入手したばかりの古本。昭和25年の「婦人生活」です。
戦後すぐで、出版もたいへんだったのでしょうか、あの見慣れたサイズではなくA5版くらいの小さい本です。
この最初のところに着物の写真がありました。
まずはこちら「木暮実千代さん」です。
題が途中で穴あいてますが、たぶん「私の好きな夏のきもの」…でしょうね。
こちらは「濱田百合子さん」…ってダレ…な私ですが、どうやら女優さんらしいです。
この二枚をみただけで、今の「夏物」とは、ちょっと違うナァと思いませんか?
木暮さんの着物は「縮緬」、とあります。このころはよくあった「夏ちりめん」と呼ばれるものでしょう。
夏ちりめんと言っても別に特別な織りではなく、薄手で色柄が夏着物向きのものです。
下の濱田百合子さんは「絽ちりめん」。
まだまだあります。こちらは私もとりあえずは知ってた「奈良光枝さん」。
こちらは「上布」だそうです。
お次はこれまた名前だけ知ってた「折原啓子さん」、こちらは「絽ちりめん」
そしてつい先日までお元気でしたねぇ「藤間紫さん」です。お若いですねぇ。なんたって60年前ですから。
全体に、今の夏着物と比べて「夏」にこだわらない色柄だなと思うんです。
今の夏物は、素材は絽か紗、麻なら上布ですが、夏というだけで薄い色、淡い色がほとんど。
濃い色だと紺や青など、いかにも「涼しげ」と見える色が多いです。
このころの着物って、いろんな色や大きな柄をふんだんに使っていますよね。
夏物だと書かなければ、袷と言われてもわからない…。
着物が着られなくなり、さらに夏となると余計着る人が少ない…。だから万人向けの色柄しか出ない…。
そういう流れは仕方ないですが、こういう昔着物を見ると、夏物だっていろんなのあったっていいよなぁと思います。
帯を見てみましょう、すみません木暮さんの忘れました。あとは着物の順番どおりで…
一番上の朝顔とか一番下のあざみなんかは、季節だなぁと思いますが、
真ん中の二本は、実際には絽の帯ですが、素材によっては、通年使えそうですね。
帯締めは、元々夏用というくくりはありませんでしたので、このころはフツウの帯締めで、
帯や着物にいろを合わせているだけですね。近年レース素材などの夏物が出てきました。
この本は私と同い年、つまり60年前です。
実はこの本の中に「大阪のデパート売り場主任の座談会」という企画ページがありました。
高島屋、大丸、阪急の部長さんや課長さんたちのお話で、売り場からみた景気のお話、お客のことなど、
なかなか面白いです。中でへぇぇと思うことがかいてありました。
大阪でこの時期、和服の若い女性が増えている…と。「ことしにはいってからぐんと増えました」んですと。
浴衣地は東京よりずっと数がはいっていて、今までなかったのでみんな飛びつく…。
要するに、戦後のもののない時代から、やっとそういうものも流通するようになったと言うことですよね。
さらに「年頃のお嬢さんのくせに帯ひとつよう結ばん人が、まずゆかたを着て、ぼつぼつ着物を…」とか
「最近母親が娘に着物の仕立てや着方について教え始めた…」とか…。
「お嬢さん方も少しずつ和服についての関心が、戻りつつあるようです」…えぇーっそ関心はどこへいっちゃったわけぇ!
なんかとっても惜しいですねぇ。大阪のお話ですから、関東のことはわかりませんが、
少なくとも、戦争が終わって心の余裕がまれたとき、着物に顔が向いた時期も合ったんですよね。
そのときになにかどっか間違えた??
この「着物が増えた」と言ったのは「大丸」の人なんですが、そのすぐあとに「高島屋」さんが
「しかし働き着はやっぱり洋服でないと都合が悪い」…おいおい。
この座談会、しまいに東京と大阪のケチのつけあい…じゃありませんが、雲行き怪しくなっていきまして、
それぞれの地域の世情やお客の動向の話をしているうちに「大阪人は、細かいことをよく調べて買う、
東京人は気に入ればポンとお金を出す」なんてことから「だから大阪の人は勉強している」とか
「専門家は東京のデパートでは学ぶことがないと言ってる」。
すると「大阪はサービス過剰、広告もしすぎ、だから勝手にお互い(デパート同士)首絞めあってる」…あらららら。
「大阪は売り場がごちゃごちゃしている」「それだから活気がある」…あぁぁぁ。
大阪のおばちゃんのパワーは昔っからのものですよぉ。東京の見栄っ張りで気風(きっぷ)がいいのもねぇ…。
そんなものはくらべちゃだめよ。それぞれにあわせて売ればいいんだから…。
こんなことやってたから、ダメになっていったのかな?なんて思っちゃいました。
あ~~~着物びと、増えてくださいましぃ~~。
着物離れの上、夏は余計に着ませんから、
どうしても万人受けする「涼しそうな」色柄に、
偏ってしまうのでしょうね。
着物はもっと自由なのに、なぜか着る人がへってから、
あーでなければ、こーでなければ…と、
うるさくなっている気がします。
絽ちりだって、きればいいと思います。
そんなに限定したら、よけい着られなくなりますよね。
みんなが着物を着ていたから、夏でもお嬢さんはやっぱりお嬢さんらしいものを、ってなったんでしょうね。
こういう大胆な柄の着物、夏に着たら今の大胆な柄のサンドレスみたいでいいですね。
今だと、白生地を染めてもらうしかないんでしょうね。
絽縮緬も今は単衣の季節の着物といわれてますが、夏でも着てたようですし、いろいろ自由な感じですね。
もっと着物が着られていたら、
「すずしそうなの」とか「鮮やかなの」とか
いろいろでるのでしょうねぇ。
残念なことです。
みんな若いですよね。
着物が珍しくなかった時代の方が、
いろんな面で自由だったと思います。
です。
今のすずしげな柄向きも嫌いではないのですが、
比べてしまうと、ねぇ。
生き生きとしているのが伝わります。
分かりました。
この頃の柄は、けっこう大胆で自由な
感じですね。
帯締めの締め方も、気取らない結び方で
今とは違いますねぇ。