ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

つぎはぎじゅばん

2009-05-22 14:07:04 | 着物・古布
一見ジミでしょう?袖は両袖とも男物を使っています。
背中なども黒地が多いし、割とお年のかたのものかなと…。
うしろはこんな…肩先ちょっと赤く、あとは下の方もジミ目。


        


でも、でもっ前はすごいんですっ。


    


衿先のアップですが、字ィ書いたりまっせ…。
これ、あの染見本の端っこかなと思うんです。(右から読むんでっせ)


    


なんかもぉすんごいツギハギで、いわゆる「アメリカンパッチ」のような
特定の規則性の柄、ログハウスとかカテドラルとか、
そういう「もようにした美しさ」はありません。
それは着物が元々長方形の並びによって作られるものだからで、
生地をあますところなく並べて使うには、コレが一番いいわけです。
それでも、こういうものにはこういうものの美しさがあります。
たとえば、この二枚の布…



      


着物だったときは、どんなに美しかったことでしょうか。
これを着たひとは、どんなしぐさで歩いたりたたずんだりしたのでしょうか。
こういうものを見て、手ざわりを確かめたり、
まじまじと柄の細かいところを覗き込んだり…、
それはたとえば、もうしわくちゃのおばぁちゃんを孫たちが取り囲んで、
おばぁちゃんの若いころの写真を眺めながら
「わぁ、おばーちゃん、美人だったんじゃん」とか
「なんかすごーい気取ってるー」とか、そんなことを言って
その人と一緒にその人の人生をいとおしむような…
そんな思いに通じるところがあります。

かつては着物として、じゅばんとして、誰かの身を飾った物たちが、
少しずつ年をとり、今はもうこれしかない…となっても、
まだちゃんとお役に立ちますよ、と昔の輝きをちょっとだけ見せてくれる。
そんな楽しみが詰まっていると思うのです。
ひとつひとつの柄をじっくり眺めていると、
全体では、およそまとまりのないものが、
なんかとても完成されたものに見えてくるからフシギです。

きわめつけで私が思わずお辞儀しちゃったところ…裾です。


    


裏は年をとっていても「赤」、そして裾に縫いつけられたちりめん、
もうすだれみたいになってます。
かろうじてガロンテープが裾の溶け、いや「解け」をとめています。
こんなにまでして着られていたものは、幸せなんだと思います。
私は着物でシアワセをもらっているけれど、
着物に幸せだと思ってもらっているだろうか…、なんて、
こういうものを見ると、ふっとそんなことを思うのです。

外に見える袖の部分はグッとジミでありながら、
隠れたところは華やかさも、女であること、その楽しさも忘れない…、
それっていつの時代になっても必要な意識なのだと思います。
忘れっぱなしの自分を、鏡の中に見つけては落ち込む私です。



   

コメント (9)    この記事についてブログを書く
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9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (とんぼ)
2009-05-23 23:46:32
りら様
ほんとに、思わず立ち止まって、
うっ…となってますがな。
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Unknown (とんぼ)
2009-05-23 23:46:00
otyukun様
若い方が、伝統的なことに興味を持って
近づいてくださるのは嬉しいですね。
今日も、ある小さな村の「漁法」を
やっていたのですが、跡継ぎが…。
なくなってほしくないですね。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-05-23 23:44:06
穴熊の女房様
一枚一枚別々の時をすごしてきたのですよね。
おっしゃるとおり、親のとか自分のとか
子供のとか…ひとつひとつ違っていて、
それぞれに思い出があって…。
できあがったものへの愛着も、
更に増すことでしょうね。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-05-23 23:41:04
えみこ様
こういうのを見ると、手持ちの布に
手を伸ばしたくなります。
やりたいなーって。(ムリムリ)
返信する
着物に幸せだと思ってもらえているか・・・ (りら)
2009-05-23 03:03:24
う~む・・・・色々考えさせられてます。
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着物っていいなあ (otyukun)
2009-05-22 22:39:00
今日も工房に男の子が来ました。
伝統文化に興味があるので質問して良いですか?と話しかけてきました。
工房では特に縁のある埼玉の若者です。
何故か工房で長居するのは男の子。
たっぷり浅薄な着物学を伝授しました。

着物は買う時は高いけど、何代にも受け継がれる事が出来、歯切れを縫い合わせてまた再利用出来る経済的な服装なんですと講義しました。
正にトンボさんの仰る通りです。
着物文化無くしてはいけません。
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Unknown (陽花)
2009-05-22 21:07:17
こんな風に端縫って長襦袢にするのって
普通の反物で仕立てる、何倍手間が掛かって
いるのかと思います。
ここまで布をいとおしく使うのって本当に
頭が下がります。
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いいですね (穴熊の女房)
2009-05-22 20:55:01
昔の人の智恵 すごいですね。
物を無駄にしない 其の精神 頭が下がります。
なんだか この襦袢愛おしい気さえします。
一つ一つの端布に 経歴を聞いてみたい思いがします。
コレは親父の着物の端 コレは嫁に来るときもって来た着物 コレは娘のお宮参りに着せたものとか あるのでしょうね。
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手に取ってみたくなりました (えみこ)
2009-05-22 20:00:06
どんな「手」のドラマがあるのか
ふれてみたいです。
こんな風に端縫いしてみたいと思いました。

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