ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

喪服の違い

2010-05-29 17:00:59 | 着物・古布
無関係画像ですみません。今朝またひとつ咲きました。
折れかかって添え木つきの朝顔さんです。なんとかがんばって!


久しぶりに「着物話題」です。

喪服については、紋がどうの参列者はどうするの、といろいろ書いてきましたが、
最近ちょっと気になるのは、それ以外のこと。

先日またしてもテレビですが、テレビショッピングのコーナーで
あの「市田ひろみさん」監修の「喪服セット」をご市田さんご本人が紹介していました。
まぁ品質だのなんだのはこちらに置いといて、気になったのは「ちりめん」だったこと。
あの方は関西の方ですから、ちりめんでいいのですが、
「関西はちりめん、関東は羽二重」というのが、今までの慣習です。
ただ、最近は違ってきている…と、プロのかたがネットなどで書いておられます。
「売る立場」のおっしゃることなので、マチガイはないのだと思います。
でも、私の周りなどでは、今でも「関東は羽二重」だよ、と言う声が多いです。

まぁひとくちに「最近は」とか「全国的に」という表現を使っても、
それはかなりアイマイな場合もあるわけですから、
私の感覚では、いろんな理由からいまは「ちりめん」に移行しつつあるのだろうと
そう解釈しています。

市田さんの「喪服ご紹介」が気になったのは、
番組の中では「ちりめんは関西」ということが、ヒトコトも言われなかったことです。
別に「これは関東の人は着られない」といってるわけではありません。
移行していきつつあるなら、それはそれでいいと思います。
でもそれならそれで「関東は本来羽二重なんですが、最近は…」というお話、
これをすることで、着物を知らない方々にも、知識としてそういうものが
伝わる部分もあると思うのです。
まだまだ関東では新しく作る人でも羽二重の方もおられます。
年配の人に「アナタ関東では羽二重よ」と、いわれることもあるかもです。

確かにどっちだっていいじゃん…なのですが、
私、いつも言ってますが「ずっとそこにあって変化する」のは順当なのです。
でも、一度回りに着物というものがなくなって知識も伝達されていないと、
次に始まった時に「最初に言われたこと」が、そのまま正しいこととされて
進んでしまうわけです。それでも喪服の材質なんか、なんでもいいじゃない…、
といっていたら、ほかのことも全部それでいいですか?と思うわけです。

今、着物を知らないヒトに、何か着物の話しをするとき、
どうも断定的な物言いをしたり、結果だけ話したりしている気がしてなりません。
浴衣でも襦袢をつければ夏着物として着られます、とか。
数学の答えや化学式のように、答えが「これしかない」ものならそれでもいいですが、
着物は違います。地方地域、教えるヒトの年代や経験や立場、
また着物そのものの色柄や質、それによっていろいろ違いが出てきます。
何回か「着付け教室の先生にこういわれた」というお話を聞いていますが、
断定的な言い方をなさるので、生徒さんは「それが正しい」と思ってしまう。
「正しい」ではなく「これもひとつ」なのだということもあるわけです。
また呉服屋さんで「色無地ですか、一つ紋つけとくと便利ですよ。礼装で使えますから」
という。時と場合によっては使えない場合もあるのです。
昔はそれでも、周りに知識のあるヒトがいたから
「そういう用事ならこれでいい」とか「そういうお席ならコレでは失礼」とか
教えてくれるヒトがいたわけです。
それが期待できない今、言われたことがそのまま鵜呑みにされてゆくことに
危機感を感じるわけです。

呉服屋さんと話をしていて、今のヒトは素材のことも良くわからないから、
「喪服作りたいんですが」とこられたとき、関東ですから羽二重ものをおだしすると、
その中でお財布とご相談でお買い上げになる…。
「羽二重かちりめんか」…わかんない方も多いわけですよ。
つまり、もしお店のヒトが「最近は関東でもちりめんだから」と、
「はいこちらです」と、何も言わずにちりめんを出したら、それになってしまう。
こうやって関東も関西もなくなってゆくのだとは思います。
でも、こんな曖昧さは「順当な変化」ではありません。
互いに着物のことがいろいろとわかっていて「最近はこうだからねぇ」と、
そうなっていくことが、一番自然な変わり方だと思うのです。
いえ、これはあくまで「たとえば」の話で、
着物全体のことを言いたいわけです。

「レースの半衿のついた浴衣」や「帯の上にまた帯」の浴衣姿は、
「涼しさを演出するゆかた」というものにはあわないのだということ、
これをまず知って、それでも「私はちょっとフッァッショナブルに
イベント衣装として着たいから」と、自分で決める…。
結果的に同じスタイルであっても、プロセスは違います。
そこが大切じゃないかと…そんな風に思うのです。

ついでのように書いて申し訳ありませんが、着付け士の国家試験が決まりました。
じゃ着付けの国家資格がないと、着付けの先生できなくなっちゃうの?
そうではないらしいです。でも、国家資格となると、持っていない着付けの先生、
つまりいろいろな着付け教室で、それぞれの学校の講師のお免状を取られた先生達が、
「これは国家資格がなければやってはいけない」というようなことが
でてくるのだろうか、なんて心配している記述もありました。
和裁士も「国家試験」があります。「和裁一級技能士」でしたか…。
でも、それがなくてもお針子さんとして何十年もやっているベテランはたくさいいます。
昔はお師匠さんのところで3年とか5年とか教わって、
「お礼奉公」といって、1年か2年、そこでお針子さんとして働いて独立する…、
これが多かったわけです。今お世話になっている呉服屋さんのお針子さんも、
ほとんどが、そうやっって実力をつけてきた人たちです。

あるサイトで「和裁士になりたいが…」という相談があって、
答えたヒトが「免許持っていても、特別どうということはない、実力の世界だから」と
書いておられました。確かに「和裁士」を募集する会社などでは、
免許のアルナシは関係あるかもしれませんが、すぐに縫ってもらいたいところなら、
免許なんて二の次でしょう。
私がいい見本です。調理師の免許は19歳で取りましたが、
一度も使わないまま、いまやただの主婦として台所に立ってます。
同期で入学したヒトの中には、すでに親の店ですし握っていたり、
コックとして調理場に立っていたりのヒトが何人もいました。
免許は持っていないと、自分で店をもてないから取りに来ていたのです。
それを活用してプロにならなかったら、免許なんて私のように「ただの厚紙」です。
逆に免許を持っていなくても、プロとしてシゴトができる業種もあるわけです。

美容師は国家試験がありますが、その中に「着付け」はありません。
学校で勉強するときに「とっておくといいよの授業」の中にあります。
国家試験どーのこーのと言うなら、この「美容師」の中に
「和髪」と「着付け」を必須にするべきじゃないかと、私は思っています。
着付け教室の経験がなくても、結婚式場や、芝居関係、花街関係で、
ヒトには着せられない十二単や衣冠束帯、裃から巫女さん、芸者さん舞妓さん…
そういう衣装を着せられるヒトはいるのです。
「着付け士」の国家試験ってなんなんだろう…。
ひょっとして新しい「天下り先」をこしらえるためのもの?
「仕分け作業」の見すぎかしらん。
着物のことを本当に大切にしたい人たちが考え出した結果なのだろうかと…。
「関西だからちりめんなんですよ」と、ヒトコトもいわなかった市田さんに、
ちょっとがっかりしながら、いろいろ考えちゃった私です。


コメント (12)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ながみひなげし | トップ | 羽二重と縮緬 »
最新の画像もっと見る

12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (陽花)
2010-05-29 19:41:28
着付け師の国家資格最近言われていますね。
着付け師の資格を頂いている私が言うのも
なんなんですが・・・着付け師もピンキリ
なんですよね。
叩き込まれた職人さんには叶う訳がないの
ですが、資格という枠が作られる事で本当に
活躍する場が減って、資格だけが独り歩き
しないんだろうかと心配です。
資格よりも技術優先という訳にはいかない
ものなんでしょうかね。
返信する
どうやって試験できるんだろう? (りら)
2010-05-30 00:23:25
着付け士の資格試験って動かない固い文句言わない人台に着付けてやるんでしょうか?
それとも生身の人に??

着付けで一番大事なのは、「人によって違うことをさっと分かってカバーすること」なんじゃないでしょうか?
生身の人間相手に数こなさないと身に付かないことだと思います。
一回の試験でこういうことが分るはすもないんですよねぇ。
動かない固い人台に外から見てきれいに着せて資格がもらえるなんて、ナンセンスですよねぇ・・・・
返信する
言いたくなけど‥ (えみこ)
2010-05-30 05:26:45
どちらも、なにかが抜けていて、ねらいだけひとり歩きしてる感じ。
モノを売るねらいで公共の電波を使う時代も
免許だけ乱発する時代も、これからかわってゆくとおもいます。
どう変化させるか、それも人間の仕事ですね。
寒々しい方へいかないのを祈るばかりです。
返信する
Unknown (ゆん)
2010-05-30 10:06:16
 婚家の古い箪笥からは、ちりめんより羽二重の黒紋付が出て着て 意外に思ったのを覚えています。

 私は母が関西人ですから、私の嫁入り道具を誂える際、お店の方も「お母様はちりめんですよね?」と確かめて反物を出してくれました。
 富山は関西圏だと思うのですが、横浜との行き来が多い婚家では、羽二重もありだったのかな?と思っています。それとも、富山の東半分は意外と関東寄りなのかも?やたら巨人ファンが多いし(笑

 主旨がずれて申し訳ないのですが、私、やたらと江戸小紋を宣伝する風潮が気になっています。
 確かに好きな着物なんですが、紋があろうが無かろうが『鮫小紋ならいいですが』『三役なら、いいところへも出かけられます。』…というような記述があちこちでみられませんか?
 これも独り歩きなのか、わざわざそうしたい人が流れを作っているのかな…?
 気のせいでしょうか?

 
返信する
Unknown (古布遊び)
2010-05-30 14:19:51
色々と考えさせられるお話でした。

私も「関西は縮緬、関東は羽二重」を知識としては知っている世代ですが、いまやこちらでは(北海道です)お葬儀に喪主でさえ着物を着ないことが多くなりました。
ここまで来ると着物という文化をどう残していくか大問題ですよね。

着付けも資格の時代ですか。
私は常々思うのですが(私が着物を上手く切れないからひがんでいるのかも?)習わないと着れない民族衣装ってあり????
ちょっと前までは大半の人が着物と言われるものを着ていたと思うのですが、なんだかあまりにきちんと着なくてはいけないという風潮のせいかなあ、なんて思ったりしています。
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-05-30 19:06:13
陽花様

調理師とか美容師とかのように、
食品や薬品を使うなら、しっかりと勉強して
資格制にするのも、大事なことだと思いますが
着付けや和裁って「実力」でしょう。
「資格の一人歩き」、考えられますよね。
なんかおかしな世の中です。
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-05-30 19:09:57
りら様

そうですよね。実際の試験は知りませんが、
一人やってわかるもんじゃないでしょ。
なんでも一休と二級の実技の違いは、
「花嫁衣裳」と「袴」だったかな。
紋付袴くらい、あたしでもきせつけられまっせ。
「着物の歴史」とか「染め織り」とかの
筆記試験もありますが、生地をさわって
「これは○○」と判別できるほうが、
大事だと思います。どれも机の上でやってても
わからないことばっかり。
それが多いのが「着付け士・和裁士」だと
私はおもうんですけどねぇ。
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-05-30 19:11:27
えみこ様

なんか方向が違いますよね。
肩書きって何よ…です。
とってもあんまり意味がない、それが現社会だと
そうは思いますが、それでも知らないヒトは
ほしがって、ずっとつづくのでしょうか。
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-05-30 19:28:17
ゆん様

つまりは「相談」とか「お話し」があれば、
みんな納得してかえていくんですよ。
「お嫁入り先に合わせますか?」とかね。
そういうことをすっとばすから、
いろんなことがいい加減になっていくんです。

江戸小紋については、ん~難しいお話です。
元が武家の定紋というところから出ているのと、
型紙の作り方、染めの仕方のたいへんさでも、
お金じゃないランクがつくんですよ。
三役は型紙も難しいし、染めもわずかなズレで、
模様がちゃんと見えないんです。
それだけのものを作らせることができた
「大名」の定紋、ってのがはじまりですから、
まぁ「三役」「五役」は、ちょっと別格になっても、
しかたないかな、というより、
そういう意味合いはあってもいいと思うほうです。
それよりも「機械」の型染めか「伊勢型」の
型染めか、それがちゃんとわからないほうが、
私はイカンと思いますね。
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-05-30 19:33:18
古布遊び様

おっしゃるとおりです。
これだけの情報過多時代だというのに、
忘れられることは、いえ、それだからこそ
忘れられるのも早いんですよ。
民族衣装が自分で着られない国ってのも、
ほんとに珍しいと思いますよ。
それをまたなんとも思わない、今の年配者は
なにを考えていたのかと思います。

私の子供のころなんて、みんな好き勝手に

グズグズに着たりしてました。
その人流、その家流があたりまえだったんです。
着付け教室で、何センチまで言うと、
それしかない…になるんですね。
応用することが苦手な現代人は、
余計です。困った現象です。
返信する

コメントを投稿

着物・古布」カテゴリの最新記事