えば大島の場合、

ただ「地球だ」「旗だ」ではなく、その地色はナニで染まっているか、手織りか機械織りか、

そういうことも見れば分かるようになっているわけです。

以前にも書いておりますが、大島紬の定義の中には「奄美大島か鹿児島で作られたもの」とは

一言もかいてありません。そのかわりに「地球」とか「旗」とかついているわけです。

今、韓国大島というのがありますが、泥染め以外は、定義どおりに織る技術があるわけです。(機械織りですが)

だから「韓国」で織られていても、定義どおりなら「大島紬」で間違いないのです。

地球も旗もついてなくとも、手間賃の安い韓国産のほうが当然安いです。

 

私たちは「証紙がついている」というと「ほんものの証明」「高価であることの証明」

みたいに思っていますけれど、例えば組合に入っていても、その証紙をつけないとか、

最初から別の小さい組合だから、世に知られている証紙とは違うとか、

更には「組合」だの「保存会」だのといろんなところがそれぞれに出すから、似たようなものがいろいろあるとか…。

実はけっこう厄介なのです。

 

証紙をひとつの指針とするならば、何が何を意味しているのかを知らないと、

なんかそれらしいのがついてた、で、まちがった買い物をするかもしれません。

 

こういう知識は、私の母親のころまでは、周りに着物がありましたから、

ほんものにせものの違いも分かったし、呉服屋さんも「ほんものでっせ」とみせるから、

目にすることもあったわけです。

着物の知識が断絶した今、ついているだけで「証紙つき」にまどわされたりするんですね。

品物の全く違う、証紙二枚つきの出品者を見て、どうなるのかねぇ…と思った私です。

 

 

 

 

 


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6 コメント

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Unknown (陽花)
2010-11-19 10:41:03
生地は数多く見て触れて眼を肥やさなければ
ダメなんだとつくづく思います。
証紙も貼ってある意味や見方が分かってないと
なんにもならない気がします。
・・・って言いながら、ほとんど分かっておりませんが。
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Unknown (さえ)
2010-11-19 13:12:12
物を見る目って百の知識を覚えるより、本物にどれだけ触れる機会があるか、で決まりますよね。
呉服屋さんも良心的なとこで、お店の人もちゃんと判断できるとこ、、というとほんとに探すのが大変な気がします。
ヤフオクといえば、「しつけがついてるから未着用」ってよく見ますけど、見ると「それは仕立てるときのしつけじゃなくて、洗濯するとき布がずれないようにするしつけ(衿なんかだけの)の写真があったりします。
クリーニングでもたもとにしつけをしてくれるとこがあって、それは丁寧にしつけてあってわかりにくいですね。
実際に見れば、布の感じからも判断できるんですが。
返信する
小千谷の結城 (Suzuka)
2010-11-19 14:41:48
というのをよく見かけます。
頭の中で、方向感覚がちぃとねじれるんですが、「むっつかしいことはわかりませ~ん」と回路が落ちてしまいます。

ま、どうせ買えないからいいですけど。。。。。
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Unknown (とんぼ)
2010-11-20 00:14:03
陽花様

昔は作り手も売り手も「誠実」であることが当然で、
震洋というものを大切にしたものです。
こっちが知らなくても無効がちゃんと見てくれる。
今は売れればなんでもだし、ついでのことに、
呉服屋さんがちゃんと知らない場合もあります。
着物の世界はどんどん壊れていくようで…。
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Unknown (とんぼ)
2010-11-20 00:18:08
さえ様

おっしゃるとおりの「しつけ」もありますし、
全部ちゃんとしつけがついていても、
仕立て直しの「未使用」かもしれません。
そういうリスクを考えられないまま
新品だと思って買ったり…なんてことも、
たくさんあるんじゃないかと思います。
わかっていて買うならいいんですけどね。

古着が出るのは、着物好きにとってはありがたいですが、
情報と選択がうまくいかないとなぁと思います。
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-11-20 00:22:58
Suzuka様

あれ、ほんとに困りますよね。
なんでも「結城」とつく…。
プロは「呉服屋がそういうことを言うから、
まがい物が出回る、って言ってます。
小千谷結城、塩沢結城、そのほかにもおしりに
「結城」とつければ売れる…。
こまったものです。
返信する

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