ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

留袖なんですが・・

2005-12-05 02:05:49 | 着物・古布

画像が小さいと、なんか動物の顔に見えますね・・ブキミ?
これは、大正時代の留袖です。よぉく見ていただくとわかりますが、
動物の顔ではなくて「宝船」の図です。手前の船に「宝物」が載っています。
その向こうにもう一艘。左右対称なので、4艘の船があります。
当然、共八掛ですから、内側にも同じ柄があります。
上の方には老松、近くで見ると梅があり、根元の更に下には竹(笹)、
手前の波の前は菊の花です。いわゆる「吉祥文様」です。

先に柄のお話しを致しましょう。
船に載っている「宝物」は、それだけを並べて「宝尽くし」という模様としても
よく使われます。「宝尽くし」というのは、おめでたい柄の中でも
留袖等の婚礼関係だけでなく、子供の着物や羽裏などにもよく使わるもようです。



ちょっとわかりにくいんですが、私の扇子です。これが「宝尽くし」柄。
グリーンの柄は、アクセントの「葉」です。
左から「巾着」、その横の棒のようなものは「鍵」斜め上が「打出の小槌」
その右の水色が「分銅」右下が「七宝」、一番右が「丁子」です。
「宝尽くし」の宝というのは、例えば中国の思想だの仏教の世界だのと
いろいろと交差する部分があって、この5個、とかこの7個とかいえません。
その時代や作者(染師とか)や、誂える人によって、ひとつだけを取り出したり
いくつも組み合わせたりします。

日本の柄でよく使われる宝物の柄としては、上に出ているもののほかに
「隠れ蓑」「隠れ笠」「巻物」「宝珠」などがあります。
宝物というと「金銀サンゴ・・」とか「宝石」などを考えますが、
この柄の場合の「宝」とは「縁起」ということが優先です。
たとえば「鍵」、鍵がなんで宝かというと、この鍵は蔵の鍵です。
蔵の鍵というのは「錠前と鍵」という一対ではなく、用心のため
扉の内側に細工をし、この棒のような鍵をさしこんでその細工をはずしました。
よく雨戸の下についている細い棒のようなものを「こざる」といいますが、
蔵の「細工」はこのこざるの大きなものです。錠前がありませんから、
というより蔵の扉全体が錠前みたいなものですね、だから外から破られにくかった
というわけです。つまり、この鍵は「こういう鍵を使うような大きな蔵を
もてるように」という意味と「しっかりとした守り」という意味でしょう。
広く考えれば「人間関係」までもあるのかもしれません。信頼できる人との
交わりがありますようにとか、信頼される人間になりますように、とか。
考えすぎかな??「分銅」は、昔は金や銀を計るのに使われましたから、
やはりそういうものに恵まれる、ということでしょうね。
「丁子」はあの香辛料の「丁子」です。洋名「クローブ」ですね。
正倉院にも残っているそうですから、ずいぶん古くから渡来していたわけです。
香りもよいし、薬にもなる・・ということでたいへん貴重なものとされたため
「宝」のひとつに加えられたのでしょう。
「隠れ蓑」とか「隠れ笠」これは、昔話にも出てくるあれです。
着たり被ったりすれば姿が見えなくなる・・それが何で「宝」なの?
つまりは「超人的な力」を持つ、人を超える・・ということでしょうかねぇ。
天狗の宝物、とも言われていますから、人が手に入れることの難しいもの、
というものではないでしょうか。少なくとも「透明人間になって万引きできる」
なんぞという不心得な思いで「しあわせを呼ぶ宝」にはしなかったはずです。
ちなみに「金や銀はないの?」と思いますが、それは「七宝」で
全て網羅しています。といっても、この七宝というのも、宗教が関わると
内容が変わったりするんですが、おおむね「金・銀・サンゴ・瑠璃・玻璃
しゃこ(しゃこ貝)・真珠」のようです。
しゃこ貝は、その白さが珍重されたようですね。
これをひとまとめにして「七宝」という柄で表してるわけです。
というわけで、この船の中にはありとあらゆる「宝」が載ってるよ、
ということでおめでたい柄といえるわけです。

で、ようやく「留袖」のお話しです・・と思ったのですが、
柄の話しで長くなりましたので「留袖」については、
次回ということに致しましょう。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんばんは☆ (JJ)
2005-12-05 22:54:06
はじめましてとんぼさん☆

JJと申します。

コメントありがとうございました!

早速、遊びにきちゃいました。

すごいっ!!宝船の柄よく着物で見かけます。そうかぁ。その柄にも深い意味があるのですね。なんだかめでたそうとは思っていましたが・・・・

すごく面白く、へぇ~へぇ~と思いながら読ませて頂きました

いろいろ勉強になるお話がてんこ盛りのブログですね!楽しみに読ませて頂きま~す着物初心者のJJですが、いろいろ教えて下さいっ!よろしくお願いします。
返信する
ようこそ! (とんぼ)
2005-12-05 23:43:24
JJ様

いらっしゃいませ。

さっそく来てくださってありがとうございます。

たいして役にたつことはないんですが、

着物の歴史は長いですから、こーんなことがあって

今の着物があるんだーと、楽しんでいただけたらと

思っています。

少しは現代に役立つことも書かなきゃ!

がんばりまっす。
返信する

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