![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/41/5a6c81ac70143d95cd20979fd50d947e.jpg)
組合せなどのお話をもう少し続けるつもりでしたが、
昨日「中村ダン之助」様の過去ブログで「帆布でバッグ」・・・
と言う記事を拝読いたしまして、帆布といえばウチには「酒袋」が、
と思い出しまして・・急遽酒袋のお話を・・・。
以前にもちょっと書いたことがありますが、すみませーん。
酒袋は昨今は手工芸の材料として、人気のある素材です。
「酒布」と呼ばれますが、江戸時代から戦前くらいまで、
濁り酒(どぶろく)を清酒にするために使われた漉し袋のことです。
これにもろみを入れて絞ったわけですが、
元々丈夫な厚手木綿で作り、更に「柿渋」を塗って補強しました。
柿渋と言うのは柿の中に含まれる「タンニン」という成分。
あの「渋柿」の「しぶ」です。熟してしまうと渋が減ってしまうので、
柿渋用に栽培された柿は、まだ青くて固いうちに収穫され、
粉々に砕いてドロドロにし、そのあと年月をかけて発酵させます。
発酵したものは茶色になり、発酵年月が長いほど色が濃くなります。
この柿渋は耐水性がありますから、江戸時代は「和紙」に塗りこめて、
傘や合羽に使われました。染物の型紙などにも使われています。
「伊勢型」などの型紙、いい色をしていますね。
酒袋、酒布は同時期に使われたものでも、一枚ずつ微妙に色も違い、
また作るお酒の種類やお酒を造るときの条件などによって、色が変わるそうです。
そして、昔の人のことですから、破れたころは繕って繕って、
大事に使っておりました。杜氏(とうじ)にとって、大切なものだったんですね。
戦後、造酒も機械化が進み、この「袋に入れて絞る」という作業も、
機械で「圧搾」するようになってしまいましたので、
この「酒袋」を使って清酒を造るところは、ずいぶん減っているそうです。
使っていても最近は耐久性・耐水性に優れた「化繊」になってしまったそうで。
確かに化繊は丈夫ですが、何回使っても真っ白の袋って・・味気ないなぁ。
この違いがお酒の味に関わってくるのかどうかは、下戸の私にはわかりません。
酒布は一枚一枚微妙に色やかすれ具合が違います。大雑把に分けると
「こげ茶系」「茶系」「薄茶系」です。
どれも必ずといっていいほど補修跡があり、太い木綿糸で、
丹念にツギアテや裏打ち、刺し子などがしてあります。こんな感じ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/96/16f6e9f9e5d39399235e8fa7e3c66a1d.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/e3/8a718d31abd4ddea0b5ca277422d2219.jpg)
いいところを切り取って使うことになりますので、
毛皮と同じで「ロス」が出ます。元々が手芸材料として作られたものではないし、
作り酒屋でこれを使うことがない今となっては、絶対数の少ないものであり、
これからは出てこない、そういうことから、酒布はたいへん高価になっています。
今「酒布バッグ」などとして売られているものの中には「もどき」が
けっこうあります。つまり普通の帆布を酒布風にまだらをつけて染めたものです。
こちらが母からもらった「もどきバッグ」写真ではわかりづらいですが、
手にとってみると、酒布風であることがわかります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/83/77a4e351e20728cfb5c01381b66dd1cd.jpg)
酒布は袋のものと、一枚の布を半分に折って袋にしたものがありますが、
どちらにしても広げても50~60センチくらいの幅しかありません。
縦にとっても1メートルくらいです。つまりこれ以上大きい布は
まずとれない・・というわけですから、酒布地のコートなどと称して、
長く幅広くとってあるようなものは「酒布風染め」ということになりますね。
酒布で作った大きいものは、パッチワークが基本・・です。
こういうものである上、縫うのも一仕事、工業用ミシンでも使わないと、
すぐに針が折れたり曲がったり・・。細かい細工部分などは手縫いしますが、
ゆかたを3~4枚重ねて縫っているような按配で、畳屋のごとく、
上から刺して下へ抜き、下から刺して上へ抜き・・なんてこともあります。
こんな風に手間もかかりますので、革製品並みの価格になってしまいます。
下は久留米絣の工房で扱っている「酒布バッグ」のページです。
http://www.kobo-akino.com/shop_b.html
高価ですが、そのかわりたいへん丈夫です。
写真は私のメガネケースですが、もう10年くらいになるでしょうか、
口金近くの「本皮」部分のほうがすっかり擦れて、
こげ茶が白くなっています。こんなになっていても、
酒布部分は、いつも手で持っていた部分が汚れただけ。たいしたものです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/58/af/a05033837aac8b2da30767e17c4b8576.jpg)
実は3年ほど前に、ある酒造が店を閉めることになり、
そこを整理した業者によって、この酒袋が大量にオークションに出されました。
私の手持ちの酒布は、そのとき落札したものです。
いずれはいろいろ作ろうと思っているのですが、
なかなかそうもいきませんので、袋のままの販売もしようと思っております。
ご入用のかた、お便り欄からどうぞ。
酒袋で作ったバックは良く見かけますが
本当にお高いものですね。
やはり、丈夫だし何とも言えないいい色
ですものね。
でも、酒袋がそんなに堅くて縫いづらい
ものだとは思いませんでした。
私の生活圏には、灘という酒どころがあり、丹波杜氏という職能集団や、山田錦という酒米等、酒には縁の深いものがたくさんあるのですが、そういった事物よりも、出来上がった製品の方に目が行ってしまうというのが情けないというか、いじましいですね。
色が濃くなるほど、柿渋を何度も塗っているので
固いんですよ。ジーンズ用の糸など使わないと
細い糸だと、そのときは縫えても
時間がたつと、縫い糸のほうが持たないんです。
味のあるいい色ですけどねぇ。
ヒロをぢ様
丹波の杜氏さんたちは、よいお酒を作るために、
また毎年シゴトに呼んでもらえるように、
酒つくりのない夏の間に「酒袋」の修理や
手入れのため、汗を流したそうです。
そういう努力の結果が、おいしいお酒になるのですね
よい米を作る人、よい道具を作る人、
その米や道具を大切に丁寧に使う人、
それがあっての名酒・・・なのですね。
下戸であることをちょっと哀しいと思う私です。
でも・・じんましんは耐え難いんですー・・。
京都旅行の際に酒袋で作った財布と名刺入れを買いました。
何故か味わいを感じる品だったので当時の私にとって高くて躊躇したのですが、入手しました。
30年以上前の話です。
でもその生地はごわつき感はあるものの、もう少し粗目の感じがします。
日本酒(大)好きな私です。
こちらこそ、おひさしぶりでーす。
もう少し粗めのものもありますね。
色が濃くても薄くても、味わいのあるものですよね。
お酒を飲みながら「これで作られたんだ」・・
なんてしみじみ眺めたり??
コメントありがとうございます。
この記事から7年経っておりまして、その間にかなりお譲りしましたので、数はかなり減っております。
それと、コートなどをおつくりになるなら、厚さとか、手触りとかも、
いろいろ選ぶ基準がおありになるかと思います。
詳細をお聞かせいただければ、ご使用いただけるものがあるかどうか、調べます。
ご連絡させていただきたいのですが、方法がありませんので、
恐れ入りますが、右メニューの上の方「とんぼへお便り」から、ご一報ください。
よろしくお願い致します。