ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

真夏日に初ゆかた…

2008-07-12 18:05:42 | 着物・古布
写真は「いもラピュタ」、根っこもこんなに育ちました!
ちっとは涼しく見えますか?

着物ブログだってのに、本人がちっとも着ない…と、以前から
ある「とくてーのかたがた」に責められておりまして…(約3名)。
そんじゃまぁ、とりあえずゆかたでも着るかぁと実行したんですが、
そんな日に限って「今日はこの夏一番の暑さで…」。
暑かったよぉ、汗びっちょだよぉ…。
こんなでした。


          


雨が来そうだったので洗濯物を中に入れて二階からおりてきたところ、
このあと植木鉢の世話とソージで、汗だくになりました。
この前掛けがまた「化繊」で暑いんですわ。
ゆかたはかなり前のものですが、このくらいならまだ着られますね。
帯は献上ですが半幅よりまだ少し細いもの、
長さもないので後ろは小さく一文字です。


本来「ゆかたは裾除けのみ、素肌で着るもの」です。
えぇーっと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、
本来はそういう着方をするもの、でありました。
ただし、今は世の中かわつてますからねぇ、こりゃかえにゃなりません。
ではどうするか。

元々ゆかたの始まりは「ゆかたびら」…これはみなさんご存知だと思いますが、
要するに「湯上り着」であって、外に着て出るものではありませんでした。
つまりバスローブですね。外国ならそのまま冷たいものでも飲みながら、
パジャマに着替える間をすごすもの。
それが、その手軽さや涼しさが好まれて湯上りの前後も着る、
つまり、次は「日が落ちてから着るもの」になりました。
さらに、夏の暑い日差しの中、汗を吸い洗濯も利き、便利なものである、
というところから「盛夏の間の着物」として重宝がられるようになった、です。

江戸時代は今に比べて、暑さも違っていたとは思いますが、
それにしても暑いことにはかわりない…、その真夏の間、
じゅばんを着なくていい、素肌に着られる、足袋をはかなくていい、
というゆかたは、たいへん開放的なものであったわけです。
ちなみに、ええとこの女性は夏でも足袋をはくのが当たり前、
浴衣のときだけは素足でよかったのです。
逆に花街関係の女性は冬でも足袋をはきませんでした。

さて、そんなわけで、ゆかたは夏の着物として定着していったわけですが、
だからといって、着物としてどこでも通用するというわけではありません。
着物としては一番格下、普段着中の普段着、です。
ですから、ゆかたで遠出はしませんでした。

こういう着物なわけです。今でもゆかたといえば「お祭り・縁日」のイメージ、
それで大正解で、本来は要するに近所にちょいと着ていく程度のものなのです。
ところが、まずは近隣でのお祭りってのがなくなりました。
人が生まれ在所をほとんど動かなかった時代は、それぞれの在所に
氏神様があり、産土神様があり、菩提寺があり、旦那寺がありました。
そこではお祭りや縁日があったわけです。今はそういうことが減りました。
またたとえあっても、今の若い方はちっぽけな神社のちょっとしたお祭りより、
テレビで放送されるような大きなお祭りや縁日、花火大会などのほうが
お好みです。というより近くでやってないんですからしかたありません。
だから電車に乗って…なんてことになる。
ここですでに「近所にゲタつっかけていく」という「距離・範囲」を
越えてしまうわけです。
また、着物で暮らしていた時代は、ずっと着ていたわけですから、
それこそ近所のお買い物でもなんでもゆかたでよかったわけです。
ところがいまやゆかたは「目的を持って」着るものになりました。
昔なら電車で行くのは『おでかけ』ですから、ゆかたを脱いで
同じ木綿でも「縮みや細かい小紋柄などにじゅばんをきて足袋を履く」でした。
そんなこと、今言ったって無理です。ゆかた着てでかけるところが
なくなっちゃいますよね。だから、隅田川の花火大会に横浜から
浴衣にゲタになったわけで、こういう時代、それはそれでいいと思います。
つまり着ていく場所だけは「お出かけ着」と同じに昇格したわけです。
そのかわり、今度は「それなら」という工夫をしなきゃなりません。

本来素肌にそのまま着る、といいましたが、今でも私は家で着るときはそれです。
でも、ちょっと外に出るときには肌着を着けます。
ひとつには、身八ツ口から中が見える、ということ、
それから夜間の場合は、場所によって照明の具合で透けて見えるから。
もうひとつは、汗をかくので下着にそれを吸い取らせたいから。

まぁ身八ツ口から肌が見えたところで、今の私では見た人の方がお気の毒。
そのあとカオみたら泣くかもしれまへん、ごめんねぇ。
でもとにかく、肌がじかに見えるというのは、今の時代やっぱりね。
そのためにも着ます。
次に「透ける」ということ、これは洋服の場合でも透けて見えることは
おおいにありますね。ブラのひもとかスリップのレースとか。
でも、洋装でそういう人がいても「みっともない」とは思いませんよね。
つまり「何が透けるか」です。見られてかっこ悪いものは何か、です。
ゆかたの場合は「じゅばんは着ない」ものです。
したがってじゅばんの袖はなくてもいのですから、
つまりは素肌がみえなければいいわけです。
今は「浴衣下着」という便利なものがあります。
上下つながっているので楽ですね。
すっぽりかぶる形もあります。下はペチコートのようになってます。
これを考えれば、透けて見えてもいいのは「肌襦袢の袖」ということです。
でもただの肌襦袢では、味気ない、そこでレース袖の肌じゅばん、があります。
このレースが透けて見えていても、ちっともおかしくはないのです。

ひっくり返して言いますと「ゆかたはじゅばんを着ないもの」ですから、
ゆかたの袖から「じゅばんの袖がみえていたらおかしい」のです。
また、少し上質な木綿着物を、ゆかたではなく着物で着ようとするなら、
当然じゅばんをきますから、今度は「足袋は履かなければおかしい」のです。
この前、呉服屋さんで「ゆかたに半衿がみえるようにつけてっていわれたの」
というお話を聞きました。とても困っておられました。
半衿が見えるということは「じゅばんを着ている」ということです。
そうやって見せるなら、袖口にもうそでも袖がなければなりません。
そして当然足袋もはかねばなりません。
半衿だけあって、あとは浴衣と同じでは、
「Tシャツにネクタイしているようなもの」です。
着物のごまかし・うそ、というのはルールにのっとってのこと、であって、
決まりごとをそのままはずすと、みょうちきりんなことになります。
今、ゆかたでレースの足袋というのがはやっているようですが、
最初に言いました、本来ゆかたは「素足」で着るものなのです。
足袋を履くならゆかたを普通の長着として着る、ということで、
当然じゅばんを着ます。

細かいことにうるさいのよね、ファッションなんだからいいじゃない、と
そう思われるかたもいらっしゃるかもしれませんが、
では洋装で、今日は暑いから、とスーツにゲタで会社に行くでしょうか。
ファッションというのは「なんでも自由にしていい」ということではありません。
それぞれのルールにのっとってこそ、その変化を楽しめるわけです。
同じ理由で「浴衣の重ね衿」も、私は見るたび笑います。
つけりゃいいってもんじゃありません。
もともと「重ね衿」は着物でも「振袖」などに使われるもの、
十二単の「重ねることの美しさと同時に礼装正装の流れをくむもの」です。
色がきれい、アクセント、なのでしょうか。
ゆかたで色を重ねることと、アクセントを楽しむなら、
それは浴衣と帯、ゲタの鼻緒、かんざし髪かざり、手にする小物、
そういうもので楽しむのが着物の通だと、私は思っています。

江戸時代、普段は重ねて着なければならなかった女たちが、
浴衣だけはさっぱり一枚で、それも大胆な色柄で、そして足袋も履かずに
楽しめる、そのシアワセを謳歌したのです。
日ごろ足袋に包まれた日見ずで真っ白の足をだし、真っ赤な爪紅をつけて、
黒いゲタでからころ歩く、その開放感を楽しんだのです。
なんでも自由、なんでもアリの現代でも、
私はゆかたの楽しみ方は「着物の楽しみ方」として楽しんだほうが、
着物の醍醐味を味わえると思います。

今日、近くの幼稚園で「夏まつり」です。
たくさんのご家族連れが、我が家の前を通りました。
小さい子のゆかた姿もありました。でもオトナは誰も着ていない…寂しいですね。
ついでに…おかーさんがた、お願いです、
小さいお子さんだからといって、ゆかたにスニーカー、やめてください。
せめてサンダルで…お子さんもゆかたもスニーカーも、みんなかわいそうです。

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8 コメント

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ご同慶の至り (うんちく)
2008-07-12 19:58:42
とんぼさん!まさにうんちくを傾けて頂き感激
です。そのとーおーりーいー。

お正月はまず氏神様にお参りしてから、自分の
信仰に従い、お大師様、観音様、お不動様とお
参りに行くものでしょう。人出の多いところに
いきなり出かけるのはいかがなものでげしょ
う。

化繊の前掛けが暑い。そうですよね。化繊は暑
いです。たとえ、それが絽であろうと紗であろ
うと化繊は暑い。太陽が西から昇っても暑い。

浴衣については全くその通りで、みんなで実践
しやしょう。

今日は孫の幼稚園で盆踊りと花火大会とかで
孫娘は浴衣、男の子は仕方なく甚平で出かけ
ましたが、下駄を履かせました。
しかし、この浴衣も甚平も下駄もおぢいちゃん
とおばあちゃんとが浅草で買ってきたもので、
同じ町では手に入りません。
小さい頃から下駄を履かすと足の指が強くなる
そうでもありまーす。

お出かけの時は浴衣を脱いで、木綿でも縮みや
細かい小紋柄を着てとありましたが、ネットで
木綿のちりめんの着物を売っていましたが、そ
れのことですか?しじらのことですか?教えて
下さい。



返信する
Unknown (陽花)
2008-07-12 21:33:02
今日は特別暑かったのに浴衣姿、ご立派です。
たすきがけ前掛け姿で、働き者の肝っ玉かあさんて感じで素敵です。
この頃は浴衣着付けを頼まれる方も
おられるそうで、時代も変わりましたね~
浴衣に重ね衿ですか???
少しでも涼しく着たいのに、どうして?と
思ってしまいます。
返信する
確かに (うさうさ20)
2008-07-12 22:30:49
浴衣に襦袢で素足は私も違和感を感じます。私30なんですけど、それ以下の子はあんまり違和感なく着れるのかなぁ???なんでもありはないですよね~。最近の流行といったらそれまでなんでしょうけど。。。襟つけて素足はほんと変な感じ。。。
返信する
すてき・・・! (maymayman)
2008-07-12 22:38:25
いっや~!この姿懐かしい・・・
粋な<おねゐさん>に拍手です!
前掛けで腰回りがすっきり見えて?
スマートに見えます、とんぼだけに勝ち!
返信する
いもラピュタすご~い。 (武者子)
2008-07-12 23:59:43
浴衣、私も肌着は付ける派です。
浴衣用肌着も一応持ってはいるのですが、洋装用のキャミソール&ペチコートが一番着やすくて好きです。

最近、浴衣用のレースの半襟とかレースの帯板( 前板の上の部分にレースが付いていて、板を入れると帯の上一直線にレースが付いたようなカンジになる )とかも売ってますね。
もしかしてレース流行り?! 見た目からしてもちょっと暑苦しい気がします。

ウチの娘の保育園のお祭りでも、浴衣のお母さんはなんと!!私ひとりでした。
先生と間違われました( 先生はみなさん浴衣着用 )。
くっすん。。。

ところでところで、
先日もちょこっと疑問に思った件ですが、反対に『木綿や綿麻の普段着物を浴衣風に着る』場合はどうでしょう。
普通に浴衣として着てしまえばなんの問題もないのでしょうか。
( 半襟付けたり足袋履いたりはしませんよ
返信する
いろいろな浴衣姿 (おつう)
2008-07-13 02:33:59
今住んでいる所は浴衣祭りがあり、花火大会もありで、去年もいろんな浴衣姿を見ました。
ギャル浴衣に浴衣風ゴスロリ衣装・・・、いろいろあるなあと感心半分、半分はうんざりといった感じでしたけど。
でも一番「???」と思ったのは手描きの訪問着のような柄の浴衣でした。
大きくざっくり描かれた枝葉が裾から胸元に伸び、ふくろうが膝のところと胸元に。
背中の紋の所も葉っぱが遊び紋風に入っているのです。
脇縫いで柄が切れていなかったし、一瞬、作家モノの訪問着を素肌に着ているのかと思いました。
でも木綿でしたし・・・あれは一体何のために作られたものだったのか。いまだにナゾです。
たぶん高価な物なんだろうとは思いましたが、衿なし素足で着ていたのは茶髪の若いおねえさんでしたし、着付けはグズグズで帯は化繊でした。
ベージュ地に茶の枝、濃緑の葉、渋いふくろう・・・とても若い女の子がデートで着るものには見えませんでした。
そもそも浴衣に見えないし。
着道楽のお母さんから借りたのかな?

なんだか絵羽柄の浴衣も出回っているようですし、付いていけない自分の感性が若くないのだと実感します・・・。
あのレースまみれのお花尽くしの浴衣も似合う子がどれだけいるものなのか・・・。

お金のかけ方を間違っている気がするんですけどねえ・・・。
返信する
そう、昔の母の姿を思い出しました。 (akkomam)
2008-07-13 08:48:34
 
  夏になると、家族揃って下駄やさんに行き、
 新しい台に好みの鼻緒を選んですげてもらっていましたっけ。
 そんなときは浴衣姿でした。


  母は家事をしているとき、父が帰ってくる夕方とは
 夏の浴衣?が違っていました。毎日、糊をつけては
 干していたのを思い出しました。

  いつも、豊富な知識に驚きながら、楽しんで
 読ませていただいております。 


 昨日はお盆のお墓参り(一日早い)にいってきましたが、
 帰りの電車の中で、浴衣姿の若いお嬢さんが多く
 見受けられました、が、側の男性がみんなTシャツに
 ジーンズでしたのがチョッと残念!!でした。


 私も衣装ダンスのなかでシツケがついたままのも
 ありますが...この暑さでは袖なし、丸首が
 動くのにはよいようです。
 困ったものです、いい歳をして。
返信する
Unknown (とんぼ)
2008-07-13 17:34:21
うんちく様
最近は、氏子とか檀家とか、そういう
言葉の意味もわからない人も多いですね。
家紋もわからない人もいますし、
日本って、日本の部分が消えてきてますね。

木綿の着物については「続編」で
ただいま書いているところです。
もう少しお待ちくださいね。


陽花様
なんだってものすごい暑さでした。
もー半日で浴衣の背中おなかあたりが
汗でじっとりです。
でも暑いのはなに着ても同じなんですけどね。
浴衣の重ね衿も、ふりふり半衿も、
見るからに「暑苦しい」です。
なんだかなーですね。


うさうさ20様
結局「知らない」ということが、
そういう現象を起こしているのだと思います。
「それはおかしい」ということを、
誰も教えないんですね。売るばっかし。


maymayman様
勝ち虫ではありますが…やせて見える角度
気をつかったんですよぉ…これでも。
昔の母親なんて、
みんなこんなカッコでしたよね。


武者子様
なんだか暑苦しいものがはやりで、
げんなりしています。
カンダうのちゃんの結婚衣装で、
拍車がかかったように思うのですが??

明日書くつもりなんですが、
同じ木綿でも浴衣とそれ以外は、
似て非なるもの、なんです。
木綿の着物はじゅばんなしで着るのは、
おかしくはありませんけれど、
その種の木綿着物は、どこまでいっても
「単着物」の扱いだと思います。


おつう様
あれは呉服屋さん、というより、
あれを思いついた人ってことですが、
着物のことを知らない人だと思うし、
積み重ねの無いなかで、ただフッアッション
という形でしか見ていませんね。
絵羽のゆかたは、近代では「踊り衣装」です。
訪問着にゃなりませんしねぇ。
洋服感覚で見たり買ったりするし、
それを見越して作るのでしょう。
そんなことについても、今書いていますので、
また読んでください。


akkomam様
ゆかたって、もっと普通に着られてましたね。
ゲタも今では浴衣の時期しか売ってないし、
直してくれるところもなくなりましたし、
不便になりました。

久しぶりのゆかただったんですが、
暑さに変わりはありませんでしたねぇ。
ほんとに、今年の夏も「猛暑」の気配で、
いまからうんざりです。




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